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『焼肉ドラゴン』真木よう子 単独インタビュー

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『焼肉ドラゴン』真木よう子 単独インタビュー

今までと違う真木よう子を見せたかった

取材・文:森田真帆 写真:高野広美

昭和の時代、関西の片隅で、騒がしい常連客たちが集う小さな焼肉店を営む家族の姿を、ダイナミックに描いて大きな話題を呼んだ自身の舞台を、鄭義信が映画化した『焼肉ドラゴン』。本作で、妹の婚約者に想いを寄せながらも、その気持ちを胸に秘めたまま家族を支える優しくたくましい長女の静花を演じた真木よう子が、これまで演じたことのなかった役柄への挑戦を語った。

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今までのイメージと違うからこそ演じたかった役柄

真木よう子

Q:撮影前から演じるのが楽しみだったシーンはありましたか?

梨花(井上真央)との言い合いのシーンは結構楽しみにしていたかも(笑)。真央ちゃんも、すごくまっすぐぶつかってくれるから、その辺がどんな風になるかなって楽しみでしたね。例えば、静花はどのくらいまで怒りを出したほうがいいだろうかとか考えたりして。

Q:今回の静花の役はすごく意外な役柄でした。

やっぱりどちらかというと私は梨花っぽい性質だとは思うんです。でもそこは逆に、静花を演じられるからこそ、この映画に出演したかったということもありましたね。実際は、ずっと我慢していたから辛かったけど(笑)。

Q:やっぱり真木よう子が在日コリアンの役と聞くと、どうしても『パッチギ!』のガンジャを思い出してしまって。あの役がとにかく強烈でしたから。

そうですよね……もうどこに行ってもそれを言われます(笑)。私にとっては在日コリアンだからどうこうという考えはないのですが。どうしても『パッチギ!』や『SP』で演じたタフな女性っていうイメージがあって、それはそれですごくありがたいんですが、同じような役にはあまり惹かれないし、きっと皆さんも見飽きるんじゃないかなって思ったので静花みたいに自分とは全く違う役はすごく楽しかったですね。

撮影現場に立って感じた、静花が抱える本当の苦しみ

真木よう子

Q:静花を演じてみて、大変だった部分というのはどんなところだったのでしょう?

やっぱり現場に入ってみて、セリフを静花として言うことで重さを知るというか。「こんなに辛いんだ」ってジワジワきたりとか。足が悪いことも、現場に入る前はどんな感じで引きずればいいだろうってくらいに考えていたことが、役に入っていくにつれて、自分が引きずる足がどんどん重たくなってくる。それで彼女がこの重みを抱えて、苦しさと一緒に生きているということがわかってきたんです。ずっと辛かったわけじゃないけど、やりがいがある役でした。

Q:彼女の芯の強さが、真木よう子の持つ強さと共通しているところはありますか?

私自身、長女なので、家族や、自分の弟のことを大切に思っているところっていうのは共感できたんです。自分の幸せよりも、家族が幸せになってほしいっていう気持ちのもとになっている強さというのはすごく感じましたね。ふとした仕草なんですけど、アボジ(お父さん)が戻ってきた時にさりげなくタオルを渡したりするのが静花らしいなって。

Q:母親からあることで怒られるシーンがすごく切なかったです。

あのシーンは、台本もすごくシンプルでただセリフが書いてあるだけだったんです。ト書きがあるわけでもなかったのですが、セリフを言っているうちに自然と泣いてしまって。オモニ(お母さん)もすごい迫力で怒るから、でもそこに愛を感じて、どんどん涙が止まらなくなって。その時に監督がカットをかけずに、ずっと長回しで撮り続けてくださったんです。だからあのシーンは、すごく自然に出てきた演技だったんです。

Q:あのお母さんと静花との絆ってすごく強くて、スクリーンを通してもひしひし伝わってきたんですが、撮影現場でもその絆は強まりましたか?

強まりましたねー。だってもう大好きだったもん! ちょっと疲れたシーンとか、悲しいシーンがあると、すぐにオモニ役のイ・ジョンウンさんのところに行って、膝の上に乗って抱っこしてもらったり、ヨシヨシしてもらったりしていましたね(笑)。この映画は、割と順撮りだったからやっぱりラストが近づいてくるにつれて、自分の感情も役柄にどんどんシンクロしてきて。オモニに本気で甘えていました。

役者としてのモチベーションが上がった、監督の決断

真木よう子

Q:脚本を読んだ時の印象から、完成した映画はどんなところが想像を上回っていましたか?

もともと有名な舞台だったので、脚本を読んだ時はどうしても舞台の匂いが残っていて。舞台の脚本みたいな感じだったから、不安ではなくて、これを映像に起こしたらどうなるんだろうっていう気持ちはありました。でも映像に起こしたことによって、「これは映画にできてよかった」というシーンがたくさんあったので嬉しかったです。

Q:鄭義信監督の演出はいかがでしたか?

監督とはいろんなことを話しました。疑問に思った時はすぐに聞いていたし、静花のリアクションに関しても、彼女はすごく耐える女性だから、監督が「ここは韓国の女性っぽく感情をむき出しにして」と言った時も、逆に抑えたほうがいいんじゃないかと。そういうこちらの提案をきちんと一緒に考えてくださる方でした。

Q:丸々ワンシーン撮り直しになったことがあったそうですが、映画の現場ではかなり勇気のいる判断だったと思います。

アボジが感情を爆発させるシーンだったんですが、その日の撮影が終わってもちょっとみんなモヤモヤしていたんです。そしたら翌日、監督が「いい作品を作りたいから、もう一度撮らせてください。お願いします」っておっしゃって。すごく嬉しかったですね。やっぱり役者はそう言われたらものすごくテンションが上がるし、一緒にいい作品を作ろうって思えますよ。

『焼肉ドラゴン』がもたらした、騒がしくて幸福な現場での日々

真木よう子

Q:真木さんは男ばかりの兄弟の中で育ったと聞いていますが、女性だけの三姉妹はいかがでしたか?

女性同士ってやっぱりいろんな感情があるんですよね、愛情もあるし、それと同じくらい嫉妬もあったりで大変だなって思いましたね。例えば男兄弟だと、なんかあった時に「なんだお前、バーン!」って解決するんですけど(笑)、女性の場合は拗ねてみたりしてその感情を表現するじゃないですか。それって、男兄弟と育った自分からすると「めんどくさいなあ」って思ってしまうんですよね(笑)。でも結局なんだかんだあっても絆が強いところはすごくよくって、みんなで抱き合うシーンとかジーンとしちゃいました。

Q:井上真央さん、桜庭ななみさんとの共演はいかがでしたか?

本当の姉妹みたいでした。二人がどこかにご飯に行った時に私の分までサイン書いたって話を聞いて、すごくかわいいなあって。愛らしく思えちゃって。

Q:大泉洋さんが演じる哲男との関係性というのは、すごく特別だったと思います。お芝居で意識したところはありましたか?

私も最初、静花の気持ちがわからなかったので監督に、彼女がどれくらい哲男のことが好きなのかを聞いてみたんです。そしたら、「ものすごい好きだよ」っておっしゃっていて。じゃあ、すごく辛いなあって。でも一方で妹のことも大切で、その葛藤が本当に辛かったです。だから撮影中も、泣くシーンじゃないのに、急に涙が溢れたりしちゃっていました。

Q:一気飲みのシーンがすごく面白かったです!

あのシーンには実は裏話がありまして。実は、途中でカットがかかる予定だったのに、撮影が始まったら監督がずっと長回しでカットをかけなかったんです。だんだんスタッフも、役者もみんなが多分「え?」ってなっていて(笑)。結局最後までずっと一連で撮影していたから、ラストの大泉さんのリアクションとかは全部アドリブなんですよ。だからカットがかかった後は、みんなで(監督に)総ツッコミでしたね。

Q:『焼肉ドラゴン』は騒がしいけど、なんだか羨ましさも感じました。この家族の一員となってみて、いかがでしたか?

すっごい楽しかったなあ。もちろんめんどくさいこともたくさんあるけど。仲間としての連帯感もすごくあるから、何か一つ問題が起きたり、誰かが困った時みんなが団結するんです。家族だけじゃなくて、いつも常連さんが誰かしらいたりして。その『焼肉ドラゴン』の家族でいられた日々は、私にとってすごく幸せな時間でしたね。監督が「この家族がかわいそうだとか、そんな風には撮りたくない。『たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる』っていう作品のメッセージをきちんと伝えたい」とおっしゃっていたので、国籍だとかそういうことじゃなくて、辛い時代に強く生きていた家族の一員として存在したいと感じていました。


真木よう子

本人が語るとおり、真木よう子にはタフで強い女性というイメージがある。だが、今回のインタビューで終始見せていた穏やかな笑顔を見ていると、彼女の根底にあるのは実は本作の静花のような、静かな優しさと人に対する情だと感じさせる。クラブのママを演じた映画『孤狼の血』と同時期に公開される本作とのギャップはファンを確実に喜ばせるはず。どんどん演技の幅を広げている真木がこれからどんな芝居を見せてくれるのか楽しみだ。

映画『焼肉ドラゴン』は6月22日より全国にて公開

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