『閉鎖病棟-それぞれの朝-』小松菜奈 単独インタビュー

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『閉鎖病棟-それぞれの朝-』小松菜奈 単独インタビュー

常に進化していきたい

取材・文:高山亜紀 写真:高野広美

精神科医で作家・帚木蓬生の山本周五郎賞受賞作を、『愛を乞うひと』の平山秀幸監督が映画化した『閉鎖病棟-それぞれの朝-』。主演の笑福亭鶴瓶が役づくりで7キロ減量したことも話題の本作で、小松菜奈はDVを受けて、精神科病院を訪れる女子高生・由紀を演じた。作品ごとに女優として進化し続ける小松が、さらなる成長のために引き受けた難役。果敢に挑んだ撮影現場や自身の今・将来について語った。

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必死の撮影現場

小松菜奈

Q:由紀役を引き受けるのは、とても勇気のいる選択だったのでは?

決断するまでは葛藤だらけでしたが、過酷な現場になろうとも、挑戦したいという気持ちがものすごくありました。大変だろうけど、学べることや吸収できることがたくさんあるだろうと思い直し、現場でも必死でした。

Q:役とどう向き合いましたか?

4人(由紀、秀丸=笑福亭鶴瓶、チュウさん=綾野剛、昭八=坂東龍汰)で出かけている場面は唯一の楽しいシーンで、それ以外は苦しいシーンばかりでした。あまり現場でも明るくいることができなくて、とにかく集中していました。自分の中にずっと張り詰めた気持ちがあったように思います。

Q:撮影現場では役柄のまま過ごしていたのでしょうか?

急に暗くするというわけにもいかず、常にその気持ちでいないと、感情的になかなか難しかったです。いろんな人と話したりする余裕もそんなになくて、一人でいることも多かったように思います。もちろん、現場が終ってから、みんなでご飯に行くこともありましたが、撮影中は皆さんがそれぞれの距離感を保って、割と役柄の関係のままでいる感じがしました。

Q:共演の皆さんは個性豊かですね。影響を受けましたか?

役に対する入り方も違えば、向き合い方やそのストイックさも一人一人違います。とても勉強になりました。患者さんの役は皆さん、とても大変で、中にはこちらが心配になるほど役に入り込んでいる方もいらっしゃいました。素晴らしい役者さんたちばかりでしたので、そのお芝居を近くで見ることができて、大いに刺激になりました。

考えさせられる役だった

小松菜奈

Q:実際の患者さんたちが階下にいる、同じ建物内の病棟で撮影したと聞いて、驚きました。

やっぱり空気が違います。周りが自然で丘の上にぽつんと病院があるといったロケーションなのですが、なんだかゆったりとしていて、時の流れが遅いような気がしました。どこが違うとはっきりとは言えないんですが、その空気の中でお芝居をできたことは、自分にとって入りやすかったと思います。患者さんたちが通院されている場所だったので、実際に見学もさせてもらいました。何も知らないで演じるのとでは、また違ったと思うので、ありがたかったです。

Q:この作品でどんなところがご自身の成長につながりましたか?

やっている最中にも課題が見つかりました。泣き芝居など感情的になるシーンが多かったのですが、カメラの向きなど、何度も何度も芝居を繰り返すことになるので、「気持ちの調節をした方がいい」と監督がおっしゃったのです。もちろん私としても本番に一番、いいものを出したいと思っているのですが、不器用なのでリハーサルから気持ちが入っていないと本番で出せなかったりする。そのせいで、リハーサルから一気に気持ちがあふれ出て、周りから「大丈夫? もうちょっと力を抜いていいから」と心配されてしまうこともありました。それでも、それくらい入り込まないと難しい、集中力の必要な役でもありました。

Q:それだけ由紀への思いが強かったんですね。

役に入る前は参考にするものがなくて、ネットで過去にそういった経験のある方たちの体験談を見たりしました。その気持ちを知るだけでも違う気がしたんです。現場に臨んで、改めて由紀に関して、わかったこともあります。苦しい時期を過ごして、それでも頑張っていきたいと思った由紀の強さ。それは彼女の内に秘めた小さな灯みたいなもので、大切にしたいと思っていました。彼女が清い存在なら、役の見せ方としてわかりやすさがあったかもしれません。でも、私はリアルさを入れたいと思いました。どんなことがあっても立ち上がる彼女の強さをお芝居で表現したかったんです。ト書きにはなかった部分を自分で変えてみて演じ、監督と話し合って、由紀という女の子を形にしていきました。本当にいろんなことを考えさせられる役でした。

5年前と今の自分は明らかに違う

小松菜奈

Q:本格的な女優活動を始めてから5年。駆け抜けてきたような印象がありますが、どう感じていますか?

あっという間でした。役をやっている時はとにかく必死で、のめり込んでいると本当に時間が過ぎるのが早くて、1年がすぐ経ってしまうんです。全然違う役をやらせていただいているので、毎回すごく楽しいです。現場ごとに勉強になるし、「次はこうしよう」と思ったりすることもあり、常に進化していけたらいいなと思っています。明らかに5年前と今の自分は違うと思います。最初の頃のただ楽しいからやってみようという気持ちとは違う楽しさが今はあるんです。役の重みも違いますが、作り方も変わってきました。バックグラウンドをしっかり作って、役として生きる楽しさ。いろんな役者さんと共演させていただいていることも大きいです。たくさん、間近で見て、感じて、本当にいい環境にいるなと感謝しています。

Q:来年も公開待機作が複数ありますね。共演者からはどんな刺激を受けますか?

互いに影響されて、役が見えてくることもあります。相手の役者さんの言い方一つ、身の振り方一つで、こちらの反応も違ってきます。いい意味で共演者に引っ張ってもらったり、引っ張ったりするのが現場。「こうしていこう」と考えて用意するものでなく、本当にその場で、あるいはその土地に行って感じて、お芝居をする。それだけでお芝居の仕方、見え方は全く変わってきます。考えるものではないんだなと感じています。

どうなっていくかわからない将来が楽しみ

小松菜奈

Q:人としてこうありたい、というような指針はありますか?

現場がすごく好きなんです。ずっと現場にいたいくらい。ちゃんとしなきゃという時もあれば、楽しくいたい時もあり、役にもよりますが、のびのびとそこにいられて、自分らしく環境に入れたらいいなと思っています。好奇心や何かを残したいという気持ちはこれからも常に湧いていたい。あとは感謝の気持ちを忘れないことも大切ですね。

Q:将来、こうしたいと考えていることは?

この先どうなっていくか、本当に自分でもわからないですし、それが楽しみなんです。先のことは思い描けないタイプなので、常に新しいことを探していたい。もしかしたら映画とは違う、何かやりたいことが見つかるかもしれない。海外の作品は現場の雰囲気もまた違いますから、それはそれで、また挑戦してみたい気持ちもあります。そうはいっても作品ごとに確実にお芝居の魅力を感じているので、今は次の現場に入りたい気持ちでいっぱいです。特に「これしかやらない!」と決めつけずに、どんな作品でもベストを出して、必死に頑張っていきたい。若いうちに場数を踏んで、いろんなことを経験して、いっぱい吸収できたらいいなと思っています。


小松菜奈

シックなドレスを着こなした彼女がすっと立っているだけで、周りの空気が一気にモードな世界に一転する。それでいて、スクリーンの中の由紀は傷ついては転がる小さな石ころのような存在だ。傷ついて、それでも立ち上がり、最後はダイヤモンドのような誰にも負けない強さを手に入れる。毎作品、苦しんでは前に進み続ける彼女も同様か。女優としての高みを目指し、これからもっと眩い存在になっていくに違いない。

映画『閉鎖病棟-それぞれの朝-』は11月1日より全国公開

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