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映画たて・よこ・ななめ見!

自分の幸せだけが関心領域でいいのか?

映画たて・よこ・ななめ見!

 ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、第2次世界大戦下のアウシュビッツ強制収容所の隣で幸せに暮らす、ルドルフ・ヘス所長とその家族の姿を通して、壁一枚隔て存在する収容所の残酷な一面を描いた作品『関心領域』。ウーマンの2人が感じた、人間の「痛み」とは?(取材・文:森田真帆)

今回の映画は『関心領域』です。

 第2次世界大戦下のアウシュビッツ強制収容所所長とその家族を描いたマーティン・エイミスの小説を原案にした歴史ドラマ。収容所の隣で穏やかに暮らすルドルフ・ヘス所長一家の姿を通して、それとは正反対の収容所の残酷な一面を浮かび上がらせる。監督は『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』などのジョナサン・グレイザー。出演は『ヒトラー暗殺、13分の誤算』などのクリスティアン・フリーデルや『落下の解剖学』などのザンドラ・ヒュラーなど。

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異様な世界と現代のリンクに恐怖

関心領域

中川パラダイス(以下、中川):面白かった!

村本大輔(以下、村本):すごい映画やったけど、もう途中めっちゃつらかったで。面白いって、おまえサイコパスなんか?

中川:いやそういう意味じゃなくて、ストーリーとか演出が面白かったってこと。内容はめっちゃ怖かった。僕は、この時代のこととか全然わからんから、最初は正直、全然意味わからずに観ててん。途中からふと異様さに気づいて、そこからは一瞬で終わったわ。この映画のこと特に調べずに観たから、人より遅く隣に収容所があることに気がついた。

村本:ほんまに怖い映画やった、ほんまに。ちょうど今オレがニューヨークにいるでしょ? ニューヨークでパレスチナとイスラエルのデモがあったのよ。ガザを守れっていうね。大学でもデモで卒業式が封鎖になったり、道路も通行止めになったりしてすごいんよ。

中川:へぇ、ニューヨークもそういうのあるねんな。

村本:でもそれでさ、オレが知り合った日本人の人が、デモのせいで道路が封鎖されたってめっちゃ怒ってて、その言葉とこの映画がめっちゃリンクしたんよ。アウシュビッツの所長の家族は、自分の豊かな生活が大事でさ、隣で人が死のうが、殺されようが、私の世界のことが大事やねんっていう感覚ってほんまに関心領域の世界やなって実感した。ほんまにすごい作品やったわ。

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幸せな世界の中に突如聞こえてくる“音”

関心領域

中川:なんかこの映画って、音がめっちゃ大事やったよな。僕が異変に気づいたのは音やったからさ。幸せな日常の中で聞こえてくる音がほんまに怖くて、映画観ている間中、音にめっちゃ敏感になったわ。突然銃声が聞こえてきたり、人を叩く音や悲鳴が聞こえてきたりとか、幸せと不幸せとの間に境界線があって、幸せのなかに不幸せな声が聞こえてきて、そのギャップが怖いというか。

村本:せやねん。日常的な豊かな生活の中に、突然悲鳴が聞こえてくると、めっちゃ不安な気持ちになったな。でもさ、そんなふうに悲鳴が聞こえてくる日常が、子供たちにとってもは普通っていうがめっちゃ怖いよな。

中川:映画が始まってすぐに画面が暗くなって、暗転時間がめっちゃ長いやんって思ったんやけど、そこから映画が始まったことで耳の感覚が研ぎ澄まされたというか。隣の人が殺される声がめっちゃ聞こえてくるようになって、日常と隣の状況との違いがほんまに怖くなってん。

無関心が普通な世界に生きている

関心領域

村本:オレがめっちゃ怖いのはさ、人がいっぱい死んでるアウシュビッツの収容所の所長一家が、めちゃくちゃ異常に見えるやん。あの人たちこそオレたちと同じ側の、自分たちだけが幸せならいい人たちなんやねんな

中川:煙突から黒い煙が上がっていると、ちょっと先には人が焼かれて、いかに人を効率よく殺せるかとかを考えている人がいてさ。なんかその世界は異常に見えるけど、たしかに村本のいう通り、僕自身こうして隣で起きていることに対して気が付かないふりをしているだけなんやなって思ったわ。

村本:今の世界を俯瞰で見たら、どこかで戦争が起きてて子供がめっちゃ殺されているのに、それを見ないふりしていることってめっちゃ多いやん。オレたちが友達と楽しく飲んだり、遊んだりしているときだって人は殺されているのに、自分の目の前の世界だけが関心領域で、それ以外は無関心なのは変わらんねん

中川:自分の中の関心領域を考えさせられたわ。

村本:この映画がちゃんとヒットしてほしい。見ないふりする人たちこそ見て、自分自身と重ねて観てほしいね

中川:でもアメリカは卒業式なくなったり、道路封鎖されるデモがあったりするのはすごいな。

村本:でもフリーガザとフリーニップレスっていうデモが同時に起こってて、私たちの乳首を自由に! ってみんな上半身裸で歩いててさ。ニューヨークもすごい世界やわ。

※記事内容には個人の意見が含まれています。

『関心領域』5月24日公開
(C) Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

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ウーマンラッシュアワー・プロフィール

2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。

村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。

村本大輔X(旧Twitter)

中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。

中川パラダイスX(旧Twitter)

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