続いて園監督が放ったのは、埼玉の愛犬家連続殺人事件や監督自身が被害に遭った詐欺事件などをベースに生まれた映画『冷たい熱帯魚』。
本作は、家庭不和を抱えつつ、小さな熱帯魚店を営む主人公(吹越満)が、ある日、人当たりが良く面倒見のいい同業者の村田(でんでん)と知り合うことで、やがて猟奇殺人事件に巻き込まれていく様子を描いたエロスとバイオレンスが満載な、R18+指定のブラック・エンターテインメントだ。
『愛のむきだし』では、フレッシュな顔ぶれが目立ったが、今回はオヤジ映画を作りたかったという園監督のキャスティングに。「有名俳優をキャスティングする状況だと、面白い俳優が育たないと思うんですよね。いい俳優なら、これまで脇役をやられていた方でも使うべきだというポリシーがあるんですよね」とインタビューで力強く語っていた園監督。そこで選ばれたのが、主人公を演じた吹越満、そして猟奇殺人事件の主犯のでんでんといった日本映画の屋台骨を支えるいぶし銀俳優たちだ。
主人公の社本を演じた吹越は、夫や父親としての威厳もなく、でんでん演じる村田の口車に乗り、次第に殺人事件に巻き込まれてしまうという気弱な中年男役。しかし人間の狂気を目の当たりにして、次第に彼も狂気の渦にのまれていくさまを演じ切ったのは、さすが名脇役。対するでんでんも映画『ダークナイト』のジョーカーもびっくりの悪魔のようなキャラクターを演じ、神楽坂恵ふんする若妻を張り倒したり、邪魔になった人物をバラバラに解体して殺害……。しかもそれをあの七福神のような笑顔でやるのだから、震撼(しんかん)させられる。彼ら以外にこの役を演じられる人がいるのか? そう感じさせてしまうような役者の演技が引き立つ、まさに園監督の狙い通りともいえる作品に仕上がっている。
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数々の賞を受賞した衝撃作『冷たい熱帯魚』
ブルーレイ(税込み:5,985円)&DVD(税込み:4,935円)は発売中(発売元:日活株式会社、販売元:株式会社ハピネット)
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