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『OVER DRIVE』東出昌大 単独インタビュー

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『OVER DRIVE』東出昌大 単独インタビュー

仕事だから苦しいのは当たり前

取材・文:高山亜紀 写真:高野広美

公道を全速力で走り抜ける過酷な自動車競技、ラリー。そのラリーに、時にぶつかりながら、互いの信頼をかけて臨む兄弟の姿を描いた『OVER DRIVE』。メカニックとして、ラリーカーと弟の命を預かる兄、檜山篤洋を演じた東出昌大が、弟である天才ドライバー、直純を演じた新田真剣佑との共演の印象、『海猿』などで知られる羽住英一郎監督の日本映画らしからぬスケールの撮影現場の話、さらには男同士ならではの兄弟エピソードをも明かした。

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マシーンが生き物のように感じられた

東出昌大

Q:ダイナミックなスケールの作品ですね。

日本映画ではなかなかないスケールですよね。サービスパークといっても、読者の方には何のことかわからないと思いますが、ラリーの競技会場には、車両の修復やセッティング変更を行う場所があるんです。その会場をはじめ、車が爆走する公道、首都高や五箇所村の茅葺屋根などが完全に再現されているのを見た時には僕も衝撃を受けました。

Q:もともとラリー競技に興味はあったんですか。

なかったですね。「ラリーってなんだ?」って思ったくらい(笑)。最初は興味を持つことも難しかったんですが、そこは男子脳といいますか、パーツや工具の名前などを覚えていくうちにメカが遠い存在ではなくなって、だんだん愛着がわいてきたんです。ラリーカーって、ひたすら速く走るためのものなので、簡素な作りになっていて、エンジン、ターボチャージャー、アクチュエーターが、まるで心臓や肺といった臓器みたいに見えて、マシーンを生き物のように感じるようになってから、興味の幅が広がりました。

200%どんな人が観ても胸躍る作品

東出昌大

Q:ひとつひとつのシーンが華やかで、東出さんと真剣佑さんの檜山兄弟なんて、かっこいい人たちがよりかっこよく見えます。

羽住監督の映画に出てくる男性たちは画面のなかでどんとした印象を残していて、観客もそこに感動する。わかる人にだけわかる作品とは真逆ですよね(笑)。今回は200%、どんな人が観ても胸躍る作品なので、「そこに合ったお芝居をしたい」というイメージが自分のなかにはありました。ただ、僕が演じることの意味として、多少聞こえづらくても、感情のままにセリフを言ったりすることもありました。リアリティを追求すると、サービスパーク内でメカニックがあれだけ声を荒らげることはプロの世界では基本的にないと思うんです。共通認識で直すべきところはみんな、わかっていますから。でも、そこは芝居なので、僕の得意不得意を置いておいて、好きな方でちょっとやってみようとしたり、やっぱり違ったかなと思ったり。そういうことの連続でした。

Q:違ったのかな? というのは、どんな時に感じるんですか。

順撮りではなかったので、台本通り読むとするっと流れているシーンが、その時の感情のまま演じてしまうことで、まだ撮っていない前後と繋がるだろうかということが不安でした。「もしかすると、台本のいいところを削ってしまうかもしれない。でも、僕は今この瞬間、こっちの方がいいと思ってる」という気持ちを信じたくて、博打を打ってしまうんですけど(笑)。自分のなかで、そんなせめぎ合いがあった気がします。

新田真剣佑とは同じ系統の顔つき!?

東出昌大

Q:弟役の真剣佑さんとはどんな風に仲を深めていきましたか。

周りからも顔が似ていると言われて、すぐ仲良くなりました。たぶん濃さの系統が古モンゴロイド系で同じなんでしょう。見た目で得しました(笑)。まっけんの方が人間的に秀でていて、しっかりしている部分もありますが、約10歳、年齢が離れている分、かわいらしいなと思うところもありました。今回は監督の「みんなでご飯を食べろ。一緒にバカなことをしろ」という演出から、撮影期間中はすべての共演者と濃密な時間を過ごしていたんです。彼だけでなく、みんなと腹を割って、話し合える好条件のもとにいました。

Q:いろいろな撮影現場を経験していると思いますが、そこは羽住組ならではの演出なのでしょうか。

今回はラリーで優勝するという一つの目標に向かっているチームの純粋さがすごく作品に影響すると思うんです。だからここまで仲良くなれたし、仲良くなる必要があったのだと思います。これが敵対している役柄だったり、チームが違ったり、あるいは以前出演させて頂いた黒沢清組の『クリーピー 偽りの隣人』みたいな作品の場合は、そこまで話し合ったりはしてないです。

Q:主演という立場だとまたみんなの士気を高めなければならないこともあるでしょうね。

チームでの自然な呼吸というのでしょうか。自分が一番年下の時は後輩だから、素直に話を聞こうとか、撮影からは外れたところで、チームのなかでの役回りが生まれると思うんです。ましてや、時間の少ないなかで距離を縮めないといけない場合もあるので、その時は普段の東出でもない。かといって役でもない。そういう時間の過ごし方をすることが現場では多いですね。特に今回のような合宿状態だと糸が途切れることがあまりないので。充実はするんですけど、苦しい時もありました。でも仕事だから苦しいのは当たり前。今回はそういう環境がむしろ、ありがたかったです。

Q:東出さんでも役柄でもない。では、いまこうして取材している時間はどういう状態なんでしょうか。

(「アルジャーノンに花束を」などの作家)ダニエル・キイスさんの本を読んだ時に、人間というのは二面性、三面性があった方が精神的に健康だって書いてあったんです。僕はたぶん、三面どころか四面、五面もあると思います。今回の撮影中に見せた東出昌大と檜山篤洋、家に帰っての自分といましゃべっている自分は全部、違うように思います。基本的にひねくれていて、寝言では言うかもしれないですけど、人に本心は言わない。思っていることを人に伝えたくない……って言ったら、すごく矛盾してますね。でも、これまで話していることに関して、嘘は言ってないです(笑)。

初めて知った長男のしんどさ

東出昌大

Q:この作品に参加して、何か新発見したことはありましたか。

長男のしんどさを初めて知りました。今回のように兄弟の絆を描いて、ここまで兄の重責を感じる作品は初めてだったので、もし自分が長兄だったら、これは消耗するだろうなと感じました。

Q:言わなくても語り合える、信頼し合える男兄弟の関係性には「あるある」と思いましたか。

ありますね。でも僕は逆に兄弟でも、もっと言葉を交わしてもいいのにと思う時もあります。この前も兄と初めて二人きりで食事をしたんですが、5分で話すことが尽きちゃって(笑)。それでも、話さなくても、後々、答えが返ってきたリ、すぐにはわかり合えなくても家族や兄弟には切っても切れない絆があるのだと思います。この作品においてもそう感じたし、実生活でもそういう家族関係だと思っています。

Q:いま月9では「コンフィデンスマンJP」が放送中ですね。新作映画『菊とギロチン』にもご出演されています。さまざまなジャンルでいろいろな役をまんべんなくなさっている印象があるのですが、作品選びはどのようにしているのですか。

いままではマネージャーさんと相談しながら決めてもらっていました。自分もアンテナを張って、できるできないだけでなく、できない場合もどういうやり方だったらできるのかとかも考えていきたいです。もちろん、マネージャーさんにかじ取りしてもらうことは大切ですけど、自分も自分の頭で考えながら、仕事に取り組むことも大事だと思うようになりました。年齢も年齢だし、俳優業を始めて6年も経つので、言われるがままではなく、よりよい作品、よりよいお芝居、活動のためにそういうステップを踏んでいきたいです。


東出昌大

後輩に対して、「幸せになって欲しい」と語るなど、デビューから6年経っても、普通の感覚を持ち続ける東出昌大。一方、役者としては6年とは思えぬ軌跡を辿った。世間を驚かせた「ごちそうさん」から『寄生獣』の変身、はまり役だった『聖の青春』の羽生役など、列挙すればきりがない。本作でもこれまで見せたことのない演技に挑戦。自身で考えて今後はどんなラインナップで俳優道を突き進むのか。これからも注視し続けたい。

ヘアメイク:石川奈緒、スタイリスト:檜垣健太郎

(C) 2018「OVER DRIVE」製作委員会

映画『OVER DRIVE』は6月1日より全国公開

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