ハリウッドで100本以上もの映画を作りだし、10セントも損をしなかった男であり、ハリウッド映画を語る上で忘れてはならない存在のロジャー・コーマン。1926年に生まれ、ハリウッドに引っ越したことを契機に映画産業に潜り込み、さまざまなジャンルのB級映画を生み出した監督・脚本家・プロデューサーだ。
ロジャーの特徴は流行を敏感に察知し、亜流作品を手当たり次第プロデュースするというところ。さらにそれらが本家をしのぎ、小さなブームを巻き起こすという点。映画『JAWS/ジョーズ』がはやれば映画『ピラニア』など動物パニックものを作り、映画『ジュラシック・パーク』がはやれば映画『恐竜カルノザウルス』などの恐竜ものを連発していくという商売魂を見せる。また若手を見抜く力を備えているのか、単に安い労働力で雇えるからか定かでないが、ジャック・ニコルソン、デニス・ホッパー、ピーター・フォンダ、ジョナサン・デミ監督、フランシス・フォード・コッポラ監督、ジェームズ・キャメロン監督などなど若かりしころのビックネームたちがロジャー・コーマン・プロのもとで修行を積んでいる。
近年ではプロデュースばかりに力を入れているロジャーだが監督時代もタフな精神でさまざまなB級娯楽映画を手掛け、特にエドガー・アラン・ポーの小説をベースとした映画『アッシャー家の惨劇』『赤死病の仮面』は傑作ゴシックホラーと評価され、ロジャーお気に入りの俳優である主演のヴィンセント・プライスはティム・バートン監督らにリスペクトされている。またアメリカン・ニューシネマの金字塔的映画『イージー・ライダー』はロジャーが監督した映画『ワイルド・エンジェル』がヒントになっているというから面白い。その反面、先におどろおどろしいポスターを作って資金を集め、完成した映画はとんでもないシロモノだったというガックリ系作品も数多い。
こういった功績(?)が映画関係者や世界中の映画ファンから愛され、ヴィム・ヴェンダース監督の映画『ことの次第』や映画『羊たちの沈黙』『フィラデルフィア』『アポロ13』『スクリーム3』など話題作へのゲスト出演も経験している。 |