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「マット・デイモン」インタビュー

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マット・デイモン インタビュー
Matt Damon

最近ウケている映画の風潮にはまったく反する作品だというところが、僕は特に 好きなんだ

 


(ロビン・リンチ/訳 鈴木玲子)


  キャラクターになりきるために、役に入り込んだままで、街を散歩したりするん だ
- 『バガー・ヴァンスの伝説』のおかげで、チャンピオン並みのゴルファーに なってしまったそうね?

 マット・デイモン(以下D):また誰かがひどいデマを流したんだな。とんでも ない。そんなにうまくないよ。

- ボビー・チルダーズによると、あながちそうでも ないようだけど。あなたのゴルフはなかなかのものだって言っていたわ。

ジョエル(・グレッチ)はうまいよ。彼は子供のころからやってたから。僕 はこの仕事の前はまったくやったことがなかった。だから、あわてて応急処置の 特訓を受けなくちゃならなかったんだ。

- でも、あなたの腕はかなり上がったか ら、ハンディはたったの1ってことになるだろうという話だったわよ。

そんなの、大嘘だよ(笑)!

 
- この作品のあと、次の“Born Identity”の撮影に入る前にだいぶ長い休暇 を取ったそうね?
実は、ベンと一緒に始めた会社のことやなんかで、ずっと忙しかったんだ。 だから、あまり休暇って感じはしなかったけど、楽しく過ごしたことは確かだ よ。それに、ここ3ヵ月ほどはずっと“Born Identity”のためのトレーニング もあるから。
- トレーニングって、何をしてるの?
人の殺しかたの訓練(笑)。
- それでは、いちばんいい殺しかたとは?
う~ん、それは教えられないけど、やっぱり撃ち殺すのがいいんじゃないか な。
- いちばん手っ取り早くできるから?
まあ、場合によるけど。おかげで、僕もいろんな殺しかたを覚えたよ。
- どんな内容の話なの?
ひとりの男が目を覚ましたとき、彼は自分のことを思い出せなくて苦しむ。 だが、ストーリーが進むにつれて、いろんなことがわかってくる。いろんな外国 語を話せたり、喧嘩に強くて、銃を手にしたとき妙に馴染んだ感じがあったり ね。とにかく、そんなふうに自分が何者なのかを見つけだそうとする男の物語な んだ。
- ペネロペ・クルスとの共演よね?
いや、それは“All the Pretty Horses”だよ。
- では、誰と共演するの?
ロッカ・パテンテ。彼女の新作、もう見た? 僕はまだなんだけど。
- ええ、見たわ。
面白かった?
- いいえ、あんまり。でも、今度こそ彼女も本領を発揮するわよ。
一緒に脚本読みはやったんだけどね。彼女、ほんとに素晴らしかったよ。
  皮肉っぽい見かたをしたい人たち向きの 映画じゃないことは確かだね
- ところで、『バガー・ヴァンスの伝説』では、やっぱりゴルフ・クラブを振 り回すのに苦労した?
(C)2000 TWENTIETH CENTURY FOX
うん。最初から大変だろうとはわかっていたんだけど、30日間で覚えなくち ゃならなかったから、1日8時間もプロにレッスンしてもらった。でも、たちま ち夢中になっちゃって、結局はいいスイングができるようになったんだよ。それ がいちばんの心配だったんだけど。この作品は、あっという間に話が決まっちゃ ったから、準備の時間がなくて大変だった。それでも絶対にノーとは言えないタ イプの企画だからね。ロバート・レッドフォードに会ったとき、本当に30日間で ゴルフをマスターできると思うかって尋ねてみたんだ。ゴルフなんてまったくや ったことなかったし、かなり難しいらしいということだけは知っていたから。で も、彼の返事は「もちろん、できるさ」と、あっさりしたものだった。それを聞 いて、出演を決めたんだ。
- 映画としてはどう思う? 完成した作品はもう見た?
映画として? そりゃ、もちろん気に入ってるよ。明るい希望を抱かせる、 ちょっと古風なおとぎ話だからね。皮肉っぽい見かたをしたい人たち向きの映画 じゃないことは確かだね。最近ウケている映画の風潮にはまったく反する作品だ というところが、僕は特に好きなんだ。これまで僕がやった作品のどれともぜん ぜん違う。でも、僕自身が意識的にそういう作品選びをしたってわけではないん だよ。『リプリー』と“All the Pretty Horses”、それにこの作品と、ここの ところ、偶然まったく違う感じの作品がつづいている。
- いつも忙しいあなたが、こんなにゆっくり話をしてくれるなんて、信じられ ないわ。
明日、僕は30歳になるんだ。
- デビュー以来、あまり変わってないわよね。自分ではどんなところが変わっ たと思う? あまり変わってないとしたら、なぜだと思う?
いい質問だね。でも、自分ではいい答えが出せないと思うな。自分を分析す るのってむずかしいから。たぶん、今でも以前からの僕と変わってないだろう ね。だからこそ、いつでも努力しなくちゃと思うんじゃないかな。頑張らなくち ゃって思わなくなるのが恐いんだ。うまく言えないけど、不安感の中にはめ込ま れて生きてるような感じがある。そう言えば、今朝ジェイ・カーと話をしたんだ けど、ずいぶん前にジョン・ギールグッドと会ったとき、彼も同じようなことを 言っていたそうなんだ。あのギールグッドが、仕事の依頼の電話がかかってこな くなったらどうしようと、心配していたんだって。彼ほどの人がそんなふうに思 うなんて馬鹿げてるけど、僕にはよくわかる。俳優なら誰だって、そんな不安感 を抱いているものなんだ。だから、ずっと忙しいというのは感謝すべきことかも しれない。
  わかりやすくていい演出というのは シンプルなものなんだよ
- ウィル(・スミス)と一緒に仕事してみて、どんな感じだった? 彼のこと は前から知っていたの?
いや、今回の共演で初めて彼と知り合いになったんだ。すばらしかったよ。 彼って、何でもわかってしまうタイプの人なんだ。まさに、ポジティヴなエネル ギーそのものって感じ。仕事が終わって家に帰った彼が、怒ったり、かんしゃく を爆発させたりするなんて、まったく想像できない。まるで“The Lottery”っ ていう物語みたいだなって思ったね。短い物語なんだけど、読んだことある? 1年にひとり石たたきの刑で人を殺して平和を保つという町の話なんだけど。年 に一度、無作為に選ばれたひとりが引きずり出されると、町中の人たちが集ま り、石を投げつけて日頃の鬱憤を晴らすんだよ。それが終わると、町の住人はみ んな機嫌がよくなり、争いもけんかもなくなるという物語さ。とにかく、ウィル は本当に明るくて前向きな人なんだ。きっと、奥さんとはよほど固い信頼で結ば れているんだね。それに、家族との絆や、親しい友人たちとの信頼関係もがっち り築かれているに違いない。いかにも人生を満喫してるって感じで、うらやまし いよ。仕事もしっかりやってるけど、うんざりするほど根を詰めたりしない。一 緒に仕事をする上で、本当にすばらしい人だった。
- では、ロバート・レッドフォードは?
(C)2000 TWENTIETH CENTURY FOX

もちろん、彼も最高さ。特に、彼自身も俳優だから、演技指導がすごくわか りやすいんだ。演出のしかたがシンプルで、とてもやりやすかったね。あまりく どくど誉めたりもしない。たとえば、先生と呼ばれる立場の人たちにも、いつま でも延々と話をしたがるタイプがいるだろ? 

でも、生徒が実際に行動してみる と、先生から聞いた話とはまったく状況が違うことがよくある。実際に即した、 わかりやすくていい演出というのは、シンプルなものなんだよ。演出がまわりく どいと、役者は混乱してしまう。ずいぶん前になるけど、舞台に出ていたころ、 いつ終わるかわからないほどしゃべりまくる監督と一緒に仕事をしたことがあ る。ずっと聞いているうちに、どうすればいいのか、わかんなくなっちゃったこ ともあった。そういう人たちって、こっちが耳を傾けているかどうかも気にして ないんだよね。熱弁をふるう自分に陶酔してるだ けなんだ。そうなると、役者のほうでもすっかりうわの空になっちゃって、勝手 に考えごとを始めたりする。だから、さあやってみようという段になっても、こ っちはその前にやったのと同じように演じるしかないんだ。

ところが、そういう 場合に限って「すばらしい! それだよ! できるじゃないか!」なんて、絶賛 されたりするんだよね。こっちは心の中で「あんたが言ってたことなんか、一言 も聞いてなかったよ」って文句を言うわけさ。でも、レッドフォードの演出はと ても実際的でシンプルで、わかりやすかったから助かった。実は、前からそうだ ろうとはわかっていたんだ。『グッド・ウィル・ハンティング』には、『普通 の 人々』を参考にさせてもらったことがたくさんあるんだよ。あの作品は、ガス・ ヴァン・サントも大好きだって言ってたな。

ガスは変わり者だから、彼の気に入 りの映画の中には7時間半のハンガリー映画なんての も入っているけど、『普通の人々』は絶対に彼のトップ・スリーに入るそうなん だ。『普通の人々』は本当にすばらしかった。夜中にメアリー・タイラー・ムー アが階段を降りてきて、ドナルド・サザーランドに声をかけられるシーンがあっ ただろう? あんなシーンをやれたらなって、いつも思っていたよ。そういう意 味では、僕はずっと前から、彼からいろんなことを教えられていたのかもしれな いね。

  僕がお金をもらえるのは 僕がやった映画を人が 好きになってくれるからだ
- そう思う?
うん、絶対に。これまで僕が演じてきた役を思い返してみると、この作品で 演じたジュナ役ほどチャレンジングなものなんて、今までなかったかもしれない な。レッドフォードとも事前にずいぶん話し合いを重ねたけど、本当に大変だっ たのは彼のほうだったんだ。こういうスポーツものという題材で、しかも微妙な 心理描写が求められて……監督として、そういうことのすべてをバランスよくさ ばいていかなくちゃならなかったわけだからね。これはありきたりの映画じゃな いんだよ。レッドフォードも「たとえば、ぜんぜん面白くない『プリンセス・ブ ライド』を想像してごらん」なんて言っていた。いろんな映画のエッセンスを集 めて、そこからこの伝説が作り出されているんだ。
- あなたもそろそろ、いわゆる大作映画の主演をやってもいいころだとは思わ ない? “Born Identity”はそういう作品だと思う?
いや、決してそういうタイプの映画じゃない。『スウィンガー』という作品 は見たことある? あれがダグのスタイルであり、好みなんだ。莫大な興収が見 込める大作というような作品とは違う。今回もいかにもダグらしい、彼のスタイ ルの作品だよ。実を言うと、大作映画に主演したいなんて、考えたことないん だ。もちろん、僕のまわりにも「早くビッグな映画に出たい」って言ってる俳優 たちはたくさんいる。でも、実際にその言葉どおり大作映画に出たとしても、結 局はすごく惨めな思いをすることも多いんだ。やっぱり、感情移入できる仕事じ ゃないからだよ。一緒に仕事をする人たちと気が合うわけでもなく、彼らのやる ことを面白いとも思わない。そういう場合は、たいてい出来上がった作品も最悪 だったりするんだ。そうなると、興収も上がらないし、ただ出演しただけという 空虚さだけが残る。そんなの、絶対にいやだ。しか も、一度失敗すると「こんどはもっとうまくやる」なんて言って、さらに深みに はまったりする。そういうの、間違ってるよ。僕がお金をもらえるのは、僕がや った映画を人が好きになってくれるからだ。それに、自分がすごく良いと思って 入れ込める作品だったら、その仕事ができるというだけで嬉しい。成功しようと 失敗しようと、納得できるんだ。
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