シネマトゥデイ

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清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家・クリエイティブディレクター●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX、ニッポン放送●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書に「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞、ギャラクシー賞、民放連最優秀賞 受賞

近況: ●「ULTRAMAN ARCHIVES」企画構成取材●「シド・ミード展」未来会議ブレーン●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」

サイト: http://eiga.com/extra/shimizu/

清水 節 さんの映画短評

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  • アリー/スター誕生
    圧巻の歌声はもとより「クーパー監督」というスター誕生こそ収穫
    ★★★★★

     この物語がハリウッドで繰り返し映画化されるのはなぜか。一世を風靡しながらも転落していくアーティストと、無名の存在から見出されスターへの階段を上昇していく新たな才能の人生の交差。それはショウビズ界が、変わらないために変わり続ける不変の法則だ。圧巻の歌声はもとより“女優レディー・ガガ”というスター誕生も招いた本作だが、最大のスターはブラッドリー・クーパーだろう。前任者の降板によって座を射止めた、俳優クーパーの鮮烈な監督デビュー。肉薄し続けるカメラワークによって、ハイレベルの化学反応を引き起こして役者の内面に分け入り、観る者の心を掴んで牽引する演出こそが本作成功の要因だ。

  • 私は、マリア・カラス
    彼女自身の言葉で語りかけるエモーショナルな構成が醜聞を剥がす
    ★★★★

     後半生はスキャンダルにまみれ、53歳で急逝したオペラ界のレジェンド。光と影を描くこのドキュメンタリーの作りは尋常じゃない。関係者の証言の類はなく、収集に時間をかけた未公開インタビューやプライベート映像、未完の自叙伝や初公開の手紙などに綴られた言葉によって、真実が紡ぎ出されていく。ナレーションは排され、朗読するのは『永遠のマリア・カラス』で彼女を演じた女優ファニー・アルダン。そして本人が謳い上げるオペラの歌声が、自身の複雑な内面を表す。理不尽な運命、悲哀、儚さ。激動の人生についてカラスが自身の言葉で語りかけてくる、ノンフィクションを超えたエモーショナルな構成が、逆説的に醜聞を剥がしていく。

  • 斬、
    武器の原点に集約して描く、正義の危うさと非暴力を貫く困難さ
    ★★★★★

    『野火』を経た塚本晋也が、人間の業深き暴力を突き詰め、一本の刀にたどり着いて、時代劇の定型を破壊するラディカルな映画が生まれた。武器の原点を介し戦争の根源を描く。大義のための暴力を疑わないヒロイックな古武士。人を殺めることに抵抗を抱く腕の立つ若者。彼らを主軸に、脅威としての粗暴な浪人集団や、戦を夢見る一本気な少年、そして争いを否定しながらも、いざとなれば復讐の情念をたぎらせる女性が配置されている。今という不穏な状況を反映させた構図は、専守防衛の名の下にバランスを逸す。殺陣はカタルシスの対極にある。凄惨な人殺しをまざまざと見せつけ、正義の危うさと非暴力を貫くことが困難な時代へ警鐘を鳴らす。

  • パッドマン 5億人の女性を救った男
    男を突き動かした“妻への深い愛”を超える原動力は何だったのか
    ★★★★

     2001年インドの実話だというから驚きだ。市販の生理用ナプキンが高価ゆえ不衛生な布を代用している妻の姿を見て、男は奮い立つ。親族や世間から変態扱いされても、とことん安価なナプキン作りに邁進するポジティブな活力が、インド映画ならではの悲喜劇を生む。サクセスの着地点が小さくまとまっていない点が、実にドラマティックだ。それにしても、度重なる偏見と挫折を乗り越え、なぜ彼はナプキンに執着したのか。“妻への深い愛情”では説明しきれない狂気にも似たパッションが、どのように育まれたものなのか、最後まで解明されない。古い因習を打破したのは、彼の情熱よりも世界的な成功だったという現実が前面に出てしまった。

  • 来る
    正体不明の禍々しさが襲来する、ポップで和風な恐怖映画
    ★★★★

     ホラーという括りで捉えると、本作の魅力は理解しがたいかもしれない。中島哲也監督が一貫して描き続けているのは、人間の内面的な醜さであり、癒しようのない黒々とした心の闇だ。ここでの襲い来る禍々しき正体不明の存在は、「幸福」をめぐって表出する、悪意と弱さの映し鏡なのかもしれない。全員主役級のキャスティング。彼らを手玉に取ってキャラをデフォルメし、次々と主人公を入れ替えていく演出術に舌を巻く。壮大なクライマックスに向けて畳みかける濃密な映像のテンポが心地よい。日本の土着的な伝承をモチーフにポップで和風な恐怖映画が完成した。『進撃の巨人』は叶わなかったが、中島哲也版怪獣映画が猛烈に観てみたくなった。

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