キアヌ・リーブス インタビュー 2000年10月31日 キアヌ・リーブス KEANU REEVES 『リプレイスメント』11中旬 丸の内ピカデリー2他・全国松竹東急系 配給:ワーナー・ブラザース 一度は挫折しながら、人生のセカンド・チャンスに賭けるプロ・フットボール選手の奮闘ぶり を描いた『リプレイスメント』。キアヌ・リーヴスは本作で並外れた才能を持ちながら、 いざという時に実力が発揮できずに引退してしまった元フットボール選手を演じる。 『リプレイスメント』に出演したのは ストーリーが面白かったし 主人公の気持ちが良く分かったから Q 立て続けに映画を3~4本も撮って、やっとオフに入ったのに今度はハ ゙ンド活動 で、朝食を食べているヒマもないんじゃない? R キアヌ・リーヴス(以下R) ここのところ、仕事に恵まれてすごくラッキーなんだ。確かに忙し いけど、いい経験もできて最高だよ。 Q 『リプレイスメント』に出演しようと思った理由は? R そストーリーが面白かったし、主人公のシェイン・ファルコの気持ちがよく分かったんだ。彼は 人生をやり直すために、セカンド・チャンスに賭ける苦労人だから。 Q あなたにもそんな経験があるの? R もちろん、あるよ。仕事でも、プライヴェートでも。 Q セカンド・チャンスをつかむ目的で出演した映画もある? R いや、そういう意味じゃないけど。 Q 何もかもが嫌になってしまったことは? R あるよ。誰にだってパッとしない時はある。うまく対処しよう、理解しようとし て、逆に引きこもってしまったり。俳優って、仕事を取ろうと下手に出ると弱みに つけ込まれて(笑)、うまく行かないことが結構あるんだよ。 Q じゃあ方向転換したい時はどうするの? R キャリアのことは、どうでもいいんだ。方向転換は、どんなキャリアにも起こり得るし、 それも一部だから。で、どうするかって? まあ、窓辺のソファにでも座ってるよ。 Q テレビのチャンネルをいじりながら? R いや、テレビは見ない。 Q あなたには音楽があるものね。ライヴも、かなりの数をこなしたんじゃない? R ミニ・ツアーだけどね。今回は、CDが7月11日にリリースされて、日本で2週間ツアーをした後、 ニューヨーク、ボストン、ロスでライヴをやったんだ。 Q ステージってどんな感じ? 快感? R 舞台に立っている時や、撮影に入る瞬間に似ている。ライヴはエキサイティングで楽しい けど、リラックスしてステージに出て行ける時ばかりじゃないんだよ。神経をすり減らすよ うな時もあって。 Q あなたが神経をすり減らす? R そりゃ、僕だって。 Q でも、カリカリしていたら観客に伝わらない? R まあ、いつも出来のいいステージをこなせるとは限らないからね。 Q 現在、とても人気のあるアイドル・ハ ゙ンドをどう思う? R どう思うって? Q ─憧れているとか?(笑) R さあ。連中は楽しそうにやってるし、その音楽をエンジョイしてる人が大勢いるん だから、いいんじゃない? Q 日本のファンもああいうリアクションをするの? つまり、アイドル・ハ ゙ンドにありがちなリア クションっていう意味だけど。? R どんな? Q ヒステリックで熱狂的な。 R そこまで過激じゃなかったよ。僕らは、ただのしがないインディーズ・ハ ゙ンドなのに、 ファンはずっと温かく見守ってくれているんだ。日本でCDを2枚リリースしてるけど、特に 2枚目の反応が良くてね。ライヴでも一緒に歌詞を口ずさんでくれて、もう最高だっ た。 Q かなり、いいライヴができたんじゃない? R 自分でもうまく行ったと思ってる。5~6年前の楽曲を集めて発表したCDなの に、いい反応が得られてうれしいよ。 Q 次のレコーディングまでに時間がかかるのは、映画の方が忙しいから? R うん。"今は映画を撮るべき時だ"と感じたまま、ハ ゙ンド活動はできないからね。 僕がアメフトの練習をしたり トレーニング・キャンプに参加したのは キャラクターを理解するためなんだ Q アメフトの経験は? R 1度もないんだ。だから……初歩からトレーニングさ。一通 りできるようになるまで2 ヵ月くらいかかったよ。 Q 寝る時、筋肉痛に悩まされなかった? R 夜になると痛むんだよな(笑)。ステップ・オン(ディフェンスに足を踏みつけられること) のお陰で、フリーザーに常時、アイス・パックを6個用意しておいて、寝る前に、両腕と両膝、時 には両足もアイシングしなきゃ眠れないほどだった。 Q あなたの意見で変更されたり改正されたシーンは? R 撮影中にはなかったけど……ハ ワード(・ドイッチ監督)が実に協力的で、一人一人の 意見にきちんと耳を貸してくれたんだよ。でも今回は、真面 目な役だったし、ストーリー を引っ張っていく責任みたいなものを感じていたから、アドリブをやったり、演技を 変更する余裕は全然なかったね。シェインという男は言わば静寂の象徴で、彼以外のキャ ラクターは、その軌道の周りをリアクションしながらグルグル回っているような感じなんだ。 Q どうやってステップ・オンされたの? R ステップ・オン? ボールがスナップされた瞬間に、まだセンターに残っているか、ディフェンス・ライン から足を戻さないでいると、バックアップ体制をとるために起きるんだ。基本的にステッ プ・オンはスナップするたびに起こるわけで、当然、僕の足にも240ポンドのラインマンのスハ ゚イク の跡がくっきり残ったよ。 Q 『マトリックス』とは対照的だけど、今回はどんなトレーニングをしたの? R 対照的って、カンフーとフットボールがという意味? でも、スポーツの基本は同じだ。協調 性、システムの習得、日々の鍛錬。 Q でも、まだ夜になると痛むでしょう? R 確かに痛むし、この痛みはちょっと言葉で表現できない、違う種類の痛みなん だけど、僕がトレーニングをするのは役にアプローチするためのひとつの手段として、自分 から望んでやってることなんだよ。今回、僕がアメフトの練習をしたり、トレーニング・キャンプ に参加したのは、シェイン・ファルコというキャラクターを理解するためなんだ。なぜなら、僕はアメ フトをやらないし、どんなスポーツなのかもわかっていない。 だからキャンプでは、チームのメン ゙ーがどんな朝食をとるのかに始まり、作戦会議で何が話し合われるのか、誰が、ど のポジションにつくのか、誰が試合の流れを読んでチームを引っ張っていくのか、フィールド でどんなウォーム・アップをするのか、オフェンスとディフェンスの動きにどんな違いがあるのか… …など、あらゆることを学んだんだ。 Q ずいぶん筋肉がついて、ひとまわり大きくなったみたいだけど。 R うん、まあね。アメフト選手としての僕のベスト体重は、どうやら192ポンド(約87キロ)ら しい。 Q 撮影が終わったら体重も減った? R 今は180ポンド(約82キロ)くらいだと思う。 僕にとって成功するか否かは 役を演じることと何の関係もない。 自分のやりたい役を探し その役を充分に理解して いい映画を作りたいと思っているだけ Q もうひとつの新作で演じているのは、暴力的な夫の役? R うん。ドニー・ハ ゙ークスデイルという役名で、サム・ライミ監督の"The Gift"という作品だ。ケイ ト・ブランシェット、ヒラリー・スワンク、ジョヴァンニ・リビシという素晴らしい俳優に囲まれて仕事がで きたことは、僕にとって貴重な経験だった。この役を演じる機会を与えてくれたサ ム・ライミ監督に心から感謝している。 Q しかもあなたが悪役で。 R 僕の妻を演じるのがヒラリー・スワンク。彼女は素晴らしい女優であり、一人の女性とし ても申し分ないという役どころで、僕はそんな妻に暴力を振るう、醜くて気性の激 しい男を演じている。 Q そういう役にアプローチするのは難しい? それとも意外と楽しい? R いや、難しくはないよ。僕の魂の一部が、啓示的に彼の心を認識しているような フリをすればいいだけだから。意外と楽しいかって? まあ、そうだね。 Q あなたは若い頃からこの仕事をしているけど、演じることの楽しさは以前と 変わらない? R ああ。 Q それがビジネスでも? R 僕は演じることを愛していて、その気持ちはどんどん強くなってる。こういう 役を演じる機会に恵まれたことに、ただ感謝するだけだ。 Q もう、転職を考える心配もないし。 R いや、危機感は常に持ってないと。 Q 経済的に安定していても? Q 僕が? さあ、どうかな。 Q 『マトリックス』の成功で……。 R 金の話をしようってのかい? Q いいえ。成功すると楽しんで仕事ができるようになるのか、それとも逆に、や りにくくなるのか、と思って。 R 僕にとって成功するか否かは、役を演じることと何の関係もないんだ。僕は自 分のやりたい役を探し、その役を充分に理解して、いい映画を作りたいと思ってい るだけだから。成功すれば確かに嬉しいし、感謝もするけど、あくまでも「また演 技をしている」という感覚しかないね。 トーマス・アンダーソンは 答えを探し求めて生きている。 僕らの生き方への答えを 導き出してくれる媒体なのさ Q 『マトリックス』のDVDヴァージョンが話題になったけど、あの作品がいまだに多くの 人々を魅了し続けている理由は何だと思う? R 僕はまだDVDを見てないけど、あの映画の主人公、トーマス・アンダーソンは、答えを探し 求めて生きている。彼は、僕らの生き方への答えを導き出してくれる媒体なのさ。 Q パート2とパート3の撮影は、いつから始まるの? R 11月からトレーニングに入って、3月の始めから撮影を開始して、4月の終わりには完 成するだろう。 Q パート2とパート3を同時に撮影するというのはあなたのアイディア? R ああ。今日ハ ゚ート2を撮影して、明日はパート3の撮影……という具合になると思う けど。 Q 順調にいきそう? R 無理だろうね。 Q 俳優のあなたにとって、そういうやり方は悪くない? R 続編の常識をちょっと破るだけさ。 Q カンフーの基礎訓練キャンプはフットボールの猛特訓よりキツかった? R いいや、そんなことないよ。でも、努力の量 を測定できるとしたら、おそらくカンフ ーの方がキツかっただろうな。期間も4ヵ月と長かったし。 Q アメフトをキツいと感じなかったのは、精神的に集中していたから? R 違う。カンフーは馴染みが薄いからさ。アメフトをするのは初めてだったけど、僕は子供 の頃からボール投げをしたり、スポーツをして育ったんだ。でも、カンフーは映画で見たこと があるだけで、そのジェスチャーをマネしたこともない。つまり、ボール投げよりも馴染みが 薄いってことだ。 Q ストーリーをちょっとだけでいいから教えてくれない? R ハ ゚ート2は……これ本当に喋っていいのかな? Q もちろん、あなたに聞いてもいいという許可は取ってるから。 R ハ ゚ート2の冒頭でザイオンを手に入れて、その世界に遭遇するんだ。その先は乞うご 期待(笑)。 Q 『マトリックス』の技をひとつだけ習得できるとしたら何を学ぶ? R もし、この強大なハ ゚ワーを持てるとしたら? Q そう。 R ヒーリングかな。 Q 自分のために? R ああ。ヒリヒリ痛むツマ先を癒すために(笑)。 Q もしジャッキー・チェンと闘わなくてはならないとしたら、どうする? R ケツを蹴られるよ(笑)。 Q ジェット・リーはどう? R 彼にもケツを蹴られるだろうな。でも言っとくけど、僕はジャッキー・チェンよりもジェッ ト・リーよりも走るのは速いぜ(笑)。カンフーも捨てたモンじゃないし。 Q 『マトリックス』の続編でジェット・リーと共演するの? R 詳しいことは知らないんだ。過去に監督と脚本家が彼と面 識を持ったのは知っ てるけど。彼は本当に素晴らしいアーティストだと思うよ。(ロビン・リンチ) [PR]