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『いぬやしき』木梨憲武 単独インタビュー

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『いぬやしき』木梨憲武 単独インタビュー

15歳の娘と、口げんかは日常茶飯事

取材・文:イソガイマサト 写真:上野裕二

「GANTZ」などで知られる奥浩哉の人気コミックを、「GANTZ」の実写版を2部作で成功させている佐藤信介監督が映画化。その『いぬやしき』で、16年ぶりの主演映画となる木梨憲武は、余命宣告を受けたその晩、謎の墜落事故に巻き込まれて機械の身体になってしまう初老のサラリーマン・犬屋敷壱郎になりきり、新宿上空250メートルでの空中戦の視覚化や過激なアクションにも挑戦! その撮影を木梨自身が振り返った。

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老けメイクをしてもしなくても変わらない

木梨憲武

Q:人気コミックの映画化ですが、出演のオファーがあったとき原作はご存じでしたか?

事務所のスタッフや家族は全員知っていたけど、僕だけ知らなくて。でも、みんなに「面白いよ」って言われたので、当時出ていた7巻まで一気に読んだんです。そしたら画のタッチもストーリーもすべて面白くて! どんハマりして「やるやる」って言いました(笑)。

Q:ストーリーはどこが面白かったんですか?

我々のようなおっさんというかジジイがヒーローになるところですね。家族にも会社にも見捨てられ、「生きていてももうやることね~な~」と思っていたジジイがやることを見つける展開がいいなと思って。「パパ、『いぬやしき』やるの?」っていう子供たちに「やった方がいい?」って聞いたら、「やった方がいいでしょ」って食いついてきたので、これは決まりだなと思いましたね。

Q:プロデューサーや監督には「自分をなぜ犬屋敷役に選んだのか」聞きましたか?

「世にも奇妙な物語 25周年記念!秋の2週連続SP~傑作復活編~」の「思い出を売る男」で、記憶を売って生活しているジジイを演じたことがあって。それをプロデューサーや原作者の奥先生がご覧になったことから、僕の名前がジジイ選抜に挙がったみたいです(笑)。

Q:16年ぶりの主演映画でジジイの犬屋敷壱郎を演じるにあたって、準備したことは?

普通ならジシイに見えるようにしわを増やしたり、痩せこけた感じにするんだろうけど、僕も56歳で犬屋敷の年齢とほぼ変わらないからジジイの気持ちは分かるし、鍛えなくても、普段通りに飲み食いしていても大丈夫で。何の準備もなく、ただ遅刻しないように現場に行けばいいというスタイルでした。

Q:でも、特殊メイクはしたんですよね。

まあ、そうですね。首や目の周りのしわを増やして、顔や手にシミをつけたけど、特殊メイクを落としても大して変わらないんですよ。夜、「変わってね~じゃん」って言いながら帰って(笑)。翌日また同じメイクをするという日々を2か月間ずっと送ったのに、完成した映画を観たらそんなにアップがないし。

Q:けっこうアップありましたよ。

それはCGじゃないかな? 要所要所で僕と「デジタルヒューマン」というフルCGの犬屋敷、スタントマンを使い分けているんだけど、その違いが演じた僕でも分からない。飛行シーンはほぼCGだし、このシーンは俺も撮ったけれど、こんな動きはした覚えがないなというカットもありましたから。

撮影の合間の待ち時間もやることがいっぱい

木梨憲武

Q:木梨さんは、実際には何も起きていない状況で芝居をしていたわけですものね。

CGが絡むところは佐藤信介監督にiPadで絵コンテを見せてもらってから撮影するんですけど、「顔がいま落ちます」「いま飛んでます」という監督の説明が的確だから「分かりました。こっちもCG男優1本でやっていて、第1回CG男優賞をいただく予定なので頑張ります」と言って挑みました(笑)。

Q:CGカットは1年半後に合成されるわけですし、現場では想像力が必要でしたか。

いかに感じを出すかってことだけですね。それに頭、顔、身体のすべてにCGを作る際の目安になるマーカーを貼って撮影するので、生身の俺は使われないことが多かったという。目安男優、あるいはマーカー男優として、リアルな感じを出してCGの目安を作るのが俺の仕事だったわけです。

Q:機械の身体になって驚いていると、奥さんが部屋のドアを開けた瞬間に元の身体に戻る表情やタイミングは絶妙でした。

あの撮影も、現場では佐藤監督の説明通りにやっただけで。「ドアの方を振り向いた瞬間に元に戻りますよ。よ~い」という声でカメラが回り出しますから、「了解」ってやるしかない(笑)。空を飛ぶシーンも200数カットある絵コンテ通りに「これを1秒撮ります」と言われてやったし、「同ポジションの画を違うカメラで撮るので20分待ってください」と言われたときは、1秒撮っては20分待つということの繰り返しでした。

Q:待つ作業もしんどいですね。

ところが、私たち俳優はプロデューサーや宣伝のスタッフと一緒にその撮影の合間に焼き鳥や餅を焼いたり、カレーや豚汁を作ったり、やることがいっぱいあったから忙しくて。友だちが陣中見舞いに来てくれるときは差し入れがダブらないように調整したし、いい仕切りをしていたと思います(笑)。

危険なアクションも「自分がやる」と直訴

木梨憲武

Q:アクションシーンでいちばんハードだったのはどこですか?

カメラがあるところに肩から入っていくカットがあったときに、思いっきり飛び込んでいったんです。そしたら「いまの角度だと前のカットとつながらない。もう1回お願いします」って言われて。砂利で擦れて身体が傷ついていたから、そのときはすごくショックでした。56歳は傷がかさぶたになるまでに時間がかかるし。でも、傷はカメラに映ってないから、マキロンからオロナインの流れでもう一度やりました(笑)。

Q:年齢的にもアクションは辛いですよね。

映画の前半に出てくる犬屋敷が撃たれて階段の方にバーンって飛ばされるシーンでは、スタントマンの方で「OK」が出たんですけど、その人は僕よりも大きくて鍛えた身体の人だったから監督に「やらせてください」とお願いしました。しかも「パッドもサポーターもいらないです。リアルな自分を見てもらいたいので」と言って。そこまで強く主張したのは、横でドキュメンタリー(メイキング)のカメラが回っていて、「木梨がやると言い始めている。スタジオのみんなは緊迫感を持った」というナレーションと一緒に映像が浮かんじゃったからなんですけど(笑)、真剣にバーンって飛ばされたら一発で「OK」が出たんですよ。しかも、佐藤監督はスタントマンのではなく、僕のOKカットを使ってくれたんです。あれは嬉しかったですね。次の日、少しむち打ちになったんですが人には言えず、数日黙って治しました(笑)。

Q:犬屋敷と壮絶な空中バトルを繰り広げる、高校生・獅子神皓に扮した佐藤健さんとの共演はいかがでしたか?

「仮面ノリダー」をかつてやっていた僕と「仮面ライダー電王」をやっていた佐藤くんとのノリダー、ライダー対決になったわけだけど、佐藤くんは役に向かう姿勢もお芝居の仕方もすてきでした。佐藤監督とも「このセリフはない方がいいのでは?」「ひと言入れた方がいいんじゃないですか?」というやりとりを丁寧にしていて。そんな佐藤くんを見て、僕もちょっとまねをしたくなりましたね(笑)。

Q:犬屋敷と獅子神とのバトルもすごい迫力でした。

現場では監督の説明を聞きながら、感じを出してやるしかないし、プレイバックでチェックした後に「ウワ~OK!」という声が上がるんだけど、その「ウワ~OK!」の意味を佐藤監督しか分かっていないというね(笑)。でも、完成した映画を観たら、説明されていた通りのスゴい画になっていて。初号(最初の完成版)ができた後もクオリティをさらに上げるために70カットも修正したというから本当にスゴいですよ。

Q:犬屋敷と年齢が近いと最初にご自分でも言われましたが、木梨さんと彼との共通点は何かありますか?

僕にも15歳の娘がいるんですけど、「洗濯物を一緒に洗わないで」とか「私のタオルを使わないで」って言われるし、「『おはよう』って言え!」「言ったよ」「言ってねえだろ、この野郎!」といった口げんかは日常茶飯事で。ただ、自分の世界に閉じこもって娘に強く言えない犬屋敷と違って、僕はガツガツ戦うタイプ。木梨家の主(あるじ)として、少し笑わせたら勝ちというゲームをやりながら突き進んでいますからね。例えば食事に行くときに電柱にぶつかって転ぶ自分を演じると、最初は引いてるけど、7回目ぐらいで「もうやめて」って半笑いになる。そうしたら俺の勝ちなんです。うちの妻だけは「転ぶの上手いね」って褒めてくれるんです。それがある限り、日々戦い続けますよ(笑)。あ! そうだ! 50代、60代が映画館になかなか行かない世代と聞きました。私と同じジジイ世代の方もこの映画を観ていただいて「元気出して行くべ!」を感じていただきたい! いろんな世代の方々、ちょっと観てみてくださーい!


木梨憲武

質問をすると、冗談なのか本当なのか分からない笑えるエピソードを時おり挟みながら、真摯(しんし)に答えた木梨憲武。その素顔はテレビで見る彼とまったく変わらなくて、おだやかで、サービス精神が旺盛で遊び心にあふれている。そんな木梨の“人間力”が、映画『いぬやしき』に温もりとリアリティをもたらしているのだ。

映画『いぬやしき』は4月20日より全国公開

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