小栗旬が俳優であり続ける原動力「自分では選ばない人生を生きる」

三池崇史監督の最新作『バッド・ルーテナント:トウキョウ』で、汚職にまみれた警部補・矢吹恭二を演じた小栗旬。20代から数々の作品に出演し、40代となった今も第一線を走り続ける小栗が、俳優という仕事を続けている理由を明かした。
長いキャリアの中で、作品ごとに何か新しい“気づき”があるのか。小栗は少し考えながら、「気づきみたいなことは、そんなにないですけど」と切り出した。ただ、作品を終えるたびに改めて感じることがあるという。「なぜ自分が俳優をやり続けているのかという部分で。やっぱり、自分が憧れたり、自分ではなれないなっていう人物になれることが好きで、続けているんですよね」とその理由を語った。
今回演じた矢吹も、まさにそんな一人だ。警察官でありながら、ドラッグやギャンブルに溺れ、汚職にも手を染める警部補。欲望に忠実で、どこか破滅的、それでいてどこか人間臭さを抱えた男だ。「矢吹のような人生は絶対に生きられないけど、矢吹の人生を生きられたことが、すごく楽しい人生だったなと思いました」現実の自分では選ぶことのない生き方を、映画の中で生きる。それが小栗にとって俳優という仕事の大きな魅力なのだという。
そんな矢吹という人物も、台本を読んだ段階と、実際に撮影現場で演じた後とでは印象が変化した。小栗が当初気になっていたのが、矢吹が年上の人物たちに対しても平然とタメ口で接することだった。「中野英雄さん演じるヤクザに対してもタメ口で(笑)。普段なら絶対しないじゃないですか。だからなんでこの人、こんな強気でいけるのかな、みたいな感じがあったんですけど」脚本を読んだ時には、そこに多少の違和感があったという。しかし実際に先輩俳優たちを相手に芝居をしてみると、その感覚が変わった。「台本を読んだ時には違和感があったんですけど、実際に演じてみたら違和感はそんなになく、意外としっくりきました」
相手が誰であろうと臆することなく、自分のペースで接していく。その図太さも含め、矢吹という人物は、共演者を前にして初めて実感を伴って立ち上がってきたようだ。役というものは、台本を読んだ時点で完成するわけではない。撮影現場に入り、相手と芝居をし、その場の空気を受け取ることで、最初に思い描いていた人物像が変わっていく。今回の矢吹もまた、そうして現場で作られていった人物だった。
一方で、自分とは正反対の人物を演じるだけではない。役を通して「こんな人になれたら」と感じることもある。最近演じた人物について、「この人のような軽やかさで生きられたら、多分素敵な大人なんだろうな」と感じたこともあったという。「そういうものに出会えることが、結構幸せだなと思って続けている」自分では絶対に選ばない人生を生きることもあれば、自分の人生に持ち帰りたい何かを役からもらうこともある。その両方が、小栗にとって俳優という仕事の面白さなのだろう。
『バッド・ルーテナント:トウキョウ』では、その“別の人生”を文字通り身体で体験することにもなった。撮影場所の一つとなったのは、新宿・歌舞伎町の裏路地。「何があっても、新宿歌舞伎町のあんな裏の路地に足突っ込まない」と小栗。そこは水でびしょ濡れになり、「すっごく臭いし、本当にでっかいネズミがいた」と振り返るような場所だった。そんな現場で巨大なネズミが現れた際には、三池監督が「カメラ回しておけばよかった」と口にしたという。
普通なら避けて通りたいような状況さえも、映画の一部として面白がってしまう。その現場に身を置き、自分では決して足を踏み入れないような場所で、自分では決して生きない男の人生を生きる。「自分ではなれない人物になれる」。歌舞伎町の裏路地に立つ矢吹も、軽やかに人生を生きる別の役も、すべて小栗にとっては、自分とは違う人生を経験させてくれる存在だ。40代となった今も、小栗が新しい役へ向かい続ける理由は、そこにあるのかもしれない。(取材・文:森田真帆)
映画『バッド・ルーテナント:トウキョウ』は10月23日より全国公開
ヘアメイク:高木琢也(OCEANTOKYO)
スタイリスト:三田真一(KiKi inc.)



