間違いなしの神配信映画『Love, サイモン 17歳の告白』FOXデジタル配信
神配信映画
ラブロマンス編 連載第4回（全7回）
ここ最近ネット配信映画に名作が増えてきた。NetflixやAmazonなどのオリジナルを含め、劇場未公開映画でネット視聴できるハズレなしの鉄板映画を紹介する。今回はラブロマンス編として、全7作品、毎日1作品のレビューをお送りする。
高校生の切実な恋への思いに引き込まれる
『Love, サイモン 17歳の告白』FOXデジタル配信
上映時間：110分
監督：グレッグ・バーランティ
キャスト：ニック・ロビンソン、ジェニファー・ガーナー、ジョシュ・デュアメル、キャサリン・ラングフォード、アレクサンドラ・シップ
今も昔も青春映画は作られ続け、名作と呼ばれるものを何本観ていたとしても、ある種の青春映画は強い力で人を惹きつける。『Love, サイモン 17歳の告白』は、まさにそんな1本。この過剰なまでの吸引力の正体って一体なんだろう？
主人公は卒業を控えた高校生のサイモン（ニック・ロビンソン）。父親のジャックはハンサムすぎる元クォーターバックで、卒業生代表だった美人のエミリーと結婚。料理番組を観てシェフになる夢を抱いた妹の手料理を笑いながらみんなでするような、愉快で健全な家族の一員（ジャック役は『トランスフォーマー』のかつて甘いマスクで人気を博したジョシュ・デュアメルだし、エミリー役ははつらつとしたジェニファー・ガーナーだし！）。まずはサイモンの超ノーマルな日常が描かれる。
青春ってどんなんだったかのぉ……と遠い目をする人間には、このハイスクールの描写にもうトキメいてしまう。パパから借りたと思われるさえない車を自分で運転し、あちこち友達を拾いながら、コーヒーショップでアイスコーヒーを買ったりして登校。学校ではスマホ禁止！ にも関わらず多くの学生が小さい画面とニラめっこするのはイマドキだが、イチャつくカップルがいて、バカをやってる友達がいて、ヘンテコなヤツもいてなんだかな～みたいな。サイモンもそんな日々を送る高校生で、それを観て、なんかい～な～などと思う。でもサイモンには誰にも言えないデッカイ秘密がある……。そこから、この物語の本筋が進行していく。
つまりサイモンはゲイなのだが、現代においてそれは大した問題ではないのでは？ と考える人もいるかもしれない。でもそれが17歳の高校生となると話は別というもの。観客は彼が抱える秘密を知ると、なるほどそうなのか……と腑に落ちる。サイモン役のニック・ロビンソンの演技は、それほどにナチュラルで魅力的だ。
サイモンはある日、同じ高校に同性愛者であることをカミングアウトしていないクローゼットゲイがいるのを知る。ネット上で“ブルー”と名乗るその人物と、自分も“ジャック”という名前で連絡を取り、メールのやり取りをするように。ところがそのメールをちょっと変わり者の同級生マーティンに読まれてしまい、黙っている代わりにサイモンの友達であるアビーとの仲を取り持つ約束をさせられる。
こうなると、もう超王道。秘密を知られた主人公が、恋の後押しを強制されてドタバタに至るという展開は青春映画の型の一つともいえるだろうが、ニック・ロビンソンのたたずまいや、散りばめられたギャグがツボをついていることや、高校生だからこその恋への切実な思いが丁寧だったりして、あっという間に物語にのめり込んでしまう。それで、ブルーの正体は？ という謎に引き込まれて集中は最後まで途切れない。
青春とかいう日々は誰もが必ず通る道。だからこそそれがどれだけバ〇な時代で、無駄なことばっかりやるほどエネルギーに満ちていて、暇で仕方なくて、友達への思いに生真面目で、恋という感情に無防備だったことを誰もが知っている。それが青春映画というやつの吸引力なのかも、この映画を観て改めて思った。（浅見祥子）
