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在日ミャンマー人監督らの解放を求め、映画界からもさまざまな支援の動き

文化を通して日本とミャンマーの架け橋になるべく活動していたモンティンダンさん
文化を通して日本とミャンマーの架け橋になるべく活動していたモンティンダンさん - (写真:日本映画大学提供)

 今年2月に国軍がクーデターを起こしてから半年経ったミャンマーでは、いまだ国軍とクーデターに抗議する市民との間で混乱が続いている。卒業生が拘束されている日本映画大学天願大介学長)は、この現状を広く認知させるべく動きはじめた。不当な理由で逮捕、拷問を受けている市民の中には映画関係者も多く、彼らの解放を求めて世界各国の映画祭が連盟で声明も出しているが、先の見えない状況が続いている。

 ヤンゴンのインセイン刑務所に拘束されているのは、日本映画大学の前身・日本映画学校18期卒業生のモンティンダンさん。モンティンダンさんは1984年にミャンマー・ヤンゴンで生まれ、7歳から日本で暮らし、日本の永住資格も持っている。13歳から子役としても活動し、日本映画学校では演出・脚本学科に進学。卒業制作でモンティンダンさんの生い立ちが投影された在日ミャンマー人兄弟のロードムービー『エイン』(2006)は、学校長賞を受賞している。

ダン君シンポジウム
日本映画大学で行われた特別授業「日本映画学校OBモンティンダン君(ミャンマー)支援のための上映会」の様子。(写真:日本映画大学提供)

 卒業後は映像制作と俳優養成所学校で経験を積み、森崎ウィン主演の日本・ミャンマー合作映画『My Country My Home』(2018)に携わったことをきっかけに映像制作会社「Champ Asia Production」を設立し、日本とミャンマーで活動していた。また新作の監督作『めぐる』(2020)は、2020年10月にミャンマーで開催されたワッタン映画祭で初披露された後、第3回小布施短編映画祭(2021年3月27日、28日にオンライン開催)でも上映され、鴻山部門(一般審査員部門)で作品賞を受賞している。

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 まさにこれから映像の仕事を通して日本とミャンマーの橋渡しとなることが期待されていたが、ミャンマーで不服従運動を取材中の4月16日以降、日本の家族も連絡が取れなくなってしまった。家族はSNSを通して、モンティンダンさんの安否情報を求めていた。

エイン
モンティンダンさんの卒業制作『エイン』のワンシーン。タイトルは、ミャンマー語で「家」を意味する。(写真:日本映画大学提供)

 その家族の了承も得て、日本映画大学では7月24日に、在校生・卒業生・教職員・マスコミを対象とした特別授業「日本映画学校OBモンティンダン君(ミャンマー)支援のための上映会」を開催。卒業制作『エイン』の上映と、ミャンマーで拘束されモンティンダンさんと会ったジャーナリストの北角裕樹や天願学長らが参加してのシンポジウムも行われた。

 北角さんらによると、モンティンダンさんは不服従運動の映像を北角さんに売り、そのお金でをデモ隊を支援したとして起訴されたという。実際には金銭のやり取りはなかったそうだが、拘束されたモンティンダンさんは軍の施設で拷問を受け、虚偽の供述書にサインさせられたという。裁判は現在も継続中だという。

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 天願学長は「自由に映画を作ること、自由に上映すること、自由に観ること、それらはわたしたちの生命線です。どの国、どの時代であっても、映画を作る者、映画を愛する者はわたしたちの仲間です。ミャンマーで起きていることを、黙って受け入れることはできません」とコメント。同大ではモンティンダンさんの解放のために、自分たちに何ができるのかを模索していくという。

 同時に、希望者・団体に『エイン』の無料貸し出しを開始。本作を通して、ミャンマー情勢を考えるきっかけにしてほしいという思いが込められている。

 同大の動きと連動する形で、日本映画監督協会(崔洋一理事長)は「在日ミャンマー人監督の即時解放を求める声明」を7月21日に発表した。その中で「日本映画監督協会は、表現の自由をはじめ、映画監督のあらゆる権利の擁護・獲得を目指す協同組合としてこの事態を深く憂慮するとともに、非人道的な弾圧を強く非難し、映画に関わるミャンマーの仲間と市民の即時解放と、表現と行動の自由の回復、民主主義の復活を求めます」と訴えている。

マエインさん
6月から拘束が続いているミャンマーのプロデューサー、マエインさん。(ICFR:危険にさらされている映画製作者のための国際連合のFacebookより)

 このほか、14日(現地時間)までスイスで開催される第74回ロカルノ国際映画祭にマウン・サン監督『マネー・ハズ・フォー・レッグス(英題) / Money Has Four Legs』(2020・ミャンマー)が出品されているプロデューサーのマエインさんも6月上旬に逮捕され、拷問を受けて病院に搬送。その後、再び刑務所に移送された。6月9日には、東京国際映画祭も含めた世界の主要映画祭が連盟でマエインさんの即時かつ無条件の解放を求めた声明文を発表しているが、いまだ拘束が続いている。

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 また在日ミャンマー人一家が主人公の日本・ミャンマー合作『僕の帰る場所』(2017・藤元明緒監督)の製作・配給会社E.x.Nでは、同作のチャリティー上映を全国各地の映画館で行っており、配給収益および会場設置の募金箱で得た協力金はミャンマー市民を支援する活動に全額寄付するという。

 ミャンマーでは8月1日に国軍のトップを首相とする暫定政府が発足。不服従運動に参加していた人の中には、身の安全を守るために、デモに参加していた画像をSNSから削除する動きも出ている。国際社会が打開策を見出せない今、草の根の支援が大きな力となることを願わずにはいられない。(取材・文:中山治美)

映画『エイン』の上映申し込みは日本映画大学(info@eiga.ac.jp)まで

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