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『TAKESHIS'』寺島進 単独インタビュー

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『TAKESHIS'』寺島進 単独インタビュー

取材・文:FLIXムービーサイト 写真:田中紀子

北野作品の常連として知られ、今ではドラマや映画、さまざまな作品にひっぱりだこの寺島進。4年ぶりの北野作品出演となった彼は、北野武とビートたけし、2つの世界が交錯する『TAKESHIS'』で、売れない芸人役と気のいいチンピラ役という対照的な役を好演した。この『TAKESHIS'』が4月7日にとうとうDVD発売される。「北野武は育ての親」と話す寺島進に、北野作品そして『TAKESHIS'』での撮影秘話を存分に語ってもらった。

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4年ぶりの北野組

寺島進

Q:今回DVDで『TAKESHIS'』が発売になりますが、4年ぶりの北野組の現場はいかがでしたか?

あー、さすがだなって……。うれしかったな。なんかここ(北野組)は、おれにとってホームグランドで原点だなって感じで、帰ってくる場所だなーって、どこかで感じてたりして。昔、北野監督が言ったことなんだけれど「映画のなにがいいかって言うと、再会する場所があるってこと。その時共演して、またどこかの違う作品で出会えるのが映画の醍醐味だよな」って。凝縮された感じでの再会があってうれしかったし、また、がんばろうって気になって、尻たたかれる感じになって……。

Q:4年間、寂しくなかったですか?

なんていうのかな? 前ね、『HANA-BI』やる前に、結構怒られたことがあってね。(おれが)どっかでうまい芝居を覚えてきちゃった。どっかでうまい芝居をやろうとしている自分がいるっていうようなことを監督に言われて。あのころは、自分がどうしていいのか分かんなかったし。自分が怖かった。それで、今回も映画までの4、5年、いろいろなところで仕事してたじゃないですか。変に染まっていなければいいなと心配だった。でも、(今回の映画では)そんなこともなくちょっとホッとしたな。いままで、おんぶに抱っこで、けっして甘えているわけじゃないんだけれど、監督はいろいろ気苦労もなさったと思うんで。いわゆるやっぱり育ての親的存在なんですよ。もう、おれも40歳を過ぎていて、そろそろ親孝行をしなくてはいけないんだけれど……だから今度の映画では、あうんの呼吸で安心させたいなーみたいなのはあった。でも、なんだかんだ言ってもまだまだだな。

当日せりふがなくなっていた

寺島進

Q:今回の映画に入るときに、監督からかけられた言葉とかありましたか?

初日がね、一行のせりふだったからタカをくくって行ったんだけれど。当日そのせりふがなくなって、京野(ことみ)さんと掛け合いの漫才っぽいやり取りに変わってて。「おはようございます」って前に、いきなり(監督から)「オイ、せりふ覚えろよ! 覚えるまで待ってるから!」みたいな。

Q:北野監督の現場は、毎回そんな風に突然変わったり、台詞がその日に渡されるんですか?脚本はないんですか?

脚本はあるけれど、その日に変わって……メイクしながら覚えて。監督もせかせかしながら、メイク室に来てそばでチェックして、「覚えたか? ちょっとやってみろ!」って感じ。

Q:その場で確認ですか? 怖いですね。先生みたいな感じですね。

怖いよ! ある種先生だけどね。で、やってみて、「(京野)ことみちゃんは全然OK。寺島 はダメ!」とか言われたりしてね。(笑)

北野監督に蹴り

Q:(監督に)蹴りを入れるシーンとかありましたが、ああいったシーンは緊張しないんですか?

この役は絶対おれ!って感じ(爆笑)。蹴りをいれると、カットかかった後、スタッフが喜ぶんだよね。「寺島、ちょっと個人的な感情入っていなかったか!」とか突っ込むんだよ。監督も「なんか痛ぇんだよな。お前恨みでもあるのかよっ!」とか、言って。これで場が和むんだよ。

Q:改心の蹴りでした?

ケツに入れているよ(爆笑)。なんかいいね。あー、そういう役回りもきたか! って、うれしい役だったね。(笑)

Q:『血と骨』では(寺島さんが)ボコボコにやられたりしたじゃないですか。

うん、あれの仕返しだな(笑)。

三輪車に乗るしかない!

寺島進

Q:最初に脚本を読んだ時点でこういう映画になるって予想はつきましたか?

うん、ついた。なんか本を読んだときにね「切ねえなあ」って思った。笑っているんだけど、切なさがただよっているんだよなあ、全編に。この映画は、ほかの人がやってるお笑いとは違う種類の笑いだし。実際にこの映画観て、クスクス笑っていても切なさが勝っているんだよね。これがこの映画の力というか、監督の世界かな。

Q:寺島さんが三輪車に乗っているシーンが面白かったんですが……あれは、一瞬でしたよね。

あのときね、監督すごい疲れていて……あいさつしても監督は疲れきっていて、おれは表情とか、演技とかなんの指示も受けていなかったから、能面みたい顔して、ただ、三輪車に乗ってるしかなくて。監督からお前は何にも芸がないんだよって言われているようで。おれにはそれしかできないんだって、心が痛かった。でも、あれが一番おれに近いかも知れない(笑)。

ネットで話題に

Q:寺島さんのやくざ役がはまりすぎで、「寺島進は元やくざ」といううわさがネット上で横行しているんですが……(笑)。どうすれば、あんなにやくざ役になりきれるんですか?

みんな勝手だなあ(笑)。監督の演出だよ。北野監督の演出にのっとって演技しているだけだから。やくざの世界って精神的なホモじゃない。やっぱり、自分も北野さんと目が合った瞬間に「この人には負けた!」という瞬間もあったし。だからこそ、追い続けて来たし、男がほれる瞬間って理屈ないわけじゃん。自分の心の中のプライベートと映画のキャラクターがどこかでマッチしたからかもしれない。あれが、どうしようもない兄貴だったら、ああいう芝居になんないから。良い弟分だったねと言われるのはイコール兄貴の存在が大きいからだからじゃないかな。

役者を辞めたいと思ったこと

寺島進

Q:最近、ドラマもバラエティもやっていらしてすごい人気じゃないですか。逆に、今まで役者を辞めたいってこともなかったですか。

あるね。芸能界という世界に自分が向いてないなと思ったことがあるな。5、6年前かな?

Q:それは、最近ですよね。

でも、映画が好きだってことの方がどこかで勝っているところがあるから続けられる。いわゆる芸能界の芸能人という人とは、人付き合いが下手だから。変に属したくないっていうか、変に芸能界の色に染まりたくないっていうか。「たけし」っていうのは1人の人間じゃないですか。人としてどうあるべきかって。自分も人としてどうあるべきか、俳優としてほめられたとしても人としてどうなんだと。

Q:意外ですね。北野監督に会う前に役者を辞めちゃおうと思ったりしたことがあるのかなと思っていましたが。

あのころは、なにがなんでもやめられない。止まったら死んじゃうみたいに、走り続けていた。泳ぎ続けるマグロみたいに。走って走って、足で勝負だって思っていた。仕事して帰ってきて、どこかで仕事があるってうわさを聞いたらそこに飛んでいくみたいな生活だった。

原点は北野組

Q:東スポ映画大賞や先ほどもおっしゃった「原点は北野組!」という寺島さんの言葉が印象的ですが、寺島さんにとって北野組、そして北野監督ってどんな存在ですか?

育ての親だね。あの人と出会えてなかったら、SABUさんとか是枝さんなどのすてきな映画監督とも会うこともなかったかも知れない。現に『空の穴』の撮影で熊切監督と初めて会ったとき、監督がまだ大阪芸大に通っているころリアルタイムに『ソナチネ』を観て、名前は知らないけれどおれを好きになってくれていて、「もし監督になったら使いたいと思っていた」と言われて。『ソナチネ』はヒットしなかったけれど、映画の世界では、そういうこともあるからね。出会いという部分でお仕事やらせてもらっているところあるから、北野監督の存在はすごく大きい。


北野組の現場での話を楽しそうに話す寺島進からは「演技が好き。役者が好きで好きでたまらない」そんな雰囲気がひしひしと伝わってくる。彼の映画に対する真摯な姿勢、一本気な演技への愛情が、多くの映画ファンや監督たちから愛されるゆえんかもしれない。年とともにますますいい演技を見せてくれる寺島進。老若男女へだたりなく愛されている彼の活躍に今後も期待していきたい。

『TAKESHIS'』DVDは4月7日、バンダイビジュアルから発売。

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