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キルスティン・ダンスト独占インタヴュー

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キルスティン・ダンスト インタビュー
 

これまでのキャリアでキルスティン・ダンストが演じてきた役は、ほとんどが“近所 の優等生おねえさん”だった。最新作『クレイジー/ビューティフル』(原題)でダンストは、そんなアイドル的イメージを脱ぎ捨てただけでなく、粉々に打ち砕いてみせた。

 ダンストは、この映画で、貧乏だが心のまっすぐなラテン系青年(新人ジェイ・ヘ ルナンデス)と恋に落ちる、裕福でも問題のある高校3年生を演じている。しかし、 これはよくある「ロミオ&ジュリエット」風物語ではない。  

ダンスト演じる“ニコル”は自己破滅型で、彼女の周りにいる友達を手当たりしだい 悪の道に引きずり込もうとする。酒とドラッグに溺れ、友達と学校をさぼっている。 権力に対して反抗的で、自分を「サイテーな奴」だと思い込み、何をするにも最後ま でやり遂げたことがない。  

彼女は、無愛想で独善的なカリフォルニア州議員の父と対立し、義理の母親に敵意 をつのらせている。その一方で、ボーイフレンドの家族もまた、イーストロサンゼルスのスラム地区から出てアメリカの名門海軍兵学校に入ろうとしている息子のせっかくチャンスを、ニコルの向こう見ずな行動と彼女が与える悪い影響によって潰されることを恐れて彼女を非難する。

「若い人たちを描いた映画に出たかったの。それも安っぽいラブロマンスなんかじゃ ない、もっと現実的な映画にね」  チョコレートブラウン色のベロアのジャケットに、手まですっぽりくるまってインタ ビューに現れたダンストは言う。



私くらいの年頃の女の子が、映画でヌードシーンをやるのって私に言わせれば趣味が悪いわ

去年の秋、大ヒットティーンズコメディ『チアーズ!』で明るく活発で目的達成志向 型のチアリーダー役を演じた後、ダンストはそれとは全く違った役を探していた。

「私は、がさつでとてもマトモじゃないような役がやりたかったの」と弱冠19歳の女優は語る。  事実、ニュージャージー出身の彼女は、この映画『クレイジー/ビューティフル』で 見事に変身を遂げた。長いブロンドの髪を短くカットすることもOKした。ニコル役の衣裳は、パンク調に裂かれて、手染めでルーズにできたヘソ出しスタイルに作られている。ダンストは製作初期の段階で、脚本からヌードシーンをなくしたが、映画の中のほとんどのシーンでブラを付けていないのは一目瞭然だ。 「あまりいい気がしないのよ」  スクリーン上でヌードになることに対して彼女はこう語る。 「私の映画は若い人たちがたくさん観に来るし、私は彼らのいいモデルになりたいの。別にヌードシーンが必要だとも思わないしね。私くらいの年頃の女の子が、映画でそういうことをやるのって私に言わせれば趣味が悪いわ」

あれだけアブないシーンを残せたなんて、うまくやったわよね

ダンストは、男性誌「マキシム」2000年秋号に見開きで掲載された、彼女の挑発的な写真に対する人々の熱狂ぶりにいささか当惑気味のようだ。

「私には自分のキャリアにとってなかなか賢い選択だと思えたのよ」 「『チアーズ!』のいい宣伝にもなったし。でも、あれは昔のこと。だからこれから先ああいうことはもうしないわ。私の中では終わってるのよ。あれは、映画の宣伝を助けて……、キルスティンは大人になりました。以上、おしまい!」

 もし『クレイジー/ビューティフル』にヌードシーンが残っていたとしても、いず れ編集段階でカットされていただろうとダンストはつけ加える。タッチストーンが“PG―13”(13歳以下の鑑賞には親の強い注意が必要な映画)指定での公開を望んでいたからだ。それでもまだきわどいシーンが残されていることに、彼女は驚いている。 「かなり過激に撮られてるのよ。なのに、あれだけアブないシーンを残せたなんて、うまくやったわよね。もう、可笑しくって」  

この問題に対して、リスク覚悟で賭けに出たのは誰でもない監督ジョン・ストックウェ ル──現在へヴィメタルドラマ『ロックスター』を監督中──だったと、ダンストは 言う。

「何が挑戦だったかというと、ふつう、映画にかかわる人たちが、取り除いたり、ソ フトタッチにしようとするものをあえて映画に残したこと。周りの人たちは“ニコル”をもっとましなキャラクターにしたがったわ。ニコルって、映画の冒頭から観客の誰もが好きになれないような役だったから。でもそこが、この映画の大切なポイントなのよ。映画会社は、こういうリスクを負うことをたまに怖がることがあるの。でも、彼らは私たちに、好きなようにやらせてくれたから、私はすごくハッピーだったわ」

自分をぐちゃぐちゃに見せるのが好きだったのよ

3歳の頃から演技をしているダンストは、今回の変身ぶりと、役のおかげで、ヘアセットや、メークに長い時間をかけずにすんだことを歓迎している。 「私、自分をぐちゃぐちゃに見せるのが好きだったのよ」と笑いながら彼女は言う。「自分をピカピカに飾り立てるのは嫌いだから」  

今回のように、問題のある役を演じるにあたって若い彼女には乗り越えなければいけ ない関門もあった。 「私にとって、一番大変だったことは、たぶんずっと落ち込んだ精神状態を持続させなくちゃいけなかったことかな」  

2ヵ月間の撮影を彼女はこうふりかえる。 「精神的にも、肉体的にも、すごく消耗したわ。毎日毎日現場を出たり入ったり。そんな、精神状態をそのまま家にまで持ち込んでた。家族にまで、違う態度で接している自分にハッと気づいたのよ。自分が感傷的になりすぎてて、胸がむかつくぐらいだった。だけど、私はそうしたかったの」

本当の大人の女性の役を演じたのは私にとって初めてのことだった

 彼女は、往年のスター、マリオン・デイビスを描いた次回作『キャッツミアオ』(原題)で今回とは全く違った役を演じることによって、その鬱に近い状態から立ち直ることができたと言う。 「ベルリンへ行って…、おもいっきり派手に着飾ったのよ」  

この作品は今年下旬に公開予定だ。 「この映画は素晴らしい経験だったわ。なんていっても、本当の大人の女性の役を演 じたのは私にとって初めてのことだったんだもの。しかも最高にクールな女性の役な んだから」  デイビスは、長年にわたり愛人関係にあった新聞王ウイリアム・ランドルフ・ ハー ストに私生活でも、仕事の面でも経済的な援助を受けていた。そのスキャンダルによ り、当事世間から悪評をかった彼女について、ダンストはこう語る。

「これまで、彼女のことを公平に評価した人はいなかったわ」 「今回私がデイビスを演じることによって、世間の彼女に対する考えが少しでも変わるといいわ。だって彼女は、ホントに素晴らしいコメディエンヌだったのよ」

みんなは私にトビーがやったのよりもっときついことをさせたわ

キルスティンは、またスパイダーマンのオルターエゴ(トビー・マグワイア)の恋人、 メリー・ジェーン役を演じたスーパーヒーロー・アクション映画『スパイダーマン』の 撮影を終えている。  

赤い髪のか弱い娘を演じるのは、肉体的にも大変ハードな要求に答えなければならな かった、とダンストは語る。 「みんなは私にトビーがやったのよりもっときついことをさせたわ。私は、彼よりた くさんのスタントをしたのよ。だってマスクを付けたいって人だったら誰でも、トビー の代わりになってマスクの下に顔をかくせるでしょ? でも私は、いつだって顔が見 えてる状態なんだもの。何から何まですべてやらなきゃいけなかったのよ」

 スタントよりも、もっと難しいものがあった。それは、後になってつけ加えられた特殊効果のシーンだ。椅子に座り、彼女の頭上にすえられたカメラに向かって叫んだ時のことをダンストはこう振り返る。 「腕を振り回したり、手をぱたぱたさせたり、ただ叫んだりしなきゃいけなかったのよ」  ふと撮影を思い出し笑った。 「ほんとにバカみたいだった。周りは全部青色にかこまれてて、『ハイあなたは今まっ 逆さまに落ちている!』って……、誰だってなんてバカみたいなんだろうってつい思っ ちゃうわよ」

 ダンストは、来年『スパイダーマン』が公開されれば、この大人気のマ-ベルコミッ クの劇場版は観客の反響を呼ぶことになるだろうという。 「すごく人間らしいスパイダーマンに仕上がっているんだもの」  ダンストは、ふたたび別の健全な少女役を演じたことを少し気にしているようだ。

「このスパイダーマンが公開されれば、私はまた“隣のおねえさん”に逆戻り。それでけはお断りだわ」

(アンジェラ・ドーソン/訳 森田まほ)
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