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のん「主演映画は特別」 6年ぶり実写主演映画が東京国際映画祭観客賞受賞

第33回東京国際映画祭

第33回東京国際映画祭『私をくいとめて』観客賞受賞者会見に登壇したのん
第33回東京国際映画祭『私をくいとめて』観客賞受賞者会見に登壇したのん

 女優ののんが9日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた第33回東京国際映画祭の『私をくいとめて』観客賞受賞者会見に大九明子監督とともに参加。およそ6年ぶりの実写映画主演作となった本作を通し、「主演映画というのは特別だと思います」と映画女優として演じる喜びを語った。

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 2017年公開のヒット作『勝手にふるえてろ』に続いて芥川賞作家・綿矢りさの小説を大九監督が映画化した同作は、のん演じる、脳内の相談役「A」からアドバイスを得ながら生活する30代独身女性・黒田みつ子の不器用な恋を描くラブストーリー。

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 最初は、主人公みつ子役のキャスティングは真っ白だったと振り返る大九監督だったが、のんはどうかというプロデューサーの提案に、「なるほど」と思ったという。「年齢不詳な感じがあるし、隣にいてこのようなことを言うのは照れてしまいますが、もちろんこのように輝かしくてすてきな、チャーミングな方でありながらも、会社のどこかの部署でもひっそりと働いていそうな魅力がある。そういったことで、ぜひのんさんがいいなと思いました」と大九監督。「そしてその後、ご活躍のいろいろな映画、特に声だけではありましたが、『この世界の片隅に』のすばらしい表現力で、ご一緒したいという欲望が高まりました」と振り返る。

 「わたしは女優のお仕事が大好きで、一生ここにいたいと思っているんです」と語るのん。「10代の時に、わたしは女優にならなかったら何をやっていたんだろうと考えたんですが、思い浮かばなくて。実家にいる妹に聞いてみたことがあったんですね。そうしたら『その辺で野垂れ死んでいると思う』と言われて……。良かった、この道があってと思って。なんというか腑に落ちてしまって。それまでも女優の仕事が大好きで、ここで生きていきたいと思っていたんですけど、ここしかなかったんだという気持ちが固まりました」と女優が進むべき道と確信することになった経緯を述懐。
 
 のんにとって本作は、2014年公開の映画『海月姫』以来、およそ6年ぶりの実写映画主演作となる。「主演映画というのは特別だと思います。まず、たくさんのシーンがあって。一番セリフがあって。ずっと演技をしていられるということ。それが至福、幸せだなと思います」とのん。映画の現場について「映画は本当にたくさんの人が集まって。それぞれの技術、それぞれの脳みそを使って、ひとつの画面を作りあげていく。わたしも役者としてその一員に加わって。一点集中で、たくさんの人の思考が同じ所に向かっていく感覚がたまらない」と感じているそうで、「主演だとその中にずっといられるんです。それがたまらなく気持ちいい。もちろんくたびれるし、その分、今日はどうだったかなと落ち込むこともありますけど、みんながこれは絶対にいいシーンだったよねと手応えがあると、こんなうれしいことはないというくらい、幸せな気持ちになります。そこがわたしの中で映画が特別な部分かなと思いますね」と力強くコメント。

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 さらに、主人公みつ子役に対し「今回の脚本を観た時に、これは絶対にわたしがやりたいと思った」というのん。「セリフが全部面白くて。綿矢(りさ)さんの原作に描かれている部分も面白いですし、大九さんが付け加えたところも面白い。ここはいい感じでやりたいというくらいにやりたいという気持ちが強く芽生えたので。今回参加できたことは喜びでいっぱいです」と笑顔を見せた。

 本作は3月中旬にクランクイン、4月中旬にクランクアップの予定だったが、4月頭に東京都が出した緊急事態宣言を受け、撮影が2か月ほど中断されたという。その間について「(自粛中の)2か月の間にわたしの気分も左右されたので、シナリオを改稿しました。今の世界観より少し前の、まだどこかでコロナの足音がヒタヒタと聞こえ始めているなということを、ローマに住んでいる(橋本愛演じる)皐月だけが察知してるという世界観で描きました」と大九監督。「撮っている間も、まだ何の指針もない中で、毎日体温を測ろうとか、俳優もテストの間はフェイスシールド、マスクをつけようと。誰に言われたわけでもなく、みんなで知恵を出しあって。健康を守りながら撮っていくということをしました。映画館も閉まり、不要不急という言葉が飛び交いましたが、映画は不要でも不急でもないと信じたいので。これからもおのおのの制作者が細心の注意を払いながら作るべきだと信じています」と、あらためてコロナ禍で映画作りと向き合っていく覚悟を語った。(取材・文:壬生智裕)

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