シネマトゥデイ

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清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家・クリエイティブディレクター●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書に「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞、ギャラクシー賞、民放連最優秀賞 受賞

近況: ●円谷プロ「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「シド・ミード展」未来会議ブレーン、図録寄稿●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」

サイト: http://eiga.com/extra/shimizu/

清水 節 さんの映画短評

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  • パラサイト 半地下の家族
    ジャンル横断・空間タテ移動・嗅覚表現で格差を暴く傑作エンタメ
    ★★★★★

    富める者と持たざる者が距離を縮めれば何が起きるのか。寄生しているのはどちらか。Wi-Fi無断借用で困窮ぶりを立ちどころに示す冒頭は、2020年前後の格差表現として映画史に刻まれる。対照的な家族を演じる俳優陣の可笑しくも切ない名演が見事。引き裂かれた社会の実相を暴きながらシリアスへ傾きすぎず、コメディからホラーまで多様なジャンルを横断し、高低差著しい空間の上下移動を存分に活かして、4DXでも不可能な臭いまで感じさせる。映画的快楽を詰め込んだエンタメの傑作だ。クライマックス後の余韻が素晴らしい。堕ちる恐怖を抱きながら上昇する計画を夢想し続ける永遠の希望と空しさ。ポン・ジュノの才気に酔いしれた。

  • この世界の(さらにいくつもの)片隅に
    アニメの可能性を発展させる、内面描写の深化とフィジカルの実存
    ★★★★★

    時代と人間への洞察力に驚嘆する。2016年の前作が、戦時下を健気に生きた女性を見つめる映画だとすれば、今作は、取り巻く人間関係から彼女の葛藤や苦悩を抉り出す映画へと深化した。かといって、登場人物の思考が全て暴かれるのではなく、多面的な解釈を促してもいる。追加された38分によって、既存のカットの意味さえも変容させる演出には舌を巻く。こんなにも、ヒロインの身体性を実感させるアニメ映画はあっただろうか。無垢で天然に思えた前作を覆すほどに、意識の奥底の情念が露わになった。現実の苦さをも描く片渕須直が、高畑勲の精神をより発展させるアニメーション作家として、さらに一歩前進したことは間違いない。

  • ひとよ
    愛憎相半ばする佐藤健の眼差しが血縁にもう一度可能性を抱かせる
    ★★★★★

    母は父を車で圧殺した。ぶつかり合いを超え、度を過ぎた家族の衝突のメタファーだ。子供たちのためを思い、正しさを信じた過激な行為。揺るぎない母の信念/情念を田中裕子が見事に体現する。それから15年、十字架を背負った兄妹3人が、それぞれの個性を露わにし、容赦なくぶつかり合う。苦悩する鈴木亮平。奔放な松岡茉優。屈折しながらも愛を希求する佐藤健の眼差しがいい。このところ「擬似家族」に真の繋がりを求める物語に親和性を抱いてきた私たちに、血縁から逃避せず、ガチで向き合うことの可能性を痛感させる。白石和彌監督の新境地だ。

  • ジョーカー
    真の善意の体現者を描き本作に拮抗しうるヒーロー映画を待望する
    ★★★★★

    共感と嫌悪が入り混じるが、紛れもなく21世紀初頭の世界を象徴する傑作だ。不寛容な社会で醸成される悲哀と絶望。愛など枯れ果てジョーカーが生まれるべくして生まれる様が、説得性を持ちつつ丹念に描かれる。バットマンとジョーカーが表裏の存在であることへの示唆は興味深い。ふと、敗戦直後の混沌を背景に、刑事と犯人に分かれた運命に言及する黒澤明の『野良犬』の台詞「世の中のせいにして悪い事をする奴はもっと悪い」を想起した。モラルで均衡を保つ状況を遥かに超える荒みきった今。真の善意を体現する者を描くことこそ、本作と現代社会へのアンサーだ。映画人は『ジョーカー』に拮抗しうるヒーロー映画を生み出さなければならない。

  • ドッグマン
    ミニマムな関係を通して描く暴力にまみれた世界の暗喩
    ★★★★

    先読み不能な展開。主人公の行動に理念らしきものは無い。仕事であるゆえ犬を愛でている。娘を想う心情も描かれる。しかし感情移入など出来ない。粗暴な厄介者に従属し、不毛な関係を断ち切れない。舞台はイタリアの殺伐とした海辺の街。ろくでなしの弱者である主人公と、力でねじ伏せる無法者とのバランスの変容が見ものだ。『ゴモラ』で裏社会を活写したマッテオ・ガローネ監督が、ミニマムな人間関係を用意して、支配する者と支配される者の愛憎相半ばする共依存の哀れな末路を、容赦なく見せる。もちろん、暴力にまみれた世界の暗喩でもある。私たちが生きる社会を一皮剥けば、露わになる普遍的な真理を直視したい。

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