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『GARMWARS ガルム・ウォーズ』押井守監督 単独インタビュー(1/2)

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押井守監督

 2000年の公開を目指しながら、諸々の事情から凍結の憂き目にあった、押井守監督幻の映画が、15年という長い構想期間を経て『GARM WARS ガルム・ウォーズ』として公開を迎える。日本語版プロデューサーを務めたスタジオジブリの鈴木敏夫との関係も含めて、押井監督が本作への思いを語った。(取材・文:入倉功一)

■丘の上から見る景色

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15年を経て上った丘から見た景色は? (C) I.G Films

Q:構想15年を経て、ついに完成したお気持ちはいかがですか?

何ていうか、当初考えていたほどすっきりしたわけじゃないという感じ。この15年の間にいろいろなことをやってきたわけで、待ち続けたわけではないし、この作品で実現しようとしたことも大分変わったから。実際、半ば失われた企画だったし、『アバター』(2009)しかり、ハリウッドでさんざん実現されちゃった種類の映画だから。15年前なら確かに大したもんだった。やろうとしたことは間違ってなかったけど、日本の現実がそれをゆるさなかった。仮に成立したとしても、絶対に回収できない企画だったんですよね。

Q:当時は、かなりの予算規模の作品としてスタートしました。

うん、60億円って話だった。だから相当大きな博打になるし、そもそも完成したのだろうかっていうね。映画にはよくあるんだけど、やってみなきゃ実現可能かどうか判断できない部分があるから。当時は、3年間テストを繰り返していろいろなことをやったけど、今、突然やっていいとなったときはちょっと考えた。客観的に見てみると、『アバター』の後でこれやることの意味ってどういうことなんだろうってさ。ただ、人がやったからやる必要ないのかっていうのが、僕なりの結論だった

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こだわりぬいたビジュアルがスクリーンを彩る (C) I.G Films

Q:WOWOWで放送されたドキュメンタリーで監督が「丘に登ったうえで見る景色に意味がある」とおっしゃっていたのが印象的でした。

その丘の上に今は星条旗が立っちゃったっていうね。ただ、逆に言えば彼らが作ったルートがあるわけだから、とりあえず登ってみたら何かがきっとあるはず。その経験自体が次のステップになるはずだっていう考えだった。身内では誰も登ってないから。やってみることによってインフラが整備されるというか、その経験をした人間を何人か生み出すっていうさ。今回で言えば、制作側の佐藤(敦紀)くんは別として、僕以外はみんなカナダのスタッフだから。

あとは、カナダでタックスクレジット(税制優遇)って制度を使ってハリウッドと同じように映画を作ってみる。ハリウッド映画って、もう半分以上は国内で作られていなくて、それと同じ場所で物を作ってみようっていう。どんな障害があるのかも含めて、とにかく成立させるっていうのが今回の最終的なテーマだった。その結果、完成させたこと自体が奇跡に近いとは言わないけど、よくできたなって思うよ。それでいったら無駄ではなかった。

■役者と仕事をしたくなった

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押井監督ファンだった主演女優メラニー・サンピエールは、『攻殻機動隊』草薙素子そっくりのオカッパ頭でオーディションに参加したという。(C) I.G Films

ただ、現場のテーマとしてはそれでいいんだけど、監督ってそれだけじゃ仕事はできない。個人的なテーマを持たないといけないわけですよ。それは映画によってぜんぜん違って、『アヴァロン』のときは海外で映画作る、あとは母国語以外の言葉で映画を作るってどういうことなのかでさ。じゃあ今回はどうしようっていうと、役者と仕事しようと思ったの。変な話だけど、僕が持つべきテーマっていうのはそれしかなかった。

Q:本作ではカラ役のメラニー・サンピエールさんの美しさが際立っていましたね。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』でも、真野恵里菜さんと太田莉菜さんが、正直ほかの作品で観ると、ちょっと違うな……と思ってしまうくらい美しくて。そういう女優に対する姿勢の変化は、『ガルム』がひとつのきっかけになったんでしょうか?

それはありましたね。昔は役者にビジュアルしか要求してなかったけど、その役になるってところまでも含めて、付き合ってみようと。向こうの役者さんって契約中はその作品に徹するから時間がたっぷりある。それに、監督の中には答えが全部あるはずだって考えるから、いろいろな話をした。その経験を経て『パトレイバー』の現場に入ったからね。先に向こうの俳優と付き合うって、順番は逆なんだけど、今の日本映画の現場で役者さんとじっくり話すなんて無理だもん。何時に入って何時に出ますっていう世界でさ。その中で役について話をする時間が監督にあるかって言ったら、ぜんぜんないですよ。それをやるなら舞台しかない。だから深作健太とか本広克行くんが舞台をやってる気持ちはすごいわかるよ。二人とも昔から自分は役者と仕事したいんだっていう人だから。それを今の映画の現場でやるとしたら、海外行くか向こうの俳優と契約するか。あるいは『パトレイバー』みたいにシリーズでやるしかない。

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(C) I.G Films

Q:『パトレイバー』はシリーズだったから、俳優と長く付き合えたんですね。

そう、シリーズなのが大きかった。真野とか太田も普通だったら一過性で終わっちゃうんですよ。でも、なんせ半年以上付き合って、ある意味で連日会っていた。そういうことが意外に大事だってこと。その人のなりがわからないと、いいところは撮れないですよ。それが意外にも面白かった。あ、やっぱり役者って面白い人間だなっていうね。35年監督やってきて、ようやくそういうことに気がついた。やっぱりアニメの監督っていうのは変だと思う。僕は両方やったからその事に気がついたけど、紙の上、机の上で映画を作る人間たちだからあまり他人に興味を持たないもの。

Q:頭の中で映画が一本できてしまう人たちということですね。

それはもう特殊能力なんです。でも実写の監督って、日々の経験の中や起用した役者さんを見たところから物を考えるから、順番が違う。僕はこの歳にしてようやく、役者さんと仕事することの面白さがわかった。なぜできるようになったかというと、単純に歳をとったから。やっぱり若い時の気負いとか自意識がなくなったから。緊張してないんだよ。

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本作の人間たちは、正確にはクローンであるガルム。死んでも、別の体に記憶が移し変えて生きる。(C) I.G Films

Q:押井監督でも、昔は緊張されていたんですか?

特に相手が綺麗な女優さんだったりすると、男だから意識するんですよ。みっともないとこ見せたくないとかバカ言えないとかさ。でも、今は平気でバカ言っちゃう。それは歳とったことの良さで、どう思われようとぜんぜん関係ない。監督って歳とった方が絶対楽だなって、それは本当にそう思っている。逆に言うと監督って、成熟していくのにすごく時間がかかる。これは作家や漫画家とぜんぜん違うところで、60歳をすぎないとやっぱだめだなっていうのがようやくわかった。だから、実写の監督が長生きするのは当たり前だよね。アニメの監督はバタバタ死んじゃう。それはやっぱり、やってる仕事が違うんだよ。

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