ぐるっと!世界の映画祭

時代が追いついてきた!?あらゆる垣根を越えてLGBTQ映画が集うレインボー・リール東京(日本)

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レインボー・リール東京運営委員会の(写真左から)プログラマーの今井祥子さん、同・加藤健太さん、広報の樋口康さん。

【第62回】
 国際映画祭のジャンルは、大きく6つに分けられる。フィクション、ドキュメンタリー、アニメーション、短編、ホラー&ファンタスティック、そしてセクシュアル・マイノリティーをテーマにしたLGBTQ(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィアまたはクエスチョニング)。それぞれ密接なネットワークを構築しており、1つの作品が世界中で上映されるきっかけにもなる。日本のLGBTQ映画祭の先駆者「レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」は今年で26回目を迎えた。その歴史を振り返ると同時に、7月8日~17日に行われた第26回を映画ジャーナリストの中山治美がリポートします。(取材・文・写真:中山治美、写真:(c)Rainbow Reel Tokyo)

レインボー・リール東京

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アジアで2番目に長い歴史

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会場の一つ、東京・南青山のスパイラルホール内を彩るレインボーのライト。
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映画祭会場に設置された寄付金箱。今後の開催への希望の箱。

 1992年に東京国際レズビアン&ゲイ映画祭の名称でボランティアスタッフによりスタート。米国には今年で41回目を迎えたサンフランシスコ国際LGBTQ映画祭(通称フレームライン)のような老舗があるが、アジアでは今年で28回目の香港レズビアン&ゲイ映画祭に続いて2番目の歴史を持つ。初回は中野サンプラザ内にある小さな研修室で行われ、3日間で900人が来場する盛況ぶりだったが、「いかがわしい映画祭をやっている」と苦情もあったという。

 「一方で理解して下さる方もいて、スパイラルホールにはもう20年近くお世話になっています」(映画祭代表の宮澤英樹さん)。

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スパイラルホールのホワイエにはBARコーナーも。募金をしてくれた人に、アルコールやソフトドリンクが提供された。

 社会の変化に伴って関心が高まると、ハリウッドをはじめLGBTQをテーマにした作品が増え、ドキュメンタリー映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』(2014)は、本映画祭での上映がきっかけで日本公開へと繋がった。「ウチの映画祭の存在に、日本の映画会社がようやく気付いてくれたようです」(プログラマーの今井祥子さん)。

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株式会社TENGAが「TENGA RAINBOW PRIDE CUP」の売り上げ金の一部を、映画祭の活動へのサポートとして寄付。株式会社TENGAヘルスケアの中野有沙さんから目録を受け取る映画祭代表の宮澤英樹さん。

 2015年には映画祭側も裾野を広げるべく、多様な性を象徴する虹(レインボー)とフィルムを意味するリールを合わせたレインボー・リール東京と名称を変更。同時に運営母体としてNPO法人レインボー・リール東京を設立した。

 今年は映画祭前半の7月8日~14日はシネマート新宿で連日夜1作品ずつ上映され、後半の7月14日~17日は東京・南青山のスパイラルホールで終日行われた。観客動員数はのべ4,300人。「初回から参加している」という常連も多く、スパイラルホールでは、長時間の映画鑑賞に備えてマイ座布団を持参している人も多数見られた。

 「映画祭も認知されてきましたし、我々も(経験など)積み重ねてきたものがある。当事者以外の方も、結構な割合で見にきてくれるようになりました」(宮澤さん)。

社会の潮流に合わせて作品も変化

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舞台挨拶を行った『アンダー・ハー・マウス』のエイプリル・マレン監督。女優としても活躍している。

 今年の上映カテゴリーは3つ。世界各国から集めた中・長編の招待作品。日本の短編を対象にしたレインボー・リール・コンペティション。2015年にアジア・環太平洋地域でのLGBT映画の支援・振興を目的に設立されたアジア・パシフィック・クィア・フィルム・フェスティバル・アライアンス(APQFFA)に加盟する映画祭からピックアップした短編6本を上映するAPQFFA傑作選2017。

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『私はワタシ  ~over the rainbow~』の上映では、企画・キャスティング・プロデューサーを務めた女優・東ちづると、増田玄樹監督がトークイベントを行った。同作は、40人以上のセクシュアル・マイノリティーにインタビューしたドキュメンタリー。

 「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)をテーマにした作品は昔も今も変わらずあります。それと昔は、アイデンティティーやカミングアウトに悩んでいるというテーマの作品が多かったと思います。それが最近はLGBTQであることを受け入れた上で、どうやって社会と付き合っていくか? という内容の作品が増えたと思います。また単純にLGBTQだけでなく、プラス移民、プラス人種といったダブルマイノリティーを描いた作品ですね。今年のアカデミー賞作品賞を受賞した『ムーンライト』がその代表です」(今井さん)。

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今回1番の人気作だったパラトポル・ミンポーンピチット監督『ファーザーズ』(タイ)。孤児を育てていたゲイ・カップルだったが、子供の生みの母親が現れたことで、“家族”の関係が揺らぎ始める--。

 今年もっとも話題を呼んだのも、前述した社会とどう付き合っていくか? を描いたもので、孤児を養子として育てているゲイ・カップルが主人公のパラトポル・ミンポーンピチット監督作『ファーザーズ』(タイ)だ。ちょうど今春、大阪市の男性カップルが養育里親認定されたというタイムリーなテーマだったこともあり、2回の上映はいずれもチケット完売となった。

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ホセリト・アルタレホス監督『迷い子たちの物語』(台湾・フィリピン)は、自分を捨てた母親が暮らしているという台北にやってきたフィリピン人・アレックスと、医大生ジェリーの友情物語。ジェリーはゲイだが、いずれは村に戻り、村の女性と結婚して医者になる運命が定められていた。

 筆者のイチオシはダブルマイノリティーもので、ホセリト・アルタレホス監督『迷い子たちの物語』(台湾・フィリピン合作)。台北で偶然出会ったフィリピン人のアレックスと、台湾人のジェリーが友情を育んでいく物語で、ジェリーの方が台湾の少数民族。彼は台北で医学を学び、いずれ村に帰って医者になることを期待されているのだが、さらに幼馴染との結婚話も出てきた。親を裏切りたくはないが、同性愛者である彼にとって深い悩み。だが、同様に因習や家庭の事情を抱えながらいかに自分らしく生きるかを模索している人は多いはず。彼は、私たちと同じような悩みを持ち、決して別世界で生きている人ではないということに気付くだろう。

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男前なモデル、エリカ・リンダー主演『アンダー・ハー・マウス』は10月7日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開。 (C)2016,Serendipity Point Films Inc.

 直球のラブストーリーも、根強い人気がある。“ネオイケメン”モデルのエリカ・リンダー主演『アンダー・ハー・マウス』(10月7日公開)だ。こちらはカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したフランス映画『アデル、ブルーは熱い色』(2013)を彷彿させる女性同士の濃厚なラブシーンがあり、昨年のトロント国際映画祭(カナダ)で上映されるや衝撃をもって伝えられた。

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『アンダー・ハー・マウス』のエイプリル・マレン監督のサイン会に長蛇の列ができ、シネマート新宿のロビーは大賑わい。

 本映画祭が日本初上映となり、エイプリル・マレン監督も来日。舞台挨拶を行ったシネマート新宿は女性でぎっしり埋まり、監督のサイン会には長蛇の列ができた。マレン監督は本作を製作した理由を問われると「女性同士が恋に落ちたらどうなるか。今までの映画はそれを、女性目線できちんと描けていないと思った。なので、この映画は監督も脚本もスタッフも、全員女性を集めました。描きたかったのは“自由”。年齢や性別、宗教とかは関係ない。愛は愛」と力強く語り、会場から大きな拍手を浴びていた。

広がるLGBTQのネットワーク

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レインボー・リール・コンペティション授賞式に勢揃いしたノミネート作品関係者。ゲストは映画ライターのよしひろまさみちさんが務めた。
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映画祭オリジナルトート・バッグやストラップなども販売。

 特筆するのは、昨年に続いて行われたAPQFFA傑作選2017の上映だろう。加盟映画祭との連携が、早速、映画祭のプログラムに反映されたものだ。「プログラミングに関しては、(予算がなく)なかなか他の映画祭やマーケットに参加して作品を探すことができないので、他のLGBTQ映画祭の上映作をチェックし、そこからこれぞと思う作品のスクリーナー(試写用映像資料)を取り寄せて選んでいます。ただし、LGBTQ映画祭が多い欧米ではアジア作品の割合が少なく、特にショートフィルムの情報を得るのはなかなか難しいのが実情です。APQFFAが設立されて最新の情報が集まるようになり、とても助かっています」(今井さん)。

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クロージング・イベントに登場した女装パフォーマー&ライターのブルボンヌさんが会場を盛り上げた。

 同傑作選で上映された短編6本も、実に見応えがあった。中でも心打たれたのは、ブレンドン・マクドナル監督『ダム/The Dam』(オーストラリア映画)。残り時間が限られている老人2人が再会し、10年前に伝えられなかった思いを届ける。セリフは必要最低限ながら、ゲキ渋俳優たちの表情と美しい映像で、2人の歴史をわずか16分で表現してしまった力量に唸った。

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ブレンドン・マクドナル監督の短編『ダム』(オーストラリア)は、過去になんらかの理由で別れた老人2人が再会し、思い出の場所に向かう物語。

 今後は加盟映画祭の作品を日本に紹介するだけでなく、レインボー・リール・コンペティションのノミネート作品をはじめとする本映画祭で上映された日本映画を“輸出”することにも力を入れていきたいという。

 そのネットワークはAPQFFAだけでなく、ベルリン国際映画祭(ドイツ)のような世界三大映画祭にも広がっている。同映画祭ではLGBTQがテーマの作品を対象にしたテディ賞があり、審査員を務めるのは各国のLGBTQ映画祭の関係者。今年2月に開催された第67回では今井さんが審査員の一人を務めた。そして荻上直子監督『彼らが本気で編むときは、』が審査員特別賞を受賞したのは記憶に新しい。レインボー・リール東京から世界を目指すのも夢ではないのだ。

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アンドレ・テシネ監督『17歳にもなると』(フランス)は、2016年に開催された第66回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に選出された。衝突を繰り返していた17歳のダミアンとトマの、家族、学校、愛。

 一方で、もともと本映画祭は、LGBTQへの理解を深めるだけでなく、なかなか日本で劇場公開される機会のないLGBTQをテーマにした映画を上映しようという目的もあった。しかし先に述べた『ムーンライト』や『アデル、ブルーは熱い色』が大きな国際映画祭で上映され、映画賞も総ナメとなるなど、もはやジャンルの垣根はない。すると、あえてLGBTQ映画祭に出品せずとも、一般の国際映画祭を目指すようになる。

 「あと外国映画の場合は、日本に届く前に、もうすでにNetflixで配信されてしまったために上映を断念するというのが最近の傾向です」(プログラマー・加藤健太さん)。動画配信サービスの台頭は、カンヌ国際映画祭だけではなく、本映画祭のような小規模の映画祭も揺るがしているようだ。

充実のキオスクコーナー

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公式映画祭グッズ売り場・キオスクにはおしゃれなアクセサリーがたくさん。
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公式映画祭グッズ売り場・キオスクでは、プライドカラー別の缶バッジも販売されていた。勉強になります。

 スパイラルホールの広いホワイエを活用して、会期中は映画祭公式グッズを販売する「キオスク」がオープン。映画祭オリジナルバッグやクリアファイルの他、レインボーカラーに彩られたアクセサリー類が充実しており、筆者もつい、レインボーカラーのブロックが付いたネックレスを購入してしまった。またBARでは、募金してくれた人は飲み物が無料というサービスぶり。

 何より有り難かったのが、上映と上映の合間の休憩時間がたっぷり30分近くあるので、近所の飲食店で軽食をとれることだ。コレ、大きな映画祭でもスケジュールがぎっしり詰まっていることが多く、一日に何作品も鑑賞する参加者にとっては、いつ食事をとるのかが悩みのタネ。 些細なことかもしれないが、こうしたスケジュールの組み方で観客を考慮した映画祭であるかどうかが見えるのだ。

日本作品募集中

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レインボー・リール・コンペティションでグランプリを受賞した『カランコエの花』のスタッフたち。賞金10万円が贈られた。

 2018年開催予定の第27回に向けて、日本作品を募集中。上映時間40分以下の短編部門(レインボー・リール・コンペティション)と、40分を超える中編・長編部門に分かれているが、セクシュアル・マイノリティーを扱っていればドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー、ミュージックビデオなどジャンルを問わないというのが、自由な映画祭らしいところ。

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日本の短編映画(40分以下)を対象としたレインボー・リール・コンペティションのグランプリは、中川駿監督『カランコエの花』。高校を舞台に、1クラスのみ「LGBTについて」の授業が行われたため、クラス内に対象者がいるのでは? と騒動になる。

 またコンペティションのグランプリには賞金10万円が贈呈されるだけでなく、コンペ以外の上映作品にはそれぞれ規定の上映料が支払われる。そう明記しているのは、小規模の、ボランティアで成り立っている映画祭ではレアなケースで、それだけでも本映画祭の誠実さが伝わってくる。

 応募締め切りは2018年3月8日。詳細な応募規定は映画祭HPにて。

 また11月24日~26日に東京・中野区産業振興センターなどで開催される「TOKYO AIDS WEEKS 2017 」に本映画祭も協力しており、上映イベントを行う予定だ。

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