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『チャーリーとチョコレート工場』ダニー・エルフマン単独インタビュー

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『チャーリーとチョコレート工場』ダニー・エルフマン単独インタビュー

取材・文・写真:FLiXムービーサイト

大ヒット中の『チャーリーとチョコレート工場』を彩るのは、ティム・バートンの映像世界、ジョニー・デップのハイテンションな演技、そして、ダニー・エルフマンの楽しく、ちょっと不気味な音楽だ。普段は、めったに表舞台に姿を現さず、今回の来日記者会見にも出席しなかったダニー・エルフマン。単独インタビューでは、『チャーリーとチョコレート工場』音楽の誕生秘話から、長年のティム・バートンとの確執まですべてを語り、映画音楽界の異端児と呼ばれる彼の貴重なインタビューとなった。

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いままでの仕事の中で一番エキサイティング

Q:『チャーリーとチョコレート工場』の作品作りは楽しんで出来ましたか?

すごく楽しかった。これほど、クレイジーな音楽は今まで書いたことがなかったからね。僕は、このサントラでボーカルも担当したんだけど、コンピューターを使って僕が録音した、たくさんの声を加工して、ハイテンションな曲を作り上げる作業は本当に面白くて、これまでで、僕自身も一番エキサイティングに楽しめた仕事だったと思う。

Q:これだけの楽曲を作るのに、どれだけの時間がかかりましたか?

永遠さ! 僕は作曲に、撮影の1年前からとりかかっていたんだ。なぜなら、撮影が始まる前にすべての曲を完成させておかなければならなかったからね。だから、イギリスとアメリカをひたすら行ったり来たりの生活だった。曲が完成してからは、アニメーションを担当してるチームが、音楽に合わせて映像を作って、こんどはそれに合わせてまた音楽を変えて……の繰り返し。結局出来上がったのは、ぎりぎりで、本当に大変な作業だった。

Q:一番大変なリクエストはなんでしたか?

「ベルーカ・ソルト」を作る時、ティムが「この曲は、ほかの曲とはまったく違ったスタイルにしてくれ」って言ってきたんだ。「ポップで、ちょっとアバっぽくて、ママス&パパスのテイストも入れて」って。なんだそれ? って感じでしょう? でもそれに対して、僕が「ついでにビーチ・ボーイズもいれたりして」って言っちゃったもんだから、ますます盛り上がって(笑)。結局「ポップな60年代風」ってことになったんだけど、僕にとっては大きな挑戦だった。これまで、そんな曲作ったことなかったからね。「オーマイガッ。僕は一体何をしてるんだ?」って思っちゃったよ。

ジョニー・デップの歌声を聞いてみたい

Q:たしかに今回のサントラは、ティムとあなたが組んだ『バットマン』や『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』と違い、とても明るく楽しい雰囲気でした。曲のアイディアはどんな風に浮かぶのですか?

そうだな。脚本をもらって、ティムと話し合いながら作曲にとりかかると、どんどん楽しくなって、アイディアも次々に浮かんでくるんだ。マイクをセットして、ギターを弾きながら、あとは浮かんでくるメロディーを歌うだけさ。

Q:ジョニー・デップの歌声を使いたくなったりしませんでしたか?

できることなら、ぜひ、彼にも歌ってもらいたかったんだけど、残念ながらまだ彼の歌を聞いたことがないんだ。でも、機会があれば聞いてみたいと思っているよ。

ティム・バートンとけんかして、1年も口をきかなかった

Q:『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』以降、しばらくティムと組んでの作品がありませんでしたが、それには何か理由があったのですか?

実は僕たちは『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の時にケンカしたんだ。1年くらい口もきかなかった。あの作品を作っているときは、常に張り詰めた緊張感の中で皆が作業していた。2年半もの間ね。それだけ長い間、高い緊張感のなかで仕事していたらそりゃあイライラするよね。さらに、僕たちは同時進行で『バットマン リターンズ』にもたずさわっていた。ここまで濃密になってくると、あとは破滅だよね。彼と話すことさえ嫌になってしまって。もちろん、もう仲直りしたし、今はとてもいい関係になったけどね。ただ、彼との問題はぼくにとって、すごくつらいことだったから、もう二度とあんな事が起きないようにしたいと思っているよ。

Q:一番お気に入りの曲はなんですか?

「オーガスタス・グループ」と「ベルーカ・ソルト」だな。「ベルーカ・ソルト」は作るのに苦労したけど、とても楽しかったから思い入れが深いんだ。

Q:ウィリー・ウォンカのテーマソングはなんだかディズニーランドみたいでしたね。

それが僕らの狙いなんだ! でも、これが簡単そうに見えて……ああ、思い出すだけでもつらいぐらい、超クレージーな仕事だった。3日の間、24時間メロディーが頭から離れなかったんだ。もう2度と聞きたくなくなったよ。仕事が終わって本当にうれしかったのは、あのクレイジーな曲たちを毎日毎日狂ったように聞く日常から解放されたことだね。ウィリーが夢にまで出てきたんだから。

音楽教育ってものは受けたことがない

Q:それだけ、クレイジーな作曲ができるあなたですが、どんな音楽教育を受けて育ったんですか?

僕は、音楽教育ってものを一切受けていないんだ。ピアノも習ったことがないし、初めて楽器に触ったのは17歳のときなんだよ! だから、ほかの音楽家たちには変人扱いされてる(笑)。 僕には、まだ赤ちゃんの娘がいるんだけど、彼女には早くピアノのレッスンを受けさせたいと思っているよ。
今になって、あの時ピアノを習っておけばよかったってことがよくあるから。

Q:これまで、一緒に作品を作るのが大変だった監督はいますか?

たくさんいるよ。でも誰かは教えないよ(笑)。この業界は怖いんだ。どこに目や耳が潜んでいるか分からないからね。一緒に働いた人の悪口は言わないっていう見えない掟がハリウッドにはあるんだけど、いいルールだと思うよ。じゃないと怖くてやっていられないもんね。

Q:音楽を作るやり方として、オーケストラとデジタルではどちらが好きですか?

オーケストラは、すごく大変なんだ。自分だけの意志では作れないから。100人以上の音楽家がスタジオにいてその人たちを一人残らず完璧にコントロールしなくちゃいけない。100人のオーケストラは100匹の怪獣より恐ろしいよ。楽しいけど、終わった後はぐったりしちゃうんだ。疲れ果てるよ。

仕事をしているときはお酒やドラッグはいらない

Q:これだけクレイジーな音楽を作るのに、お酒やドラッグは必要ないんですか?

仕事をしている時は絶対ないよ(笑)。僕やティムを怪しむ人はいるかもしれないけどね。必要になるのは、仕事の後さ。毎日、朝の2時、3時まで作業をしているからその後に、ちびっと日本酒を飲むのが好きだよ。アルコールを飲むと、どうしてもリラックスしてしまうでしょう? そうなると、仕事にならないから、すべてが片付いた後じゃないとお酒を飲む気にはなれない。

Q:この映画で一番気に入っているシーンはどこですか?

リスが登場するところだね。現場を訪れた時に、ちょうどリスのシーンを撮っていたんだけど、リスのためのトレーニングルームがあるんだよ! すごくキュートだと思わない? とにかくあのシーンはとてもすばらしかった。


カメラ嫌いの気難しい音楽家……という最初に抱いていたイメージからはおよそ想像もできないような、優しい笑顔のダニー・エルフマンは終始にこやかに、インタビューに応じてくれた。大変だった作曲作業について語りながら、ときおり思い出し笑いをする彼は、長年のすれ違いを解消した盟友ティム・バートンとの、友情の復活、そしてその友情が作り上げた傑作『チャーリーとチョコレート工場』完成への喜びを隠し切れないようすだった。再出発した2人が今後どんな作品を作っていくのか。ティム・バートン、ダニー・エルフマン、ジョニー・デップの3人が再び手を組んだ、新作『コープス・ブライド』への期待も高まる一方だ。

『チャーリーとチョコレート工場』は9月10日より丸の内ピカデリー2 ほか全国で公開中。

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