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『マスカレード・ホテル』長澤まさみ 単独インタビュー

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『マスカレード・ホテル』長澤まさみ 単独インタビュー

いまができないとその先はない

取材・文:磯部正和 撮影:高野広美

人気作家・東野圭吾の傑作ミステリーを実写化した『マスカレード・ホテル』。連続殺人事件の新たな現場と目された一流ホテルに潜入し、捜査を行う警視庁捜査一課の刑事・新田浩介(木村拓哉)をサポートするホテルスタッフを演じたのが女優の長澤まさみだ。これまで数々の映画やドラマに出演している長澤だが、意外にも木村との共演は初。そんな長澤が、木村と撮影現場を共にすることで感じたことや、自身の女優としての現在について語った。

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サービス精神が旺盛でユーモアを大切にしたいタイプ

長澤まさみ

Q:長澤さん演じる山岸尚美は超真面目なフロントクラークという役でしたが、どんなアプローチ方法を試みたのでしょうか?

ホテルの品格は、接客する人がどんな対応をするかで決まると思ったので、しっかりとした雰囲気づくりは意識しました。撮影前にホテルスタッフの手順や、所作を指導していただきました。

Q:劇中では一流のホテルスタッフとしてお客さんに寄り添ったサービスを提供していました。

もともと人に喜んでもらいたいという気持ちが強いので、わたしはサービス業に向いているのかなと思うんです。しっかり勉強すれば良いホテルスタッフになれる気がします(笑)。

Q:サービス精神旺盛なタイプなのですか?

どちらかというと小さいころからふざけているタイプだったと思います。人に笑ってもらったりすることに喜びを感じる子どもでした。

Q:近年ユーモラスな役柄を担うことも多いですが、ご自身の引き出しにある感情を引っ張りだしている感じですか?

本来はそうかもしれませんね。自分のなかでもユーモアは大切にしたいと思っているので……。でも、とても緊張するタイプなので、静かに見えてしまうことが多いのかもしれません。

Q:ご自身のいろいろな面を見せられることは嬉しいことですか?

新しい面を見せて驚いてもらいたいという思いはあまりないのですが、面白い役を担当させてもらえることは、わたしとしては楽しいです。

木村拓哉のプロフェッショナルさ

長澤まさみ

Q:木村拓哉さんとは初共演でしたが、どんな印象を持ちましたか?

とても真面目な方だなと思いました。木村さんと何度もご一緒している鈴木(雅之)監督が「現場でのスタンスがまったく変わらない。常に木村拓哉として注目される存在であることがわかっていて、それに対してモチベーションの炎を絶やさずにいる」とおっしゃっているのを聞いていたのですが、本当にその通りだなというぐらい真面目でストイックな方だなと感じました。

Q:プロ意識が高い?

とてもプロフェッショナルだなと感じました。いつも話題の中心にいて、注目される人生を送ってきている中、どこか少し歪んでもいいのかなと思うのですが、とてもまっすぐで素直なのは、本当にすごいと思います。

芝居で向き合うことで自然と縮まった距離

長澤まさみ

Q:そういったプロフェッショナルでストイックな部分は、近寄りがたいと感じることはありませんでしたか?

そもそも大先輩なので……。それはあったと思います。

Q:どのように距離を縮めていったのでしょうか?

わたしと木村さんは最初対立する役なので最初は緊張で少しギクシャクしていても大丈夫かなという思いもありました。実際現場に入るとお芝居をすればするほど気持ちがわかっていき、自然と打ち解けていきました。

Q:長澤さんも主演をされることが多いですが、木村さんから影響を受けたことはありますか?

同じ主演と言っても、わたしとは比べ物にならないですが……(笑)。でも難しいことは抜きにして、役とどう向き合っているかが重要なんだなと感じました。わたしたちは与えられた役を演じ切るのが仕事なので。木村さんはしっかり準備をして取り組む方だなと強く感じました。

Q:木村さんにお話を聞いたとき「長澤さんから朝ドラでお父さん役をやったらいいと言われた」と話していました。

木村さんはヒロインのお父さん役とかすごく似合うんじゃないかなと思って。すごく似合うと思いませんか(笑)。

芝居の世界は厳しいけれど冷たい世界ではない

長澤まさみ

Q:木村さんは撮影現場に臨むスタンスが昔からまったく変わらないとのことでしたが、長澤さんはいかがですか?

若いころはお芝居に対して苦手意識があったので、ベストを尽くそうという気持ちだったのかな……なんか絡まっていた気がします。いまはどれだけ役に没頭できるか、本番にどれだけ力を発揮できるかという思いで、現場での居方を考えているかもしれません。

Q:女優を続けてきて感じたことはありますか?

この世界ってすごく厳しいと思うのですが、冷たい世界ではないと思っています。自分の頑張り次第では、見え方や見せ方を変えることができる。その意味で、お客さんが観たくなるような、自信を持って薦められるような作品選びをして良いお芝居をしていかなければいけないですね。でもあまり遠い未来のビジョンは持っていないです。いまができないとその先はないですから。


長澤まさみ

近年、作品ごとにさまざまな顔を見せる長澤まさみ。木村演じる刑事が「人を疑う」という姿勢を見せるなか「とにかく人を信じる」という性善説に基づき行動する女性を、凜とした佇まいで好演した。インタビュー中、何度も「観ている人に楽しんでもらいたい」という言葉が出てきたが、彼女の女優としてのモチベ―ションはその一点にあるのだという。そして「多くの人を芝居で楽しませる」ことに貪欲に取り組む姿勢が、最近の充実ぶりに反映されているのだろう。2019年は「シリアスな役が多い」と語った長澤。果たしてどんな形で我々を楽しませてくれるのだろうか。

映画『マスカレード・ホテル』は1月18日より全国公開

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