サードシーズン2011年10月
私的映画宣言
9月下旬はアメリカを代表するファンタ系映画祭、Fantastic Festに参戦すべく、テキサスに初上陸! 10月はコミコン取材のため今年4度目のニューヨーク上陸。なかなかエキサイティングな秋です。
●10月公開の私的オススメは、ジェニファー・ローレンス渾身(こんしん)のサバイバル・ドラマ『ウィンターズ・ボーン』(10月29日公開)は必見!
『ミッション:8ミニッツ』ダンカン・ジョーンズ監督に取材。10歳からボウイ・ファンだったわたしの目の前に今、大人の監督となったゾウイくんが! あまりの感動に数日間、ぼう然自失。並行世界ではどうなっていますか!
●10月公開の私的オススメは、『リミットレス』(10月1日公開)。
デビッド・ボウイJr.、ダンカン・ジョーンズ監督に取材。SFへの愛ある姿勢に触
れ、今後の活躍に期待が高まった。
●というわけで、10月公開の私的オススメは、彼の才気があふれた『ミッション:8ミニッツ』(10月28日公開)、そしてもちろん『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(10月7日公開)。
二つ折りのスマートフォン“スマケー”に機種変更。重い、電池弱い、操作性悪い、通じねえ、3Dうぜえなど、特にいい印象ナシ。同じ折衷型でもテレビデオは便利だったなー。
●10月公開の私的オススメは、『ファイナル・デッドブリッジ』(10月1日公開)。
ショーン・ビーン主演のHBOのドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(原題)/ Game of Thrones」の長大な原作「氷と炎の歌」シリーズに熱中。その面白さは「指輪物語」にも似たものが。参考までに第1部(文庫版全5巻)のうち2~3巻読むつもりが、第2部まで一気読み!
●10月公開の私的オススメは、『ウィンターズ・ボーン』(10月29日公開)。
猿の惑星:創世記(ジェネシス)
人間が高度な知能を持つ猿に支配される前代未聞の世界観と、衝撃的なラストシーンで話題となった『猿の惑星』の前日譚(たん)をひもとく話題作。現代のサンフランシスコを舞台に、1匹の猿の突然変異的な進化と自由を求める戦いが人類にとって脅威になっていく様が描かれる。『127時間』のジェームズ・フランコ、『スラムドッグ$ミリオネア』のフリーダ・ピントらが出演。『アバター』のWETAデジタルによる革新的なCGIにも注目だ。
[出演] ジェームズ・フランコ、フリーダ・ピント
[監督] ルパート・ワイアット
脚本が練られたドラマ性の高いエンタメ大作。主人公と父親、主人公と猿のダブル親子ドラマで涙を誘い、かわいい猿が瞬く間に成長、進化を遂げるSFサスペンスはスリリング。バラエティーに富んだユニークなルックスの猿たちによる怒とうのアクションはエキサイティングで燃える。カリスマ性を持つ知的な猿を演じたアンディ・サーキスはオスカー助演男優賞もの! 野蛮で下劣な人間が猿に見え、猿たちに人間性が感じられてくる逆説的展開も面白い。もはや猿にしか見えないジョン・リスゴーはナイス・キャスティングだ!
シーザーに完全感情移入して、ぐいぐい引き込まれた。差別を被った人々が耐えて耐えて、ついに立ち上がるドキュメンタリーであるかのように真剣に見入ってしまい、彼ら(といっても猿!)がついに「No!」の声を上げたときには座席から立ち上がらんばかりに感動した。主役はジェームズ・フランコでなくアンディ・サーキスだろう。元ドラコのトム・フェルトンくんはハリポタ卒業後、好スタート。これからもいじめっ子路線で、食いっぱぐれなし。
動物愛護精神のかけらもない飼育員はもちろん、シーザーに「僕はペットなの?」と問われて言葉に詰まる主人公でさえ頼りなく、人間キャラへの感情移入は難しい。その点、シーザーの頼もしさはどうだ。マルコムXとジェームズ・ボンドとオプティマス・プライムを足したようなカリスマ性。戦略を立て、行動的で、しかも「No!」と言える猿。今年もっともスゴいと思ったヒーローだ。『猿の惑星』の前日譚(たん)というより、シリーズ第4作『猿の惑星・征服』のリメイクだね、これは。
「猿の惑星・ビギンズ」的なコンセプトゆえに、鑑賞前はSF映画史に残る傑作に泥を塗りたくる結果だったらと勝手にヒヤヒヤしていたが、人類が滅亡へと進み、猿が地球の支配者になる逆転劇の過程が無理なく描かれ、前日譚(たん)シリーズの中では出色の出来! まさかの猿目線で人間の感情を揺さぶるなど構成力・演出力は脱帽モノで、決起する猿どもを心から応援したくなる高い完成度に満足至極。ただ一点、オチの雰囲気が何となく最初から予想がつくためか、1968年の『猿の惑星』ほどの衝撃度を期待するとちょい肩透かしをくらうかも。
アニマルプラネットかと見まごうばかりのチンパンジーほか、さまざまな種類の猿の生態描写に、大いに楽しませてもらった。何か最近の世の中を考えると、地球にとってもエコだし人間は猿に習って生きた方がいいんじゃないかと思えてくる。トホホ。ジェームズ・フランコは影が薄いが、あくまでも猿が主役! と思えばこれも致し方なしか。旧作を知らない観客が、どう受け取ったのかが知りたい。
一命
人間の義と誇りを命懸けで訴えるハードコアな武士と、彼が守ろうとした家族の物語。ネタバレになるので多くは語れないが、本作で訴えようとしたメッセージを支える登場人物の背景とドラマは脆弱(ぜいじゃく)過ぎて説得力に欠ける。荘厳で重厚な空気を尊重し、意図的に説明を避けシンプルな構成にしたのだろうが、そのせいで突っ込みどころが多いのだ。ただ、切腹シーンの描写は三池監督らしくねちっこくて痛々しい。3D効果は希薄なので2Dで十分かと。
歌舞伎を観ないので知らなかったが、こりゃ「海老蔵、海老蔵」ってなるわ。すごい存在感だ。若い時代から孫のいる老人までを演じ、しかも婿(むこ)は瑛太。さらに竹光で侍80人相手に立ち回り。本来なら「ない、ない」とツッコミ入れてしかるべきところだが、そう思わせない迫力。瑛太も激やせして役に入り込んでいるものの、海老蔵の前ではベテラン役所広司さえ希薄に感じる。観ている側も最後の一瞬まで力が抜けない。すごいものを観たという印象。
地位に寄り掛かってメンツを守るだけの武士社会を通して何を現代に訴えるのか、それを考えさせるだけで、十分に力作になっている。自分は2Dで観たけど、映像にも力があるので、雪が舞うシーンをはじめとする日本的な情緒も3Dならよりディープに味わえるかもしれない。ほかの役者と温度差がある海老蔵の芝居は好き嫌いがあるかもしれないけど、個人的には◎。謎めいた強烈なキャラクターだから、これぐらいの濃さがあっていい。
海老蔵、瑛太、満島ひかりの新婚系の3人組が貧困から不幸のドン底に堕(お)ちてしまう時代劇で、超重い、暗い、かなしいと負の三拍子がそろった問題作。ズッシリと内臓に圧が加わるようなシリアスな宿命を武士の理屈で描く意味はわかるけど、「それしか選択肢がなかった」という当時の社会的な事情を背景とした物語上の理由が説得力があるかといえば、微妙な感が……。海老蔵が『アジョシ』のウォンビンみたいに殺しのシンフォニーを奏でることを期待していたので、個人的なカタルシスもなかった上に、切腹のシーンが異様に長いので、流血や内臓を裂く音が苦手な人にはススメたくない。ただ、全体的に色調が暗めなのに3D処理で観にくいことはない点はステキです。
三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船

(C) 2011 Constantin Film Produktion GmbH, NEF Productions, S.A.S., and New Legacy Film Ltd. All rights reserved.
幾度も映像化や舞台化がされているアレクサンドル・デュマの冒険活劇「三銃士」を、『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督が映画化したアクション・エンターテインメント。無鉄砲な主人公を『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のローガン・ラーマンが演じるほか、行く手を阻むバッキンガム公爵を初の悪役となるオーランド・ブルーム、謎の美女ミレディをミラ・ジョヴォヴィッチがなまめかしく好演。8台の3Dカメラを駆使して撮り上げた驚異の映像美でよみがえる「三銃士」の世界に酔いしれたい。
[出演] ローガン・ラーマン、オーランド・ブルーム
[監督] ポール・W・S・アンダーソン
SF、アクション、ホラーとオタク監督一直線だったポール・W・S・アンダーソンが、何と古典的な冒険活劇にチャレンジ! 監督の嫁、ジョヴォヴィッチの華麗アクションが妙に目立つ前半に関しては、思わず自分が何の映画を観ているのか忘れそうになったが、後半の飛行船バトルのシーンではむちゃな過激アクションがさく裂。そのサービス精神に感心した。ストーリーはともかく、万人向けの娯楽大作としては及第点。役者は男優陣がパッとしないものの、女優陣の奮闘ぶりが顕著。
タイトルだけ見て、敬遠されたらもったいない。「ルパン三世」実写版だと思って観に行きたい。何も考えずに楽しめるエンターテインメント。監督の頭の中は完全にマンガ(アニメ)。それを具現化してしまうところがすご過ぎる。欲をいえば、オーランドくんが衣装こそ着こなしているものの、悪役らしい色気もなくイマイチ。周りが名役者ぞろいだけに演技の頼りなさが目立つ。またミラは最高に美しいがほかの女優が全然、かわいくない。何か差し金?
アクロバティックに動き回り、不死身っぷりを見せつけるミラ・ジョヴォヴィッチを見ると、どうしても『バイオハザード』を連想してしまう。異論はあるだろうが、コレはコレでアリ。ドラマを端折り過ぎる点を含め、コミック&ビデオゲーム的な解釈で古典を映画化するところに、ポール・W・S・アンダーソン監督らしさを感じる。天井が高くて奥行きがある宮殿内の壮麗さを伝える上で、3D映像が有効であることはうれしい驚きだった。
フランス最強の三銃士の活躍や王室を揺るがす巨大な陰謀劇など、そもそも個人的にまったく興味がない題材な上に、時折入るマンガのキャラクター的な演出効果で作品との距離が余計に開いてしまい、終始乗れず……。ただ、さすがポール・W・S・アンダーソン監督だけに、レオナルド・ダ・ヴィンチ原案という飛行船の設計図を実際に完成させた巨大な空飛ぶ船同士のバトルは迫力満点で、まさしく伝説というよりハデ! (監督とミラの)夫婦映画にしては成功している方だと思うけど、とにかくオーリーは時代モノの悪役やヒゲが全然似合ってないと思う。
三銃士+ダルタニアンの冒険活劇かと思いきや、主役は峰不二子ばりのお色気女スパイ、ミレディことミラ・ジョヴォヴィッチだった。ポール・W・S・アンダーソンによる妻ミラのための映画なので、ミラで萌えることができる人は必見だろう。個人的には三銃士+クリストフ・ヴァルツ、マッツ・ミケルセンら実力派の活躍をもっと見たかった。ミラ&オーリーの存在感の軽さやストーリーテリングのつたなさも目立つが、細部は気にせずライトにアクション大作を楽しみたい人にお薦め。








