シネマトゥデイ

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清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家・クリエイティブディレクター|1962年東京生まれ|●著書に、「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」、新潮新書「スター・ウォーズ学」(共著) ●WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画制作で、国際エミー賞芸術番組部門、日本民間放送連盟賞最優秀賞、ギャラクシー賞奨励賞を受賞

近況: ●劇場パンフ「エイリアン:コヴェナント」映画評●映画.com特集「スパイダーマン:ホームカミング」「ベイビー・ドライバー」「幼な子われらに生まれ」●シネマトゥデイ短評●TOKYO FM「スカパー!日曜シネマテーク」●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」

サイト: http://eiga.com/extra/shimizu/

清水 節 さんの映画短評

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  • ドリーム
    道なき道を切り拓き「前例」となった女性たちの理性的な闘い
    ★★★★★

     そうだったのか!と感嘆し、偉業を支えた陰の人々に敬意を表し、生きる力が漲ってくる。コンピュータなき時代、NASAでロケットを精確に打ち上げる計算を黒人女性が担っていた事実とその苦闘が、あくまでもポジティブに描かれる。立ちはだかる性と人種の壁。感情的に抗うのではなく、理性的に闘う。因習が融け始め、多様性が浸透していく様が素晴らしい。上司ケビン・コスナーは『ダンス・ウィズ・ウルブズ』以来の名演。裏面史を知る知的興奮とサクセスストーリーの感動を併せ持つ。巨額の開発費と優れた科学技術だけが要因ではなかった。60年代アメリカは、壁を取り払い過ちを正したからこそ、人間を宇宙に飛ばすことができたのだ。

  • おクジラさま ふたつの正義の物語
    異なる正義を排除せず、相手を受け容れようとする想いが伝播する
    ★★★★★

     捕鯨をめぐる偏った主張で、全世界を印象操作した『ザ・コーヴ』への反論――それが当初の制作意図。多くの声に耳を傾け、多様な視点を与えてくれる。保護活動家は悪なのか。伝統を持ち出す正当化は思考停止に陥っていないか。とりわけ、太地町に住み漁師達に耳を傾ける米国人ジャーナリストと、両陣営の対話を仕掛けた街宣車の活動家には、覚醒させられる。多様な正義の中で、作り手が揺らぎ始めていくことこそ、最大の特質。声高に主張し相手を圧するのではなく、違いを認めて受け容れようとする柔軟な視点と真摯な想いが、観る者へ伝播する。翻って、いま本作から学んで変容すべきは、公然と罵り合い世界の緊張を高める為政者たちだ。

  • 三度目の殺人
    所詮真実にはたどり着けない法廷システムへのアイロニカルな挑戦
    ★★★★

     弁護士福山雅治が殺人容疑者役所広司と接見を重ね、真実のありかを探る。『羅生門』には証言者の数だけ真実があった。『それでもボクはやってない』では疑わしきは罰せずが成されない裁判への批判があった。本作は、供述を二転三転させる役所の怪演によって、冷徹だが内面は虚ろな福山が翻弄されていく。まるでレクターに対峙したクラリスのように。役所の変転は、所詮真実にはたどり着けない法廷というシステムへのアイロニカルな挑戦だ。被害者家族の会話という福山の知り得ない視点が、テーマを不鮮明にした面もある。それでも、情実などでは到底片付かない、複雑怪奇な人間の所業の深奥へと向かい、高度な倫理的問い掛けは成功している。

  • 散歩する侵略者
    実は監視や武力行使を始める国家権力の方が禍々しい「侵略SF」
    ★★★★

     黒沢清がSFらしいSFに手を染めた。それも侵略SF。『マーズ・アタック!』や『ゼイリブ』を嬉々として引用しながら、驚嘆の裏にユーモアを潜ませる。彼らは地球人の概念を盗み、人間を熟知してから収奪を完遂しようと企てる。黒沢映画特有の非日常がシネスコ画面を満たすが、これまでのホラー系とは異なる。少なからず社会性を帯びてくるのだ。実は、監視や武力行使を始める国家権力の方が禍々しい。それは防衛を大義名分として“戦前”の気配を醸成する現在と、どこか似ている。とはいえ本作はエンターテインメント性が勝り、長澤まさみ×松田龍平が夫婦関係を修復するラブロマンスという物語の主軸は、ハリウッド市場でも通用しそうだ。

  • エイリアン:コヴェナント
    欲望に忠実で、情の欠片もない“完全な命”こそ究極の恐怖
    ★★★★

     前作『プロメテウス』よりも『エイリアン』第1作要素は加味され、より残虐性が増した。リドリー・スコットは、視覚的に震え上がらせる方法論から転じ、ストーリー上の恐怖を追求する。リプリーを思わせる強きヒロインは登場するが、真の主役は、前作で「誰でも親の死を望むもの」と口走ったアンドロイドのデヴィッド。手掛かりは、フランケンシュタイン博士と怪物の物語。異星人と人間/人間と人造人間/人造人間と異生物を、造物主と被造物の永遠の関係性として捉え直す。スコットのもうひとつの伝説『ブレードランナー』とも通底するが、本能と欲望に忠実で欲望を満たすためだけに生き、情の欠片もない“完全な生命”こそ究極の恐怖だ。

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