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『恋する寄生虫』林遣都&小松菜奈 単独インタビュー

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『恋する寄生虫』林遣都&小松菜奈 単独インタビュー

生きづらいと思うことは誰しもある

取材・文:浅見祥子 写真:高野広美

三秋縋による原案小説を、CMやミュージックビデオで活躍し、大河ドラマ「青天を衝け」のタイトルバックなどを手がける柿本ケンサクが映画化した『恋する寄生虫』。極度の潔癖症を抱えて孤独に生きる高坂賢吾と、視線恐怖症に苦しみ不登校の状態にある女子高生の佐薙ひじり。一見なにもかもが、かみ合わない2人だったが、やがて惹かれ合う。しかし、その恋は脳内に寄生するという虫によってもたらされたもので、操り人形の恋にすぎなかった。臆病で痛々しくて美しいラブストーリーを、林遣都小松菜奈が演じた。

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目に見えない痛みをどう表現するか

林遣都&小松菜奈

Q:生きづらさを抱えた役に共感できましたか?

林遣都(以下、林):人間関係だったり、世の中、生きづらいと思うことは誰しもあると思います。僕自身は潔癖症ではないですが、主人公たちが抱えるような、多くの方が共感したり、映画の中で起きていることを敏感に感じられるストーリーだな、と思いました。

小松菜奈(以下、小松):私も視線恐怖症ではありませんが、遣都さんがおっしゃったように、そうした生きづらさを感じることはあります。でもそれは目に見えない、自分にしか感じられない痛みなので、どう表現するかは課題でした。視線の見せ方、相手と目が合わない、合わせるのが恐いとか、そうしたことを監督とも話して。2人が惹かれ合う段階を決めていきました。

Q:感情を表に出さない役なだけに、目線を意識した?

小松:説明台詞はたくさんありましたが、説明だけだと観る方もそれにとらわれ過ぎてしまう。ちゃんと人の持つ心の動きというものを見せられたらいいなと思って、セリフを途中で区切ったり、すべてのシーンで遣都さんや柿本監督と話し、重要な部分を際立たせるために整理しながら撮影していきました。

Q:林さんはどのようにキャラクターをつくりましたか?

林:虫が脳に寄生して感情を動かされる、というのは現実にはないことです。ファンタジーとしてそれを生身の人間が演じる。そして、たくさんの人が身近に感じるような登場人物でもある。まずは最低限、その人物像に説得力を持たせないといけないと感じました。菜奈ちゃんがおっしゃったように、脚本を読んで、虫が成長していく過程を会話の中で説明する必要があるのか、監督とも話し合っていきました。台詞も「君」とか「僕」、と小説的なやりとりをするのですが、それを人と接してこなかった、苦しい思いをしてきた人同士が出会い、どんな距離感でどういう会話でやっていくのか? すり合わせながらつくっていきました。

演技とCGのコラボレーション

林遣都&小松菜奈

Q:2人の目に映る主観の世界がCGで描写されていますね。

林:そうですね。僕たちは役を大切に、気持ちを込めて演じさせていただきました。そこに柿本監督の手が加わり、その弱い部分を、役者の感情表現とは違った方法でレタッチして膨らませてくださり、より深い印象的な姿になったと感じました。だからこそ重くなり過ぎず、冒頭での2人の弱い部分を描いたシーンはどこか滑稽で笑えてくるくらいの仕上がりになっていたのが驚きでした。

Q:視線恐怖症はよりわかりやすくなっていました。

林:あれ面白かったですね。

小松:見えないものを、「こういうことなのかも」と思えるようなCGで見せてくれると、観る方も体感できますよね。それがポップでいいなって。一見、気持ちワル! と思うような表現も、ちょっと癖になっちゃうようで。CGがどうなるかは脚本を読んでいて気になるところでしたが、もうCGとのコラボレーションですよね。

Q:林さんは水が絡むシーンがありましたが、CGではないですよね?

林:はい(笑)。タンクを載せたトラックが撮影スタジオに用意されていて、ホースからとてつもない量の水が発射されました。撮影は一度ではなく、いろいろなアングルで撮る必要もあって、何度かやりました。

小松:あの水に、いろいろなものが混ざってませんでした?

林:そうそう。ワカメとかおう吐物を表現したようなものが入ってて、ちょっと変な匂いもして。気持ち悪いんだよね。

小松:それをめちゃくちゃ淡々とやっていて、そのさまがシュール過ぎて!

林:なんか笑えてくるんだよね、なにやってるんだろう? って感じで。

Q:小松さんも、湖に入っていましたね?

小松:遣都さんも一緒に。

林:寒かったんですよ、めちゃくちゃ。

小松:2月で。脚にラップを巻いたりして。

林:ね、重装備で。

小松:震えながらやってました。もちろんリハーサルもしましたが、実際に水があるとどうなるかわからないし、自分たちの気持ちでどこまで湖に入ってしまうかもわからなくて。これはもう本番で、「とりあえずやってみる感」が強かったです。陽の沈むタイミングもあり、とても神秘的な湖で。2人の引き合うさまがより際立った、いいロケーションでした。

林:どの撮影場所も、日本じゃないみたいに見えるんですよね。

ラストシーンをみんなで見つけた

林遣都&小松菜奈

Q:お互いの印象は?

林:主人公の2人がどうリンクしていくか、不安があったんです。撮影はシーンの順番を行ったり来たりするので、どこまで心を開いているか? 時には流れに身を任せてくだけちゃってもいいんじゃないか? といろいろ考えて。虫の成長過程、感情の部分でも大きなズレが生じないように2人ですり合わせをしながら、感じ合いながらつくっていきました。役じゃないときも接しやすい方でお芝居の話もしやすく、心強かったです。

小松:現場では腑に落ちない部分をどう払しょくするか、遣都さんに相談していました。今まではこんなに役者さんと、このシーンをどうする? というお芝居の話をしたことがなかったんです。でも今回はそれなしじゃ無理! という感じで。

林:(笑)。

小松:現場ではいろいろなパターンを試しました。セリフなどで、どう言えばいいか自分で答えが出せなくて、どうしよう!? というとき、遣都さんが持ち帰ってくださって。後日、「こう考えたんだけど、どうかな?」と提案してくださったり、導いてくださいました。いつでも冷静なので、監督も遣都さんに助けられた部分がたくさんあったと思います。あんな風に会話ができなかったら完成していなかったかもしれない、というくらいで。ラストシーンも、脚本とは全然違うものになったんです。全体のバランスを考えたとき、2人は普通でいたかったのかなと。なにが普通かはわかりませんが、普通にお店に入ってモノを買ったり、人と話したり会社に行ったり。そうしたことを望んだ2人だったからあのラストシーンになった。完成した映画を観て、現場で積み重ねてきたものがあったからこそのゴールだったなと。

林:原案の小説や脚本とは違った方向、より普遍的なものになったと思います。最後までラブストーリーの要素が強い流れになっていたんですけど、さらに2人の人生のこれまでと、その先を感じられるようになっていた。演出もより内面的なもの、心の変化や成長を求められた気がします。印象的なのは2人が一番近いところで肌と肌が触れ合うというシーンで、「とにかく感じてみてください。なにを感じるのか見つけてください」といったニュアンスの演出をしていただいたんです。そうした現場でのやりとりの中で撮影の終盤、ラストシーンをみんなで見つけていきました。普通を求めていて、それがどれだけ幸せで気づくべきことか? 映画の大きなメッセージとして、みなさんに残ればいいなと。

いまを生きる人に響く

林遣都&小松菜奈

Q:完成した作品の感想は?

林:自分が出演していてちょっと言い方が難しいんですけど……ステキな映画だなって思いました。柿本監督の演出、感性に驚かされっぱなしでしたし、いまを生きる人に響くメッセージがたくさん込められています。音楽や映像の色使いもステキで、非日常に触れた感覚をしっかり味わえます。心が和らぐような映画になったんじゃないかと感じています。

小松:撮影の現場では見えなかったところも完成品で観ることができて。ふだん歩いている普通の道も日本っぽくないというか、アートの一部のように思えるんです。柿本監督の視点、音楽の入れ方や2人の心情の変化とのバランス、CGのポップさも美しくて。2人が心の痛みにもがくさまも丁寧にすくってくれてもいる。原案の世界観とが掛け合わさり、唯一無二の作品になりました。コロナ禍を経て目に見えない心の傷を抱えた人は増えているかもしれませんが、人との触れ合いの大切さを改めて感じさせてくれると思います。ひとつのメッセージとしてこの作品を世に残せてよかったです。ぜひ、大きなスクリーンで観ていただけたらうれしいです。


林遣都&小松菜奈

立っているだけで場を明るくする光を放つ2人。写真撮影が始まると林はカメラマンの指示に黙々と応え、小松はスタッフと談笑しながらニコニコと楽しそう。周囲に漂うのはどこか柔らかい空気。インタビューでは言葉を選びながらゆっくり語る林と、その場を楽しんで素直に答える小松となんともいい雰囲気だ。劇中での気合いの入った演技と、素のときでも人を惹きつける力。だからこそ多くのつくり手に求められるのだろう。

映画『恋する寄生虫』は11月12日(金)より全国公開

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