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これぞ真のサイコスリラー 11月の5つ星映画5作品はこれだ!

 少年と女性しかいない孤島を舞台に悪夢の始まりを美しい映像でつづり、各国の映画祭で高評価を得た異色作『エヴォリューション』がついに公開! 『ビフォア』シリーズや『6才のボクが、大人になるまで。』リチャード・リンクレイター監督ファン待望の新作青春ドラマ、トム・クルーズ『アウトロー』の続編、こうの史代のコミックをアニメ化した『この世界の片隅に』、鬼才・アレハンドロ・ホドロフスキー幻の未公開作など、豊作の今月。これが11月の5つ星映画5作品だ!

エブリバディ・ウォンツ・サム
(C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

何てことないけど最高に輝いていたあの頃がぎゅっ!

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

 リチャード・リンクレイター監督が「『6才のボクが、大人になるまで。』と『バッド・チューニング』の精神的な続編」と表現する本作で描いたのは、『6才の~』のラストシーンの直後から始まる<高校を卒業して大学の新しいルームメイトと出会って授業が始まるまで>という高校生でも大学生でもない主人公の3日間。スタイルは『バッド・チューニング』(1993)そのままと言ってもいいが、確かにそこにあった青春のきらめきを切り取るリンクレイター監督の手腕はいっそう洗練されており、主人公の野球部員たちがバカな話をしてバカな遊びをするだけなのに、どうしようもなく懐かしくて泣きたくなる。まだ何者でもないという不安もあるけど、その分自由と希望もいっぱいある。最高の仲間たちと過ごした、何てことないけど最高に輝いていた時間がここにはある。リンクレイター監督の新たな傑作だ。(編集部・市川遥)

映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』は11月5日より公開中

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ジャック・リーチャー NEVER GO BACK
(C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

背中で男の悲哀を語れるようになったトム

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』

 トム・クルーズが正義のためならルール無用な流れ者にふんし、そのアンチヒーローぶりが話題となった『アウトロー』の続編。『ラスト サムライ』エドワード・ズウィック監督と再びタッグを組んだ本格アクション映画だ。前作のジャック・リーチャーは、無職でホームレスの一匹狼がモットーだったが、今回は10代の女子を含む二人の女性を守りつつ悪に挑む。しかもその10代の子は自分の娘かも!? 「失うものはなにもない」スタイルを貫いてきたジャックが、まさかの展開に四苦八苦する姿に親近感が湧く。実際にも娘がいるトムだけに、娘かもしれない女の子とのやり取りは、妙に真実味があり切なさすら感じる。中年男性の悲哀がにじみ出るトムの背中のショットには、「トムも背中で語れるようになったのか」としみじみさせられる。一瞬アクション映画であることを忘れてしまうほどのトムの演技はさることながら、50歳超えとは思えないキレッキレな格闘シーン、ムキムキな筋肉、美し過ぎる疾走フォームは見事。日ごろのストイックな姿勢がうかがえ、信念を持った男という意味でジャックとトムの生きざまが交差し、単なるアクション映画とひとまとめにすることができない仕上がりだ。(編集部・香取亜希)

映画『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』は11月11日より公開

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この世界の片隅に
(C) こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

少女漫画展開から落とされる爆弾 戦争を知らない世代だから観ておきたい

『この世界の片隅に』

 生まれ育った町・江波から20キロメートル離れた呉へと戦時中に嫁いできた一人の女性・すずを通して、当時を生きた人々の喜怒哀楽を映した作品。主演声優に初挑戦したのん(改名前:能年玲奈)だが違和感はない。むしろ後にすずが漏らす「憤り」の声は、若くしてさまざまな経験をしている彼女だからこそ出せたのではないか。本編は戦時中が舞台なのに暗くはなく、終始明るい。子供時代に見初めた女の子を嫁に迎えるとか、その女の子が昔好きだった男性が突如現れるだとか、とりあえず壁をドンしとこうという少女漫画よりもキュンキュンする展開が続く。一方で、空襲警報が日常化する生活が戦争に染まっていくさまは切ない。戦争を知らない世代だからこそ観ておきたい一本だ。監督は「BLACK LAGOON」シリーズの片渕須直。1カットずつ切り取っても絵になる細やかな作画は、最近人気の「ユーリ!!! on ICE」のアニメスタジオMAPPAが担当している。(編集部・井本早紀)

映画『この世界の片隅に』は11月12日より公開

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ホドロフスキーの虹泥棒
(C) 1990 Rink Anstalt / (C) 1997 Pueblo Film Licensing Ltd

劇場のスクリーンで観なきゃ損!

『ホドロフスキーの虹泥棒』

 各シーンの舞台や背景、ちりばめられた小物、ファッション、セットなど、隅から隅まで手を抜くことなく作り上げられた世界観に脱帽。観客の脳や心にこびりついて離れない作品を生み出す鬼才・アレハンドロ・ホドロフスキー監督1990年の日本未公開作が、監督自らの監修によって92分のディレクターズカット版となり、26年たった今、ついに日本で公開される。『アラビアのロレンス』などの名優ピーター・オトゥールさん&オマー・シャリフさんや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどのクリストファー・リーさんの圧巻の演技は言うまでもなく、辛らつなセリフで核心をつく観察眼、凡人の想像をはるかに超える皮肉とユーモアを高い芸術性をもって昇華させる手腕はホドロフスキー監督ならではのもの。26年前とは様変わりした現在では同じようには作れないであろう傑作を、2016年に劇場のスクリーンで観るという贅沢。それだけでも一見の価値がある。(編集部・小松芙未)

映画『ホドロフスキーの虹泥棒』は11月12日より公開

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エヴォリューション
(C) LES FILMS DU WORSO ・ NOODLES PRODUCTION ・ VOLCANO FILMS ・ EVO FILMS A.I.E. ・ SCOPE PICTURES ・ LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

まさに美しい悪夢…皮膚に張り付くような不気味さに襲われる

『エヴォリューション』

  『エコール』で少女たちの閉鎖的な世界を描いたルシール・アザリロヴィック監督が10年の歳月をかけて完成させた本作は、大人の女性と少年たちしか存在しない孤島を舞台にしたダークファンタジーだ。“美しい悪夢”と謳われている通り、圧倒的な映像美に見惚れていると薄気味悪さが皮膚にまとわりつくかのように鑑賞後までも尾を引く。極限まで抑えられたセリフの数、アンドロイドのように似た容姿の女性たちなど、随所にぬかりなくこだわりをちりばめる監督の完璧主義っぷりにはただ感服。『エコール』をはじめ、思春期の少女を主人公に外形的性差が生じることへの恐怖を描いた作品は多いが、本作では少年を主人公にしたことにより、どこかノスタルジックな雰囲気と、少年たちの成長に対する漠然とした恐怖が伝わってくる。光の届かない海の底へと連れていかれたような、とにかく息苦しい81分。これぞ真のサイコスリラーと呼ぶにふさわしい一作だ。(編集部・石神恵美子)

映画『エヴォリューション』は11月26日より公開

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