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『すべては海になる』佐藤江梨子&柳楽優弥 単独インタビュー

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『すべては海になる』佐藤江梨子&柳楽優弥 単独インタビュー

本は自分の好きなタイミングで、自分の好きな世界観に入っていける

取材・文:鴇田崇 写真:尾藤能暢

荒廃した家庭環境から逃げ出すように読書を心の支えにしている高校生と、本に救われた過去を引きずっている女性書店員が出会い、心の交流を深めていくラブストーリー『すべては海になる』。約2年半ぶりに映画復帰した柳楽優弥と、本格派女優として躍進を続ける佐藤江梨子が共演を果たし、本でつながっていく男女の関係や心の機微を丁寧に描き出す。本作でダブル主演を務めた二人が、映画のことから結婚観のことまで、本音トーク全開で楽しく語ってくれた。

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タイトルの謎、どうして海でのロケがない!?

佐藤江梨子、柳楽優弥

Q:『すべては海になる』というタイトルがとても印象的です。最初にどんなことを感じましたか?

佐藤:詩的なタイトルなので、わたしは純文学みたいなストーリーを想像していました。すごくまじめな内容だろうと思って原作を読み始めたら、冒頭からセクシーでびっくりしましたね(笑)。

柳楽:僕は文学少年が出てくるような物語だとは思っていなかったので、スキューバダイビングの話かと思っていました(笑)。

佐藤:イルカに乗っちゃうような!(笑)。

柳楽:本当に海で撮影する映画だと思っていました(笑)。

佐藤:やっぱりハワイでロケだよね~。したいね~。

Q:海というのは死を象徴しているそうですが、この作品にかかわって改めて何を思いましたか?

佐藤:現代はメールなどのツールが発達しているので、文章だけにおぼれて相手のことが見えなくなっていることがあるように思います。わたしは読むことも書くことも好きですし、文章で救われることがたくさんあるだろうとは思いますが、人は人とちゃんと向き合って、行動しないと本当は何も生まれないような気がしました。そういうことを今回の映画で再確認しましたね。

柳楽:僕は読書をほとんどしない人間なので、この作品にかかわって本をもっと読もうと思いました。でも、まだ一冊も読めていないですけど(苦笑)。

佐藤:勝新太郎さんの「俺 勝新太郎」を柳楽さんに贈ろうと思っていましたが(笑)、まだ贈っていないです。自伝本がお好きなんですよね?

柳楽:ああ、はい。自伝本は読みますね。アーティストや俳優の人生に興味がありますが、本当に興味がわかないと読まないんですよ。いいことばかり書き過ぎていると腹が立つこともありますが、興味がある人物の本なら乱読すると思います(笑)。

カンヌ国際映画祭でサトエリを見た!

佐藤江梨子、柳楽優弥

Q:柳楽さんはカンヌ国際映画祭で佐藤さんを見かけて、見とれてしまったという情報は本当ですか?

柳楽:それは間違いないです。ただ、『誰も知らない』のころはまだ若かったので……。いや、今も若いですけど(笑)。

佐藤:十分若いよ!(笑)。

柳楽:10代って、好きな人がコロコロと変わるじゃないですか(笑)。

佐藤:あらららら? わたし、嫌われちゃったかな?

柳楽:中学生ぐらいの感覚での、あこがれの人という意味です(笑)。当時、佐藤さんが大好きだったので、そのとき会えたことがうれしかったですね。

佐藤:「あっ、サトエリだ!」って声が聞こえて(笑)。わたしのことを知っている人がカンヌにいるんだって感動しました(笑)。

Q:念願かなって今回の共演が実現して、改めて同じ俳優としてすごいと感じた点はどこですか?

佐藤:集中力がすごいと思いました。わたしは役から自分に一瞬で戻るのが好きですが、柳楽さんはだんだんと役に変身していく感じがしました。ストイックな印象を受けましたね。もちろん最初から制服が似合っていましたが、顔がどんどん小さくなっていく気がして俳優だなあと(笑)。

柳楽:脚本を読んだときにセクシーなシーンが多かったので、女優さんは難しくないのかなって、俳優をやっていなくても思うじゃないですか。なのに、普通にこなしてしまうことがすごいと思いますし、僕が言うのも何ですけど、後輩の俳優として佐藤さんのプロ意識を学びましたね。

無理に他人に合わせる必要はないが、家族の会話は超重要!

佐藤江梨子、柳楽優弥

Q:ヒロインは本に救われた過去がありますね。佐藤さんご自身に似たような経験はありますか?

佐藤:わたしは転校を繰り返していたので、中学生のころは友達が割りと少なかったんです。クラスで地味に浮いているかな~と、しょっちゅう感じていました。だから、本を読むことで救われたことは多々ありましたね。友達付き合いの場合、自分の都合に関係なく相手に合わせないといけないことがあるじゃないですか。でも、本は自分の好きなタイミングで、自分の好きな世界観に入っていける。実は今でもそう思うことがあって、もちろん、社会生活に合わせることは大事ですけど、人に合わせることって、そんなに重要なことなのかと思うことはあります。

柳楽:僕も他人に無理に合わせない人なので、共感できました。

佐藤:ありがとう! そんな感じがしていたよ(笑)。

Q:また、柳楽さんが演じた光治は家庭環境が荒廃していますよね。これから新生活が始まる柳楽さんとしては、あんな家庭にはしないぞ! という決意みたいなものが生まれませんでしたか?

柳楽:いや、別に光治の場合もいいと思います(笑)。離れ離れになってバラバラになるのは寂しいと思いますけど、会話がなくても通じるものって家族にはあるじゃないですか。会話していなくても、お互いを理解している関係があればいい。ちゃんとまとまっていればいいと思います。

Q:とはいえ、ブログでは家族で会話する際のネタを探しているようなエントリーがありましたが。

柳楽:あ、そうですね(笑)。それは自分一人で考えて自分で行動してしまうと、気付けないことも多いので……。だから、家族によく相談します。三人寄れば文殊の知恵ということわざがありますけど、何でも一人で決めないでと言われたので、何でも相談するようにしています。

佐藤:いいなあ。わたしも家庭がほしいと思いました。結婚したい! でも、相手がなあ(笑)。

自分たちが楽しめなくては、どんな棚を作っても響かない

佐藤江梨子、柳楽優弥

Q:さて、佐藤さんが演じたヒロインの夏樹は劇中で本屋さんに訪れる人々の心を癒やす、オリジナルの本棚を作って大反響を呼びますが、お二人はどんな棚で人々の心を癒やしてみたいですか?

佐藤:棚作りを自分の仕事に置き換えて考えると、自分がまず楽しめないとダメだろうと思いました。自分が本当に楽しめていれば、それがお客さんにも伝わると思います。きっと夏樹も最初は趣味で楽しみながら棚を作っていただけだと思います。結果的にその楽しさがお客さんに伝わったのだと思いますね。

柳楽:僕は好きな俳優のDVDの棚とか面白そうなので作ってみたいですね。ロバート・デ・ニーロが出ているDVDだけの棚とか、自分の好きな俳優のDVDの棚を作りたい。僕は、はやっているものが好きじゃないんです。はやってはいないけど、実力のある人ってたくさんいるし、そういう作品もたくさんある。俳優でも何でも本物の棚を作って、多くの人に本物を見てほしいと思います。

佐藤:そうそう! 柳楽さんが面白いと薦めてくれたので、映画『イングロリアス・バスターズ』を観ました! 面白かった~。なぜか泣いてしまって(笑)、人を殺してはいけないなと思いましたね。

柳楽:僕、そんなこと言いましたっけ? 僕じゃないですよ、たぶん。だって観ていないから(笑)。

佐藤:え!? ごめんなさい! 言ってなかったっけ? ごめんなさい! ともかく(笑)、この『すべては海になる』は現状に悩むすべての人に観てもらいたいと思います。どんな世代の人たちにも悩みがあると思いますが、この映画を観て明日を頑張ろうと思ってくれたらうれしいです。


取材部屋で会うなり「結婚おめでとう!」「ありがとうございます」と気さくに近況を報告し合った佐藤と柳楽は、『すべては海になる』での共演を経て信頼関係を強化した戦友のようにも見えた。ヒロインと同じように佐藤は読書を通じて救われた経験があり、同じく柳楽も映画に救われた経験があるというが、そのことはこの映画のテーマにリアリティーを与えていると同時に、誰もが共感する普遍性を有していることを物語っているかのよう。人生で一歩前に進めないのは自分だけではない。そう感じさせてくれる本作を観れば、きっと勇気をもらえるはずだ。

映画『すべては海になる』1月23日より全国公開

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