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『ニワトリ★スター』井浦新 単独インタビュー

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『ニワトリ★スター』井浦新 単独インタビュー

ようやく果たせた亡き友への誓い

取材・文:シネマトゥデイ編集部・森田真帆 写真:上野裕二

元板前、大阪の黒門市場にある巨大アート建物「道草アパートメント」のオーナー、映像作品の原案、音楽家など多岐にわたって活動するかなた狼監督が、自身の同名小説を映画化。東京の片隅にある風変わりなアパートを舞台に、男たちの友情、夢をアニメパートあり、笑いあり、涙ありの変幻自在のタッチで描いた『ニワトリ★スター』で、大麻の売人として生計を立てながら人生を模索する主人公にふんする井浦新。本作を「とても特別な作品」とする井浦が、作品に込めたアツい思いを語った。

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監督と引き合わせてくれた亡き友人の存在

井浦新

Q:深い余韻が残る強烈な作品でした!

映画の魅力を語るときに、よく「言葉で表せない」という表現がありますが、この映画に関してはいい意味で詰め込まれすぎていて、昭和のいい時代の映画ってこうだったんだなって思うんです。まるで“闇鍋”みたいな。

Q:井浦さんご自身は、特にどんなところに魅力を感じますか?

実は、いろんな伏線が張られているんですが、最終的にはものすごくシンプルで、誰もが持っているものに着地する。途中、目を背けたくなるような暴力や、社会や人間の汚い部分も見せつけられます。でもだからこそ、観客も小さな小さな希望にたどり着けるんじゃないかなと思います。

Q:かなた狼監督との出会いを教えてください。

僕らには共通の仲間がいて、監督と自分を引き合わせてくれたんです。でも僕と監督が出会ったときには、彼はもうこの世にいなかった。それが、ミュージシャンの TERRY THE AKI-06 で、映画の最後には彼に捧げるメッセージが流れます。もちろん初めて会ったとき、かなた狼はまだ映画監督ではなかったんですが、そのときに映画を作ろうと思っていることを僕に話してくれた。亡くなった TERRY THE AKI-06 への気持ちに決着をつけなければと強く感じていたので、「もしも作ることになったら教えてほしい」と約束していたんです。だから、数年後に実現できることになったと聞いたときは本当に嬉しかった。ゼロから映画が誕生していく過程を見てきたことは大きかったです。

成田凌との10日間にわたる同居生活

井浦新

Q:相棒役の成田凌さんとの相性も抜群でしたね!

この映画は僕が演じる草太を通して描かれる楽人の物語、という体になっているので、楽人を誰が演じるのかというのは監督にとっても、自分にとっても大きかった。草太と楽人の関係を作り上げる上で、まず大切になるのは互いの壁を取り払うことだったので、撮影の前に凌と一緒に過ごした時間はすごく大きかったと思います。

Q:成田さんと過ごした時間とはどのようなものだったのでしょうか?

役者としてはとても贅沢な撮影の方法で、クランクインの前に10日間、凌と二人でロケ地になった大阪のアパートの一室で共同生活をしたんです。そこで生活したことで、劇中の二人へと変わっていった。だから、いつどんなシーンの撮影が始まってもスタンバイできていて。映画の世界の一部になれるなんて、滅多にないことなのでとても嬉しかったです。

自分をさらけ出した“泣き”の演技

井浦新

Q:監督とは撮影中どんな話をしていたのでしょうか? 印象に残っているアドバイスはありますか。

クランクイン前から、「今までの井浦新の芝居を一ミリでも出したらダメだから」って監督から言われていたんです(笑)。だから作品の住人になることは当たり前で、自分が見たことのない自分の中の自分をさらけ出すしかなかった。だから草太を見ていると、自分ではないけど、どこか自分を見ている感じがして気恥ずかしいです。

Q:確かにこれまで観てきた井浦さんと印象がかなり違いました。泣きのシーンは特にすごかったですね。

あのシーンは、芝居ではできなかったと思います。芝居で、自分の心をあそこまで揺さぶることができる俳優にはまだなれていないと思うし、もし芝居をしてしまったら、監督に刺されるかもしれないと(笑)。この撮影が近づくにつれて緊張も高まって監督と「もうすぐだね」とカウントダウンしていましたし、「この映画が観客にどう伝わるかは、おまえがどう泣くかで全部変わる」って圧力をかけられていましたから(笑)。

Q:面白い監督ですね。

かなた監督にとっては初めての映画ですが、映画学校等で学んだものではなく、彼のスタイルって全部もともと持っている感覚なんですよね。世界観はもちろん、撮影の方法にもすごくオリジナリティーがある。

来る球は全部打っていきたい

井浦新

Q:ここのところ映画やテレビドラマなど出演作が続き多忙を極められていますが、どのようにバランスをとっているのでしょうか。

「これに出たい」とか、「テレビには出ない」とか、そういう妙なこだわりは20代でやめました。今は来る球を全部打っていきたい気持ち。何の計算も狙いもないんです。テレビドラマが放送されるときに映画が公開されたり、たまたまタイミングが重なっているだけで。こういう偶然っていうのは、狙ったりすると失敗するだろうなって思います。

Q:テレビドラマと映画、スタンスや撮影現場での居方の違いなどありますか?

極端な言い方をすると、やっていることはテレビドラマも映画も一緒だと思います。カメラの前で芝居をする。作品の中で生きるということ。でも確かに違うところもあります。ただ、それは役者としての楽しみ方の違いだと思うので、どちらかを否定するというのはナンセンスかなと。って、今はそう思いますけど、昔は何かいろいろ変なこだわりを持っていましたね(笑)。

Q:若さゆえですか?(笑)

そう。でもそれって経験していないからわかっていなかったんだと思います。かといって、経験していない強さというのもある。でも若い頃から変わっていないことは、自分の演じることへのスタンスだと思っています。目の前にある役を全力で演じるという。

Q:井浦さんにとって理想の撮影現場とは?

生理的に好きな現場ってあるんです。皆が情熱を持って、集まって一つの作品を作っていく。そういうふうに作る人たちの“純度”が高い現場は、テレビも映画も一緒で、心地いいんですよね。だからこそ、いつもこういう現場を求めていたし、出会えたときは本当に嬉しいと思う。


井浦新

一見クールに見える井浦だが、言葉を紡ぎ始めるとせきを切ったように作品への思いがあふれ出してくる。それは監督への思いであり、友人への愛情であり、作品への愛だ。スクリーンから熱のようなものが伝わってくるのは井浦をはじめ、監督や共演者の成田凌の思いが作品全体に浸潤しているからなのかもしれない。「どんな球も全力で打っていきたい」という井浦の言葉には、「どんな役も愛して演じていきたい」という俳優としての愛が詰まっているように感じられた。

(C) 映画『ニワトリ★スター』製作委員会

映画『ニワトリ★スター』は3月17日より公開

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