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クリス・ベル監督がスポーツ界にはびこるステロイドや薬物問題を描いたドキュメンタリーを語る

この人の話を聞きたい

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バリー・ボンズは偽証罪に問われて深刻な状態だ。しかしわたしが今持っている感情っていうのは、彼らに対する同情なんだ。バリーやロジャー・クレメンスは偽証罪を問われる前に、強制的にうそをつかなければならない状態で証人台に立たされていたように思うんだ。‐クリス・ベル‐~この人に話を聞きたい~ その25:スポーツ界にはびこるステロイドや薬物問題を描いたドキュメンタリー映画『ビガー、ストロンガー、ファースター』(原題)について監督のクリス・ベルに話を聞いた。
クリス・ベル監督 大リーグが薬物使用問題で世間を騒がせている昨今。アメリカでは一本のドキュメンタリー映画が登場した。それはステロイドを題材にした『ビガー、ストロンガー、ファースター』(原題)だ。クリス監督は元重量挙げ選手。3兄弟の次男として育ち、ほかの兄弟も学生時代はスポーツ選手として活躍してきた。そんな彼が、ほかの兄弟たちの使用するステロイドについて大きな疑問を抱いたのが本作製作の始まりだった。
マイケル・ムーア
シャツ破り、ハルク・ホーガンQ: 過去の映像が散りばめられた素晴らしい構成になっていますが、どうやってそれらを集めたのでしょうか?
 
(クリス・ベル)ストーリーを構成する上で使われたアーカイブ映像は、子どものころの思い出からきているんだ。プロレスラーのハルク・ホーガンが自分のシャッツを破るシーンは、自宅にあった100本のビデオテープの中から探し出したもので、ほかにも友人から取り寄せたものもあったね。プロレス団体のWWEから直接許可を取ろうとした映像もあったんだけど無理でね。その場合は法的指針に従って、著作権を侵害しない方法でそれらの映像を使ったりしたよ。あとはニュース映像をたくさん保管している会社に電話してステロイド関連の映像を探しだしたこともあった。さらにプロレスラーのアイアン・シークの映像とベン・アフレックのCM映像なんかはネットを通して所有者を調べて、取り寄せたりしてね。
 
Q:多くのセレブがこの映画にかかわっていますが、製作費を捻出(ねんしゅつ)する際に苦労された点はありますか?
 
(クリス・ベル)このドキュメンタリーの製作には丸々3年かかったんだ。やはり映画を製作する上で一番難しいことは製作費を捻出(ねんしゅつ)することだね。ただ、わたしたちがラッキーだったのは、マイケル・ムーア監督の映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』や映画『華氏911』をプロデュースしたジム・ザンネッキがかかわってくれたことだ。彼の存在はまるで保険みたいなものだった。映画の世界にかかわりたいと思っている投資家から必ず「君が利益の出る映画を製作できるとということをわれわれに納得させることができるんだい?」という質問が飛んでくるんだ。そんなときはいつでもジムが「わたしはこれまでずっと映画をプロデュースしてきたんだ。この題材に投資することはふさわしいものだと理解している」と答えて、わたしたちをバックアップしてくれたんだ。
偽証罪に問われた、バリー・ボンズQ:大リーグ選手のバリー・ボンズやロジャー・クレメンスには今後どうなってほしいですか?
 
(クリス・ベル)今、バリーは偽証罪に問われて深刻な状態だ。しかしわたしは今、彼らに対して同情しているんだ。バリーやロジャーは偽証罪を問われる前に、強制的にうそをつかなければならない状態で証人台に立たされていたように思うんだ。公聴会の際に、彼らが認めやすく「これまで君たちがやってきたことに問題があるわけじゃない。すべてを水に流して今後一からやり直そうと思っている。だから、もし薬物を使用していたならば教えてくれないか?」と聞いてきたわけじゃない。裁判所の連中は「君らが残してきた野球の記録、結果などをすべて洗いざらいにして暴いてみせる!無効にしてみせる!」 というようなニュアンスで迫ってきたわけだ。そんな物言いで誰が使用を認めるんだい? あの場では強制的にうそをつかざるをえない状態だったんだ!
 
Q:今年は北京オリンピックが開催されますが、選手能力を高める点に関して、どこまで薬物使用に境界線を引くべきなのでしょうか?
 
(クリス・ベル)目のレーシック手術を考えてほしい。その手術を施すことによって、視力が通常よりも回復するよね? 大した問題じゃないと思うかもしれないが、この手術を野球やゴルフのように目の視力に比重が置かれ、勝敗を左右するようなスポーツの選手がしたとしたら? あくまで神から与えられた体だけで勝負するという前提ならば、この目の手術だって問題があるわけだ。


ステロイドに関する質問は映画の内容に触れすぎてしまう恐れもあるので、割愛させていただいたが、わたしがこの作品を通して学んだことは、どんな薬にも副作用はあり、多用すれば必然的に危険性が伴うこと。それはステロイドにもいえることだった。劇中ではドーピングで1988年のソウル・オリンピックのメダルをはく奪されたベン・ジョンソンやカール・ルイスのインタビューを敢行するなど、興味深いアプローチもある。本作を観る前はステロイドは悪性の薬物というイメージを持っていたが、その先入観が一変したドキュメンタリーであった。
細木信宏 / Nobuhiro Hosoki プロフィール
海外での映画製作を決意する。渡米し、フィルム・スクールに通った後、テレビ東京ニューヨ-ク支社の番組モーニング・サテライトでアシスタントとして働く。しかし夢を追い続ける今は、ニューヨークに住み続け、批評家をしながら映画製作中である。
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