傑作なのに不遇な扱いを受け続けた『ヒックとドラゴン』完結編で翔べるか

空を飛ぶのは誰もが夢見ることだ。空を自由に飛びたいなと「ドラえもん」でも言っていた。『ヒックとドラゴン』シリーズ(2010年~)は、そんな誰もが思う夢を最高の形で描くシリーズだ。これを観れば飛んだも同然。もしも時空が歪んで本作がもっと早く公開されていたならば、某俳優もマンションから飛ぶ必要はなかっただろう。それくらいの傑作なのだが、いかんせん本作は日本国内で不遇な扱いを受けている。(加藤よしき)

なぜ不遇すぎる扱い…完結編までスター・ウォーズと公開日カブる

ヒックとドラゴン 聖地への冒険 ポスター
よりによってスター・ウォーズ完結編と公開日がブッキングの完結編『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』 Universal Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 不遇ーー高いポテンシャルを秘めながら、見合った評価を得られていない。『ヒックとドラゴン』の日本での扱いは、まさに不遇と言っていいだろう。アメリカでは興行的に成功し、賞レースでも大活躍。実際にゴールデングローブ賞も受賞した。しかし日本では(そのゴールデングローブ賞をとった)『ヒックとドラゴン2』(2014年)はイベントでの上映に留まり、実質DVDスルーに近い形で公開された。シリーズ完結編『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』(2019年)は、アメリカ公開から10か月もの間隔があいた上に、冬映画の超目玉『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)と公開日が被る不幸に見舞われ……気の毒である。もちろん映画配給会社だって商売だ。諸々の事情があるだろうが、それにしたって本作の日本での扱いは不遇すぎる。完成度は確かなのだから、世が世ならテレビで地上波ヘビーローテーション、劇場公開時にはとりあえず観に行くテッパン映画として扱われていたはずだ。なのにーーと、嘆いても仕方がない。最新作『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』は、まだ公開中だ。『ヒックとドラゴン』が不遇をはねのけられるように、強い念を込めて紹介記事を書いていきたい。

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シリーズを通して貫かれるドラゴンとの距離感とドライな視線

ヒックとドラゴン
誇り高きドラゴンと友達になれるのだろうか?『ヒックとドラゴン』 Twentieth Century Fox Film Corporation/Photofest / ゲッティ イメージズ

 まずはそもそも『ヒックとドラゴン』ってどんな話? というところから。このシリーズのストーリーは原題通り、すなわち「How to Train Your Dragon」=「ドラゴンのしつけ方」である。1作目はヴァイキングの少年ヒックが真っ黒なドラゴン“トゥース”と友情を築くうち、やがてドラゴンと人間の敵対関係を解消する物語だ。至極シンプルな話だが、これが非常に良く出来ている。最大の魅力は最初に書いた通り、ドラゴンと一緒に空を飛ぶシーンだ。果てしなく広がる大空をドラゴンの背に乗って超高速でビュンビュン飛び回る、これはどんなふうに文字にしても伝わらない魅力だろう。この爽快な飛行シーンもさることながら、本作は全編を通して非常に巧い演出が堪能できる。ほとんど台詞なしで描き切るヒックとトゥースのファースト・コンタクトは真骨頂だ。

『ヒックとドラゴン』
『ヒックとドラゴン』より Twentieth Century Fox Film Corporation/Photofest / ゲッティ イメージズ

またドラゴンや人命へのスタンスも特筆に値する。登場する人間はヴァイキングであり、漫画「ヴィンランド・サガ」よろしく「死」が日常茶飯事。実際、手足が欠損した鍛冶職人なども出てくるが、しかしそこに悲壮感はなく、皆が明るく前向きに生きている。たくましく生きるヴァイキングたちは非常に魅力的だ。そしてドラゴンの描き方も秀逸。登場するドラゴンは基本的には可愛いビジュアルをしているが、知能が高い「動物」として描かれている。あくまで人間とは違う存在であり、決して人間の思い通りになる存在ではない。これはヒックの相棒となるトゥースも同様だ。ヒックとの間には強い友情が芽生えるし、時には人間のようにおどけてみせるが、ドラゴンとしての一線は決して超えない。いわば人を食って炎を吐くネコ、と言ったところか。こうしたヴァイキングたちの生き様や、ドラゴンとの距離感など、本作には一貫して「どうにもならんものは、どうにもならん」というドライな視線がある。こうしたスタンスから導き出された映画史上に残るホロ苦くも爽快感に満ちたエンディングは必見だ。空を飛ぶという誰もが思う願望を完璧に映像化し、ホロ苦くも爽快なストーリーで見せる……『ヒックとドラゴン』はそういうシリーズだ。

『ヒックとドラゴン』
『ヒックとドラゴン』の絵コンテ Twentieth Century Fox Film Corporation/Photofest / ゲッティ イメージズ
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果たして人間とドラゴンはどう付き合うのか?

ヒックとドラゴン2
ゴールデン・グローブ賞を受賞しながらも日本で未公開となった『ヒックとドラゴン2』Photofest /Paramount Pictures / ゲッティ イメージズ

 こうしたシリーズの魅力は、そのまま『ヒックとドラゴン2』へ、そして現在公開中の『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』にも受け継がれている。『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』で描かれるのは、ヴァイキングの長となったヒックの葛藤だ。故郷の村をドラゴンと共生する社会へ変えたヒックだが、そのせいで村がドラゴンを狩る者たちの標的になってしまう。「ドラゴンと人間はどう付き合っていくべきなのか?」ヒックは難題に挑み、再びホロ苦くも爽快な結論に達する。もちろん空を飛ぶシーンもふんだんに盛り込まれていて、シリーズ完結編に相応しい完成度だ(最初の『ヒックとドラゴン』から見ておくに越したことはないが、完結編の『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』から見ても大丈夫だろう。冒頭にこれまでのおさらない映像も流れるし)。何よりこのシリーズの十八番である飛行シーンだけでも劇場の大画面で味わってほしい。そうすれば同シリーズが好きか嫌いかハッキリするだろう。『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』の日本版ポスターには「会えばきっと好きになる」とあるが、その通りだ。

ヒックとドラゴン2
『ヒックとドラゴン2』より 空を飛ぶシーンは劇場で観てこその醍醐味(だいごみ)Photofest /Paramount Pictures / ゲッティ イメージズ

 お正月休みで暇だから、何か手ごろな映画を観たいと思っている方には、是非『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』を観に行ってほしい。そのまま『ヒックとドラゴン2』『ヒックとドラゴン』と遡ってゆき、三が日を使い切るのもありだろう。空への憧れを持つ全ての人に、心からオススメしたいシリーズだ。

『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』より~未公開だった『ヒックとドラゴン2』から完結編となる『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』はまさかの劇場公開! Twentieth Century Fox Film Corporation/Photofest / ゲッティ イメージズ
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