戸田恵梨香、老けメイクに3時間半 細木数子役で譲れなかったこと

戸田恵梨香が日本一有名な占い師・細木数子を演じたNetflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」が配信中だ。波乱万丈な数子の人生に飛び込んだ戸田は、彼女の凄まじいバイタリティ、その裏に秘めた孤独までを生々しく体現。俳優として新たなステージに踏み入れたことを確信させる、圧巻の存在感を放つ。17歳から66歳まで約50年の数子の人生を1人で演じきる上では、どのような試みがあったのか。時には瀧本智行監督と議論をしながら挑んだ役づくりについて、戸田が熱く語った。
細木数子の人生は驚きの連続
独自に編み出した六星占術をうたい、「大殺界」「地獄に堕ちるわよ!」といった強烈なワードで占いブームを巻き起こした細木数子。昭和から平成にかけた風景を鮮やかに映像化しながら、数子の壮絶な闘いと欲望渦巻く虚々実々のドラマを描く。
あの細木数子を、戸田恵梨香が演じるーー。その第一報は驚きと共に広がったが、オファーが舞い込んだ際、戸田自身も「まさか」と目を丸くしたという。引き受けた最大の理由は、「台本が面白かった、その一言に尽きます」とキッパリ。
「細木さんがテレビに出ていた時代、私は撮影が続いていて、寝る時間もあまりないような時期で。テレビをあまり観ていなかったので、細木さんについても『勢いのある人気占い師』というくらいの認識でした。今回お話をいただいて1話の台本を読んでみたところ、こんなにも壮絶な人生を歩まれていたんだと衝撃を受けて。これは本当に起きたことなの? と細木さんの人生にものすごく興味が湧きました」と同時に、細木本人と似ていないことに「不安を覚えた」とも。
「いくら興味が湧いたとはいえ、似ても似つかない私が演じるのは失礼ではないかなと。“他の役者さんの方が良いのではないでしょうか”とお話をしました」と明かした戸田だが、そこで背中を押したのがプロデューサーの言葉だ。「“細木数子さんの喋り方や体格などは真似しなくていいです”“戸田さんが台本から感じる、細木数子像を作ってください”とお話しいただき、“それならばやりたい!”と勇気が湧いてきました」
第1話の台本を読んで心を動かされつつ、それ以降の物語を読み進めると数子の人生は波乱に次ぐ、波乱。戦後の焼け野原で飢え、貧しさから脱するために高校を中退して夜の街で働き始め、20歳そこそこでナイトクラブを成功させて銀座の女王と呼ばれた細木。その後は夜の街で培った人心掌握術を駆使して占い師として一世を風靡するが、一方で霊感商法や裏社会のつながりといった黒い噂が囁かれるなど、どこを切り取っても度肝を抜く逸話ばかりだ。
戸田は「1話を読んで『面白い!』と前のめりになってしまったけれど、台本が仕上がっていくと、思っていた以上にものすごい人生なんだと気づいて。無責任に引き受けてしまったかな……大丈夫かなと思ったりして」と微笑みながら、「でも威勢を張ることによって弱さを隠しているようなところには自分も似たようなものを感じたり、これだけドラマチックな人生を経験している台本の中の細木さんが羨ましくも思えて。お芝居をしていても、こんなにやりがいを感じることはない! と思うくらい楽しかった」と充実感を握りしめる。
老けメイクに3時間半!譲れなかった「しわの表現」
劇中で戸田は、17歳から66歳までの数子の人生を演じている。「60代の女性を演じるのは初めてなので、未知の世界でした。台本が仕上がっていくと、当初思っていた以上に60代の数子を描く部分も多い。“これはごまかせないぞ”と恐怖感を覚えることもありました」と回想した戸田。
生き延びるために必死だった10代。そこから数子は富や名声、色恋のすべてを手に入れようと駆け抜け、どん底を味わいながらも何度も這い上がっていく。戸田が演じる60代の数子には、修羅場を潜り抜けてきた迫力がにじんでいる。演じる上で気を付けていたことは、「数子の人生を、逆算をしながら役づくりをしていく」というもの。「60代の数子については、撮影期間の最後のほうに撮影をさせてもらいました。10代から40代までは順を追いながらも、結構バラバラに撮っていて。1日の中で40代をやって、10代をやって、20代をやって……という日もありました。それぞれの時代で話し方も変えていたので、混乱するような瞬間もありました」
60代の凄みを出すために意識したのは、「声のトーンを落とす」こと。「以前『SPEC』(~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~)というドラマで、“ドスの効いた声”を習得したので、それを改めて活かしてみました」とにっこり。老けメイクには「3時間半かかっている」と明かす。
「目尻のシワやアゴ下のたるみなど、顔全体、首、そして手も特殊メイクをしています。当初、監督がイメージして特殊メイクの方に指示していたのは、おでこまで特殊メイクをつけて、シワシワのおばあちゃんのようにするメイクでした。“シワがないと迫力が出ない”ということで。でも私は“そんなことない!”と、監督に相談をして。占いという仕事をしている上でも外見が不気味に見えてはいけないし、“シワがあったとしてもしっかりと肌にハリがあって、ケアをしながら年齢を重ねたんだという見え方にしたい”とお話しました。ケアに投資している感じを表現したいという思いは、どうしても譲れなかった」と振り返りながら、結果として「おでこは特殊メイクを施さずにやらせていただいた」と告白。それによって怒りの場面も、自身の眉間を使って表現することができたと語る。
加えて「年代によって眉毛の形も変えている」そうで、「10代の頃は、私の眉そのまま。後半に向けて眉頭を剃り、なるべく眉毛を吊り上がるようにして。メイクさんと入念に話し合いながら作っていく時間は、とても楽しかったです」と数子の生きざまを、メイクや顔つきにも反映させている。
「またセーラー服を着るとは…」加齢表現は朝ドラの経験が糧に
長い年月を演じるにあたり糧となったのは、2019年後期のNHK連続テレビ小説「スカーレット」でヒロインを務めた経験だという。
「『スカーレット』で初めて40代を演じました。その時に“きっと老眼が始まっているだろうな”と思いを巡らせたり、自然にやってくる老いや、そこで得る体感とはどういうものなのだろうと、たくさん考えていました。その土台があったからこそ、今回は60代という年齢ならば、さらにどういった積み重ねが必要なのだろうかという想像ができた」としみじみ。
「スカーレット」の陶芸家・川原喜美子や本作の細木数子など、1人の人生を背負うことの醍醐味についてどのように感じているだろうか。
戸田は「疑似体験をしながら、年齢を重ねる中で獲得する人としての深みを表現できたり、その年代ごとの感情を知ることができる」と回答。「朝ドラでは、私が30歳の時に喜美子の10代を演じて。本作ではそれから7年経って、30代後半にして数子の10代を演じることになりました。今回はセーラー服を着ると聞いて驚きを隠せませんでした」と笑いながら、「30代後半でもう一度制服に袖を通し、まだ何も知らない、10代の世界を体現することができてとても楽しかったです」と目尻を下げる。
ラインナップ発表会で瀧本智行監督は、戸田の芝居を見ながら涙して「カット」の声をかけられなくなったシーンもあると話し、「戸田恵梨香演じる数子に、恋に落ちた」と最大の賛辞を送っていた。撮影現場にただならぬ熱気が漂っていたことがうかがえるが、戸田は出会いと別れを繰り返す数子を演じる中で、「泣くシーンではないのに大号泣してしまったこともある」のだとか。それほど数子役に没入し、「約半年間の撮影の間、本当に細木数子という人物の人生を生きてこられたという実感があります。今そう思える作品に出会えたことは、私にとって宝物」と感無量の面持ち。
「瀧本監督との出会いも、とても大きなものになりました。本気で監督とセッションをできた感覚があり、そういった時間はこんなにも居心地がいいものなんだと思いました。これからも機会があればぜひ監督についていきたいと思うし、また監督に褒めてもらえるよう、成長した姿をお見せしたいです」と笑顔を輝かせていた。
Netflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」は独占配信中


