「SHOGUN 将軍」プロデューサー、続編で背負う責務 次世代の制作モデル確立へ【インタビュー】

第76回エミー賞で歴代最多の18冠を達成したドラマ「SHOGUN 将軍」のエグゼクティブ・プロデューサーであるジャスティン・マークス&レイチェル・コンドウが、現地時間11月13日に行われたラインナップ発表会「ディズニープラス・オリジナル・プレビュー2025」の開催地・香港でインタビューに応じ、世界的に評価されたシーズン1の総括、制作準備中のシーズン2への並々ならぬ思いを語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
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ジェームズ・クラベルの同名小説を映像化した「SHOGUN 将軍」は、天下分け目の「関ヶ原の戦い」前夜を舞台に、歴史上の人物にインスパイアされた主人公・吉井虎永(真田広之)ら戦国武将たちの陰謀と策略渦巻くドラマを描いた戦国スペクタクルシリーズ。シーズン2は、前作の10年後を舞台に、異なる世界から来た2人の男たちの運命が、再び複雑に絡み合う。
「やらなければ」という使命感
Q:「SHOGUN 将軍」の大成功はハリウッドだけでなく、日本のドラマ制作にも大きな衝撃を与えました。ここまで影響力を持つ作品になることは、お二人にとって想定の範囲内だったのでしょうか?
レイチェル・コンドウ(以降、レイチェル):一言で答えるなら「NO」です。制作は本当に大変でしたし、決して簡単な道ではありませんでした。当時の私たちは、「できる限り良い仕事をすること」ではなく、「とにかく最後までやり切ること」に意識が向いていました。
ジャスティン・マークス(以降、ジャスティン):シーズン1のライターズ・ルームで、脚本家たちと一緒に原作小説を読み解き、探求したい文化の“表面”に触れ始めました。あの喜びが、今も脳裏をよぎります。正直に言うと、当時は「海外の視聴者は、この作品を観てくれないのでは」と不安もありました。私たちが愛せる最高の作品を作ろうというマインドで制作していました。
レイチェル:ライターズ・ルームでは、原作小説から視聴者に響く物語を見つけ出すことができました。そして、視聴者がそれに反応してくれたのは、信じられないほど嬉しかったです。
ジャスティン:視聴者に響く物語は、結果がどうであれ、作り手を後押しするものなんです。吉井虎永、戸田鞠子、ジョン・ブラックソーン/按針の物語は、私たちの頭の中でずっと響いていたんです。たとえ、字幕入りのドラマが本国で受け入れられなかったとしても、「やらなければ」という使命感がありました。結果として、物語が良ければ、俳優が素晴らしければ、世界観が魅力的であれば、観てくれる人はたくさんいるとわかりました。私たちにとっても驚きで、幸運なことでした。視聴者のおかげで、私たちはこうして物語を語り続けることができたんです。
登場人物の“信念”に共鳴
Q:キャストの多くが日本人、7割が日本語セリフというオーセンティックな「SHOGUN 将軍」が、北米の視聴者に受け入れられた最大の要因は何だと分析していますか?
レイチェル:いくつか理由があるとみています。まず一つ、視聴者には「別の世界へ連れていってほしい」という願いがあると思います。歴史ドラマは、「飛行機に乗らずとも旅ができる」手段でもあるんです。「SHOGUN 将軍」の世界観では、さらに、別の時代にもトラベルできる。観客は、その点を評価してくれたのだと思います。
もう一つ、視聴者がキャラクターに共感できたから。人生を何に捧げるべきなのか、何を信じて生きるのか。「SHOGUN 将軍」の登場人物には、命をかけて探し求めている者もいます。現代を生きる私たちも、同じような葛藤を抱えている。人間として、誰しもが感じることですよね。だからこそ、観客は彼らの“信念”に対する姿勢に強く共鳴したのだと思います。
ジャスティン:キャストが作品にもたらした「ユーモア」も大きかったです。物語は、ずっとシリアスである必要はない。俳優たちは、その世界観に生命力を吹き込んでくれました。例えば、浅野忠信さんが演じた薮重。浅野さんは、いい意味で予想外の方向からアプローチしてくださいました。
ハリウッドの間違いを、より良い形に正す
Q:真田さんはラインナップ発表会で、「SHOGUN 将軍」は若き素晴らしい才能にチャンスを与える“プラットフォーム”と表現していました。真田さんが自ら演技指導やアクション監修に入るなど、若手俳優にとって撮影現場はまさに「学校」のような場所だと想像できます。プロデューサーとして、「SHOGUN 将軍」は今後どのようなコンテンツへと進化していくとお考えですか?
ジャスティン:私が期待しているのは、「SHOGUN 将軍」の制作モデルを、時代劇に限らず、他のジャンルでも応用できることです。西洋の作り手という立場で、外国の文化を扱うプロセスは、これまでハリウッドが繰り返してきた間違いを探しながら、それをより良い形に正すことだと思います。それは、物語を語る者として、自分たち自身に課している義務なんです。
私は、ありきたりな表現に頼ることはせず、新たな方法でみなさんを驚かせたい。異文化の中で私たちを驚かせたものを物語に持ち込む姿勢、誰かの言葉、風景、価値観、出来事……自「おや?」と感じたものを物語に取り入れる。自分たちの頭の中だけで作られた物語を観たいわけではありません。俳優たちが魂を注ぎ込み、そのプロセスから自然と浮かび上がってくる物語が見たいんです。その方が、視聴者にも“本物”と感じてもらえるのです。「SHOGUN 将軍」で私たちができるのは、俳優たちの道を照らすこと。このプロセスが、次世代の作品にも受け継がれていくことを願っています。
ディズニー傘下のFXが製作した「SHOGUN 将軍」シーズン1はディズニープラスのスターで全話独占配信中 シーズン2は2026年1月撮影開始


