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「光る君へ」初回、衝撃ラストの裏側 脚本家・大石静が目指す紫式部像

少女時代のまひろ(落井実結子※右)と母ちやは(国仲涼子※左)
少女時代のまひろ(落井実結子※右)と母ちやは(国仲涼子※左) - (C)NHK

 1月7日に放送された大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)初回では、主人公・紫式部(まひろ)の少女時代が描かれ、ラストでは衝撃的な展開を迎えた。ドラマオリジナルの筋書きとなったこの展開について、脚本を手掛けた大石静がその意図を明かした(※ネタバレあり。初回の詳細に触れています)。

【画像】初回「約束の月」場面写真

 大河ドラマ第63作となる本作は吉高由里子を主演に迎え、平安中期に、のちに世界最古の女性文学といわれる「源氏物語」を生み出した紫式部の人生を描くストーリー。武家台頭の時代を目前にした、きらびやかな平安貴族の世界と、懸命に生きて書いて愛した女性の一生に迫る。初回では少女時代のまひろ(落井実結子)が貴族の家に生まれながら父・藤原為時(岸谷五朗)が官職を得られず貧しい生活を送っていたこと、三郎(木村皐誠)という少年(のちの藤原道長)との出会いが描かれた。ラストでは、まひろの母・ちやは(国仲涼子)が三郎の兄・藤原道兼(玉置玲央)に刺殺されるショッキングな場面で幕を閉じた。三郎に会いに行くため道を急いでいたまひろが道兼の馬にはねられそうになるアクシデントが起きた際の出来事だった。

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 大石いわく、ちやはが道兼に殺害される展開は史実として残ってはないとのこと。「ですが、紫式部が幼い時に母親を亡くしたという説はあります。そのことは彼女の人生にとって大きな出来事だと思ったので、道長を絡めて描けないだろうかと考えた時に、藤原の三兄弟(道隆・道兼・道長)の次男の道兼は乱暴な人物で、のちに変化していくことになるんですけど、彼のキャラと母の死を結びつけることを思いつきました。そうすることで、まひろにとって愛した人の兄が親の敵になる。 そういう宿命が組んでいけるなと発想していきました」

 幼いまひろにとって母親を目の前で殺された事件はトラウマとなり、価値観や人格形成にも影響を及ぼしていく重要なエピソードでもある。「幼き日に母を亡くした、貧しい暮らしであったっていうあたりから、生きるとはこういう不条理に苛まれていくことなんだと知ってしまう。だから、まひろは物事に対して真っ正面から一生懸命向かいますっていう子ではない。“ 人生とは思い通りにいかないもの”とうがった見方をする少女期を過ごすうちに、そういう沸々としたものが文学者としての萌芽となり、“それを表現してみたい。誰かの妻になるだけではなく自分の使命は何なのか”と思うようになる。道長との関係においても、私自身書きながら“もうここで行けばいいのに!”ってもどかしく思うんだけど、やっぱり行かないみたいな自我の強さがある」

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 なお、紫式部に関する資料はほぼ残されていないため、少女時代のエピソードはほぼオリジナル。大石はこれまで、社会現象を巻き起こしたドラマ「セカンドバージン」(2011)や「家売るオンナ」(2016)シリーズに加え、吉高を主演に迎えた「知らなくていいコト」(2020)、「星降る夜に」(2023)など多くのオリジナル脚本による話題作、ヒット作を手掛けている。史実とフィクションを交えて展開する本作に、どのように臨んでいるのか。

 「いろいろな歴史の資料を読むのは楽しいですし、この仕事を引き受けなければ1000年前のことを何も知らなかったなと思うと、やはりやって良かったなと思います。まひろ、道長の少年少女時代のエピソードをはじめ、この作品はオリジナル脚本ですが、私は10年に1、2回ぐらいしか原作モノの脚色はやっていなくて、オリジナルを書くのが当たり前のこと。その点では、実際にどうだったのか、わからないところをフィクションで膨らませていくのは、これまでやってきた仕事と同じですから、そこに特別気合いを入れるということはなく淡々と書いていますね」

 ところで、本作は、まひろが「源氏物語」が生み出す道のりを描くのだが、「源氏物語」はどのようなかたちで登場するのか。「私たちチームの描きたかったことは、一見男女の恋愛に見えながら、その行間に奥深い人生哲学と権勢批判と文学論のようなものを込めた「源氏物語」を、いかにして書きあげられる人物に成長していったのかということ。少なくとも現状では「源氏物語」の中身を描く予定はありません。でも、紫式部の人生の出来事が、のちに作品に関わっていったかもしれないと思わせるような散りばめ方はしています。例えばまひろと道長の出会いの場面もそうですし、この先にも「源氏物語」を彷彿とさせる場面はたくさん出てきます」

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 あらためて紫式部を語ると「世界の10人の1人に入るような人物」だと大石。紫式部は、欧米では“Lady Murasaki”の名で知られている。

 「物語の構築力とあわせて、確固たる自己批判、世の中の見方みたいなものがないと、あれほど長く魅力的な文学作品は書けないと思う。「源氏物語」は、次、次、とページをめくりたくなるようなハーレクイン・ロマンス的な面白さと、奥深い哲学的なものの両方が流れているところが、いまもなお世界で高く評価されている原因だと思うんです。日本が誇る作家だと思うので、このドラマを見て“教科書に載っているのと全然違う。こういう人だったのか”と感じてもらえたら素敵ですし、 これを機にもっともっと紫式部のことを知ってもらえたらと思っています」と「源氏物語」の力をあらためて強調するとともに、紫式部がより親しまれていくことに願いを込めていた。

 ちなみに「まひろ」の名には「あまり意味はない」とのこと。「最初は「ちふる」がいいと言っていたんですけど、その名が別の登場人物の子供と同じだったこともあって、1年聞いていて耳心地よく、なおかつあまり主張もなく入ってくる名前がいいと、チームで考えました」と由来について語っていた。(編集部・石井百合子)

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