棋士の生きざまにシビれる!将棋映画5選

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 プロの将棋棋士とコンピュータの対局を描く映画『AWAKE』が12月25日に公開を控えている。藤井聡太二冠の活躍などで棋界に熱い視線が注がれ、将棋ブームが巻き起こっているが、将棋を題材にした映画にはどのような作品があるのだろうか? 棋士たちの生きざまを描いた将棋映画5本を紹介する。(編集部・吉田唯)

天才棋士・村山聖の苛烈な将棋人生『聖の青春』

聖の青春
『聖の青春』価格 Blu-ray¥4,700+税 発売元・販売元 株式会社KADOKAWA

 将棋に詳しくない人でも、羽生善治九段の名前を聞いたことがある人は多いだろう。その天才・羽生九段と「東の羽生、西の村山」と並び称されながら、難病のため29歳という若さでこの世を去った村山聖九段の壮絶な人生を描いたのが『聖の青春』(2016)だ。原作である大崎善生のノンフィクションは、将棋ファンの間でもバイブル的な一冊として愛されている。

 村山を演じた松山ケンイチは、過酷な増量で外見を近づけつつ、幼少期から難病を患っていた村山が病や死とどのように向き合ってきたのかという内面の役づくりにも励んだ。松山ふんする村山が、文字通り自らの命を削って盤面に向かう姿からは、彼の将棋に対する執念を垣間見ることができるだろう。

 松山は「ヒロインが羽生善治さんという硬派な作品です」とコメントしていたが、東出昌大ふんする羽生をはじめとするライバルたちとの友情や、リリー・フランキー演じる森信雄師匠との温かな師弟愛にも胸が熱くなる。ちなみに、東出は羽生本人から譲りうけた1996年のタイトル七冠達成時のメガネを劇中でかけている。そのメガネ姿で、羽生のクセまで完璧に再現してみせるシーンも将棋ファンなら見逃せない。

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個性豊かな棋士たちが盤上を躍動『3月のライオン』

3月のライオン
「3月のライオン[前編] 通常版」DVD発売中 ¥3,800+税 発売元:アスミック・エース 販売元:東宝 (C)2017「映画3月のライオン」製作委員会

 2017年に前後編の2部作で公開された『3月のライオン』は、言わずと知れた羽海野チカの大ヒット漫画を『るろうに剣心』シリーズなどの大友啓史監督が実写化した作品だ。主人公のプロ棋士・桐山零は、原作ファンからキャスティングを熱望された神木隆之介が演じ、原作との驚異のシンクロ率が話題を呼んだ。

 交通事故で家族を亡くし、生きていくために将棋を選び取った零は、さまざまな人との出会いを通して、棋士として、そして一人の人間として将棋と人生に向き合っていく。等身大の高校生感もありながら、零からは勝負の世界で生きる人間の厳しさも垣間見える。そんな彼が盤上でぶつかり合うのもまた、その過酷な世界で生きる人間たちだ。対局シーンでのキャスト陣の表情からは、張り詰めた緊張感が伝わってくる。

 零を取り巻く多くの棋士たちも、個性豊かで魅力的だ。零のライバルかつ“心友”として熱い友情シーンを繰り広げる二海堂晴信(染谷将太)、迷走する零を前に対局でその目を覚まさせる島田開(佐々木蔵之介)、零の前に大きな壁として立ちはだかる後藤正宗(伊藤英明)、“天才”として圧倒的な存在感で棋界に君臨する宗谷冬司(加瀬亮)。それぞれの事情を背負いながらも、盤上ではそうした事情や年齢など関係なしにただただ等しく最善の一手を目指して進んでいく彼らの姿は美しくさえもある。

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“負け”から再起したプロ棋士の実話『泣き虫しょったんの奇跡』

泣き虫しょったんの奇跡
「泣き虫しょったんの奇跡」原作:瀬川晶司「泣き虫しょったんの奇跡」(講談社文庫刊)Blu-ray&DVD発売中 発売元:バップ (C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 (C)瀬川晶司/講談社

 通常、プロ棋士になるためには「奨励会」と呼ばれる養成機関に属し、そこで半年に1回行われる三段リーグ戦で上位2名に入らなければならない。つまり、年にたった4人しかプロになることはできないのだ。しかし、この4人という数字には例外がある。それは棋士編入試験で合格者が出た場合。この棋士編入試験制度ができるきっかけとなったのが、『泣き虫しょったんの奇跡』(2018)の主人公のモデルで、史上初めて奨励会を退会してからプロに編入した瀬川晶司六段だ。

 入るだけでも非常に難しい奨励会だが、そこには年齢制限という厳しいタイムリミットまで存在する。その年齢制限に涙を呑むことになったのが、本作の主人公・瀬川晶司(松田龍平)だ。奨励会を退会した後、瀬川は将棋とは距離をおいてサラリーマンとして働くことになるのだが、ある日改めて将棋の面白さを痛感したことが転機になり、ついには特例的にプロ編入試験に挑むことになる。

 これは“負け”と向き合う人間のドラマでもある。劇中、瀬川は町の将棋道場の席主から「負けた時は『負けました』って頭さげるんだよ」と幼い頃に教わる。将棋は自ら投了の意思を示して負けを認めなければならないのだ。自身も9歳から17歳まで奨励会員だった豊田利晃監督は、「負けました」と口にする瀬川の顔をじっくり映していく。この負けに向き合う瞬間が何度も何度も刻まれているからこそ、負けの先で“挑戦者”として再び立ち上がる瀬川の棋力だけではない強さに胸が震えてしまうのだ。

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AI将棋の道を選んだ男の物語『AWAKE』

AWAKE
(C)2019『AWAKE』フィルムパートナーズ

 現在、プロとして活躍する棋士の人数は200人に満たない。その背後には、プロの夢を断念した数多くの奨励会員たちがいる。映画『AWAKE』の主人公・英一もまた、将棋の道を諦めた奨励会員のうちの一人。盤面の代わりにPCのモニターに向かうようになった英一は、 AI将棋プログラム“AWAKE”の開発者として再び将棋と向き合っていく。

 2015年の将棋電王戦FINAL第5局、阿久津主税八段 VS AWAKE 戦に着想を得た本作。コンピュータ将棋に出会ったことで新たな夢を見つけた英一を演じるのは、大河ドラマ「青天を衝け」で主演を務めることも決定している吉沢亮だ。猫背の姿勢や、何かに夢中になるとカッと眼を見開くクセなども独自に考案し、細かな部分に至るまで英一になりきっている。

 映画後半で英一は、かつてのライバルでプロ棋士の浅川陸(若葉竜也)と電王戦で対決することになる。この日のために、浅川はひたすらPCに向かってAI将棋の研究をするのだが、その背中からはプロ棋士がコンピュータに負けるわけにはいかないという、彼の置かれた厳しくて孤独な状況が伝わってくる。挫折から新たな道で再起した英一と、プロとして将棋界の荒波を経験してきた浅川。二人が、盤面を挟んでプライドの火花を散らす物語は、まるでスポ根少年漫画のような熱さだ。

 また、人工知能研究会の風変わり(?)な仲間・磯野(落合モトキ)とともに開発に打ち込む姿は、英一の新たな青春の始まりを感じさせ、挫折の後に続いていく人生にも希望があることを優しく肯定してくれる。

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伝説の棋士・坂田三吉の将棋への愛『王将』

将棋
※画像はイメージ - iStock / Getty Images

 将棋映画として歴史のある部類に属するのが、1948年に公開された伊藤大輔監督の『王将』だ。北条秀司が手がけた戯曲の映画化作品で、明治から昭和にかけて活躍した大阪の伝説的棋士・坂田三吉の人生を映し出している(ちなみにこの戯曲は何度も映画化されているが、本作は映画化第1号にあたる)。

 物語は、狭い長屋暮らしで読み書きもできない坂田が将棋で上り詰めていく姿を描くヒューマンドラマ。実際の坂田とは異なる部分があることや、フィクションの色合いが強い部分もある点は頭に入れておかなければならないが、周囲があきれてしまうほど将棋に一途な坂田の姿は、将棋好きなら愛さずにはいられない。そんな坂田の人間味あふれる魅力が、往年の映画スター“バンツマ”こと阪東妻三郎の名演によって輝く一本だ。

 苦楽を共にしながら献身的に夫を支える妻・小春との愛情は涙をそそるし、関根八段との敵意とも友情ともつかぬライバル関係には痺れるものがある。窮地のなか苦し紛れで打った「銀」で勝利を手にするも、そのことを娘に見抜かれて恥じ入るシーンは、棋士として身を立てる者の生きざまが凝縮された名場面であると同時に、鏡をポイントとして利用したカメラワークも秀逸で何度観ても味わい深い。

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