『ブルーアワーにぶっ飛ばす』夏帆 単独インタビュー

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『ブルーアワーにぶっ飛ばす』夏帆 単独インタビュー

本当にやりたかったものに気づいた

取材・文:坂田正樹 写真:杉映貴子

映画の主人公は、30歳のCMディレクター・砂田夕佳。優しい夫もそばにいて、一見、満ち足りた人生を送っているように見えるが、心の中は、いつもモヤモヤ。子供のころに思い描いた理想の大人に、果たして自分はなれているのか? 『ブルーアワーにぶっ飛ばす』の脚本を読んだとき、「一番やりたかった役に、やっと巡り合えた」と喜びをあらわにした女優の夏帆。自由に伸びやかに生きたいと願っていても、実際は不器用でカッコ悪い日々の繰り返し……。自身の葛藤も重ねながら、夏帆が一期一会のキャラクターを振り返った。

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等身大の自分をさらけ出す

夏帆

Q:脚本を読んで、どんな印象を持ちましたか?

漫画のような作られた世界観ではなくて、日常生活にありふれたリアルで繊細な感情みたいなものを、お芝居で表現したいと思っていたところだったので、脚本を読んだときは、「こういう役を演じてみたかった」と心から思いました。脚本も手掛けた箱田(優子)監督の視点や感覚が自分と似ているところも心強かったですね。この方となら一緒に闘えるなと。

Q:砂田というキャラクターのどんなところに惹かれたのでしょう。

日々生きていく中で感じる寂しさだったり、生きづらさだったり、あるいは葛藤だったり、砂田には共感する部分がたくさんありました。子供のころはすごく伸びやかで自由だったけれど、今の自分は果たしてどうなんだろう? でも、過去には戻れないし、時間はどんどん進んでいく。そんな中、どうしていいかわからなくなってしまう砂田の姿が、27歳(撮影当時)のわたしと妙にシンクロするところがあって。この役なら、等身大のわたしをさらけ出せるというか、いろいろな思いをぶつけられるんじゃないかなと思いました。

Q:27歳当時の夏帆さんは、どんな壁に直面していたのですか?

すごく揺らいでいたというか、それは28歳になった今も変わらないんですが(笑)、過去の自分に対していろいろと思いを巡らせながら、女優として「もう一段上に行きたい」と思っていて、「そのためにはどうしたらいいんだろう?」と、すごくもがいていた時期でした。そんな思いが砂田と重なったのだと思います。

モデルとなった箱田監督の実家を訪問

夏帆

Q:口を開けば毒舌ばかりで、気持ちが不安定な砂田を自然体で演じていましたが、箱田監督の撮影現場はどんな感じだったのでしょう?

撮影期間が短いということもあり、クランクインの半年前から箱田監督とお会いする機会を積極的に作って、コミュニケーションを深めていきました。砂田という女性をどう演じるか、どういう映画にしていきたいか、ときには個人的な相談も交えながら、たくさんお話をさせていただいたので、現場に入る前に箱田監督との関係は出来上がっていました。その成果もあって、すごくスムーズに撮影できました。お互いに同じ方向を向いていたので、言葉のニュアンスやリアクションなど、砂田というキャラクターを二人で相談しながら作り上げていった、という感じでしたね。

Q:「地元が大嫌い」という気持ちも砂田の特徴ですが、モデルとなった箱田監督のご実家を訪問されたそうですね。

砂田は、地元が大嫌いで、家族にも距離を感じている。そもそも箱田監督ご自身の体験や環境が反映されたキャラクターなので、一度、監督のご実家を訪問し、その関係性を肌で感じたいと思っていたんです。わたしは東京出身なので、地元に対するコンプレックスがあまりなくて、実家に帰省するという経験もない。親との距離も近いので、砂田を演じるうえで、この訪問はとても重要なポイントだと思いました。

Q:実際に訪問されて、何か発見はありましたか?

面白かったのは、箱田監督がご両親に対して敬語を使っているところ。例えば、家に帰ったときも、「ただいま」じゃなくて、「お邪魔します」だったり、かしこまった言い方になっているんです(笑)。そういうところも作品に反映されていると思います。

画面からはみ出す勢いのシム・ウンギョン

夏帆

Q:シム・ウンギョンさんが演じた親友の清浦あさ美も、いろいろな意味で独特なキャラクターでしたね。彼女の存在をどのように捉えていましたか?

砂田は、本来、自分の中にある純粋な部分を出せず、自分で自分の首を絞めているというか、自ら生きづらくしているところがあると思うんです。だから、自由に伸び伸びと生きている清浦は、憧れであり、友人であり、ときには良き理解者でもある。でも、その反面、素直になれない砂田は、彼女に恐怖みたいなものも感じているのかもしれません。

Q:シム・ウンギョンさんとの初共演はいかがでしたか?

撮影に入る前、彼女の作品をいくつか観させていただいたんですが、今回共演させていただいて、改めて魅力的で素晴らしい女優さんだなと思いました。スクリーンからはみ出すくらいって言ったら変ですが(笑)、それくらい自由でエネルギッシュ。でも、ただやみくもに自由に振舞っているわけではなく、清浦という役に対してものすごく考えていて、理解も深いなと感じました。

変化していく作品選びの基準

夏帆

Q:近作だけを見ても、大河「いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~」やドラマ「潤一」「白い巨塔」、映画『きばいやんせ!私』、そして本作と、実に多彩な役を演じています。以前は清純なイメージが先行していた感がありましたが、何か変わるきっかけがあったのですか?

10代までは、お仕事に対してフワフワした感じで取り組んでいた部分もあったと思うのですが、20代に入ってから考え方が変わりましたね。一つのイメージにとらわれてしまうと、幅が狭くなるし、「それしかできない」と思われてしまうと思うので、それは絶対に嫌だなと。せっかく役者というお仕事をさせていただいているのだから、もっともっと、いろいろな作品に出て、いろいろな人と仕事がしてみたいと思うようになったんです。だから、もし役を選べるチャンスがあるなら「自分で選択していきたい」というスタイルに変えていったのですが、そこから、いろんなことが広がったと思います。

Q:ドラマ「みんな!エスパーだよ!」(2013・テレビ東京)の不良少女役あたりが分岐点のように思いますがどうでしょう?

その前からもいろいろな役にトライさせていただいてはいたんですが、確かに、あの作品の印象は強いかもしれませんね。「果たして自分にできるのか?」という不安はあったのですが、とにかくやってみようと。迷いながらも挑戦したんですが、思い切り振り切って演じることができてよかったと思っています。周りからは、「大丈夫?」とか、「え、そっちいくの?」とか、「すごくよかったよ!」とか、さまざまなご意見をいただきましたが、わたし自身は、それまで一つのイメージに縛られていた自分とは「違う場所にいけたんじゃないか」という解放感みたいなものを感じることができたので、全く後悔はなかったです。

Q:作品を選ぶ基準は?

その都度、試行錯誤していますが、やはり一番は、「今までやったことのないイメージに挑戦する」ということでしょうか。そういった意味では、本作の砂田役もまさに初めての挑戦でした。さらに、改めて「自分が本当にやりたかったものに気づかせてくれた」という点では、大きな財産にもなりましたね。


夏帆

一つのイメージに束縛されることに抗い、演じたい役を自らの意志で模索し始めた夏帆。メジャー、インディーズを問わず、地道にキャリアを積み重ねてきた彼女は、どんな役でも受け止める“本物の女優”の顔になってきた。本作でも、自身が抱える悩みや喜び、人生観を全てさらけ出し、砂田という役に心血を注いでいる。次はどんな夏帆と出会えるのか、早くもワクワクが止まらない。

(C) 2019『ブルーアワーにぶっ飛ばす』製作委員会

映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』は10月11日より全国公開

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