ADVERTISEMENT

『怪談』黒木瞳 単独インタビュー

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
『怪談』黒木瞳 単独インタビュー

愛に翻弄(ほんろう)された女の運命を感じました

取材・文:シネマトゥデイ

海外でも絶賛され、ハリウッドでリメイクされた『仄暗い水の底から』から5年。Jホラーの鬼才、中田秀夫監督と黒木瞳が再びタッグを組んで挑戦するのは100年以上の歴史を持つ落語の古典「真景累ヶ淵」を映像化した、恐ろしくも美しい愛の物語、それが『怪談』だ。本作で、強い情念と狂気に近い愛情を持つ主人公“豊志賀”を演じた黒木。女の情を見事に演じた彼女が、作品や役柄への思いを語った。

ADVERTISEMENT

ハリウッド帰りの中田監督との再タッグ

黒木瞳

Q:5年ぶりに組んだ中田監督とのお仕事はいかがでしたか?

最高です。監督が撮影のときに、いつも頭に巻いていらっしゃるタオルは手ぬぐいに変わりましたけれど(笑)、本質は何もお変わりになっていませんでした。待ち時間には、ハリウッドでのお土産話をたくさんしてくださいましたよ。

Q:本作の撮影中、役柄については監督とどのようにディスカッションを進められていたのでしょうか。

はい。台本が完成する前から、監督と「豊志賀が新吉をとても愛していて、愛が濃いから、この映画は怖いんですよね」っていうお話をしていました。2人の出会いに関しても、何かがあるから愛してしまうのではなく、出会ったそのときから愛し合っている2人なんだというようなお話もしました。

Q:監督の演出と黒木さんの演技はどのようにシンクロしていったのでしょうか?

「好きにやってください」という演出も嫌いではないんですけど、中田監督には「こういう女だろう」という、はっきりとしたビジュアルがあるので、わたしの想像する豊志賀との擦り合わせをしていく作業をしました。もちろん、監督のおっしゃる通りにやりますけど、芝居が進むにつれて、わたしも監督も試行錯誤して……。監督って、しっかりしたビジュアルがあるにもかかわらず、ものすごく柔軟性があるんです。今回は撮影期間も余裕がありましたし、気持ちの余裕もおありの方なので、しょっちゅう話をしていましたね。

嫉妬(しっと)深い女を演じ切る

黒木瞳

Q:豊志賀の持つ、殺してしまうほどの激しい嫉妬(しっと)心と独占欲。また、深い情念に満ちた狂気に近い愛情というのは、どのように演技へと昇華されていったのですか?

あの流れだと、自然にならざるを得ないというか……。わたしは演じる上で、役柄そのものを理解することはしないんです。例えば、B型を理解してB型を演じようとするわけではなく、「もうわたしはB型だ」というところから入っていくので。理解しないままじゃないと、自分と比べてしまうでしょう? 自分と比べるとモノサシが自分になってしまいますので……。ですから演技というよりも、自分はそういう女なんだ、豊志賀なんだという、思い込み、勘違いと申しますか。勘違いの集中力というか(笑)。もう本番はそれだけですね。

Q:豊志賀と新吉のラブシーンはとても美しかったですが、撮影はどのように進められたのでしょうか?

“抱擁”が様式美というか、カメラを通して一番きれいな形を映し出さなければいけません。特に、この作品は古典ですから、リアルであってもいけないし、でもうそであってもいけない。ですから二人の“抱擁”をいかに美しく観せるか、現場で監督とカメラマン、そして照明の方と、かなり検討しました。

運命に翻弄(ほんろう)された豊志賀

黒木瞳

Q:この『怪談』というのは、とても有名な日本の古典ですが、すでに全世界での公開も決まっています。外国の観客の方々からはどのようなリアクションが返ってくると思いますか?

海外の方にはちょっと理解しにくいかもしれませんが、「親の因果が子に移り……」のようなところが新鮮に見えると思います。また、「死んでもなお愛している」という斬新さを面白がっていただければいいなと思っています。それは海外の方だけではなくて、日本の皆さんも、そのように新鮮に受け止めてくださったらいいですね。

Q:豊志賀だけではなく、日本の怪談に登場する女性というのは何かしら悲しさや因縁があると思うのですが、女性として、怪談話に出てくる女性像をどのように感じられましたか?

こういう話って、面白く、怖く、美しく描かれていますよね(笑)。演じる前は、儚(はかな)いな、と思っていました。不幸といいますか……。ですが、ここまできちんと演じてみると、不幸ではなくて、どうしようもない運命に操られてしまっただけで、そのときはきっと充実した人生を送ったのだろうと思いました。豊志賀になったことで、彼女の息づかいを感じ、悲しいだけではない彼女のひたむきな姿勢を感じました。


黒木瞳

こちらの目を真っすぐに見つめ、「わたしは豊志賀になったんです」と言い切った黒木からは、思わずゾクッとするような役柄への思いが感じられた。『怪談』でわたしたちが目にするのは、黒木瞳という女優ではなく、新吉という男と因縁によって結ばれ、死んでもなお彼を愛し続ける女“豊志賀”そのものだ。スクリーンから聞こえてくる彼女の息づかいとともに、女の情念、そして狂おしいほどの愛を感じてもらいたい。

(C) 2007「怪談」製作委員会

『怪談』は、8月4日より丸の内ピカデリー2ほかにて公開。

最新インタビュー

インタビュー一覧 »

ADVERTISEMENT