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『哀愁しんでれら』土屋太鳳 単独インタビュー

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『哀愁しんでれら』土屋太鳳 単独インタビュー

3度断った難役、それでも挑んだ理由

取材・文:浅見祥子 写真:尾藤能暢

次世代クリエイターを発掘する「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」でグランプリを獲得したオリジナル脚本を基にした『哀愁しんでれら』に、土屋太鳳が出演した。演じるのは、幼い頃に母親に捨てられながら児童相談所で働く福浦小春。妻を亡くした裕福な開業医の大悟(田中圭)と恋に落ち、シンデレラストーリーのような幸福を手にするも、大悟の娘ヒカリに翻弄される……。先の読めない展開の物語に覚悟を持って挑んだ、土屋太鳳が語る。

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最初に、警戒心を抱いてしまった物語

土屋太鳳

Q:『哀愁しんでれら』の脚本を読んだ感想は?

なぜ、この役がわたしに来たんだろう? という思いでした。人ってだだだだ……と変わってしまう、そのさまは意外と速かったりしますよね。ごく普通の女の子からガラっと変わる小春は振り幅の大きい役で、ラストへ向けての流れがとても計算されているお話です。最初は、そこに警戒心を抱いてしまったんです。

Q:オファーを3度断ったそうですね?

そこから監督といろいろお話をさせていただいて、大悟さんを田中圭さんが演じられると聞いて。4回目にお話を頂いたとき、小春ちゃんが「誰か、私を生きて」と言っているような気がしたんです。「お願い!」と言いながら探す気持ちが伝わってくるようで、じゃあこれは覚悟を決めてやろうと。そうして少しずつ段階を踏んで覚悟していったのがよかったなって思います。

Q:小春の心情の変化に寄り添うのが難しかったのでしょうか?

逆に、そこは共感していただけると思います。ごく普通の女の子が大きく変化するさまがわかりやすく描かれますが、そうした感情は誰しもがため込んでいるものだと思うんです。わたし自身20代前半でいろいろな“普通の女の子”を演じさせていただいて。こんなに激しい感情があるのに言えない、そうした役もいくつか経験したので、それを小春のなかで膨らませていった感じです。「こうなって次はこうなった」と心情の変化をただ提示していくのではなくて。だからこそ、小春を演じられたのかなと。

小春として生きるために

土屋太鳳

Q:撮影前に抱いた警戒心は、演じながら消化されたのですか?

そうかもしれないです、浄化したというのか……。圭さんをはじめ、プロデューサーさん、監督さん、カメラマンさん、美術さんと周りにいるさまざまな方たちが、それぞれにやるべきことをはっきりとわかっていて、それを伝えてくださいました。そこを大事にしたいと思ったし、撮影はタイトではありましたけど、小春として精いっぱい、力を発揮したい。小春として生きようと思っていました。

Q:冒頭に「女の子は誰しも漠然とした一つの恐怖を抱えている、わたしは幸せになれるのだろうか?」という言葉が出てきますが?

そういう不安、わかりますよね? どんな世代の誰もが、幸せになりたいから生きていると思うんです。そんななかどこかで我慢したり諦めたり、不安になりながら生きている。だからこそ小春の行動すべてを理解できなくても、共感していただけるんじゃないかなって。

Q:大悟を演じた田中圭さん、ヒカリを演じたCOCOちゃんとの共演はいかがでしたか?

本当に素敵でした。まず圭さんって、結果を出す方なんだって。「ダンスは苦手なんだよ~。本当に下手だから!」と言うんですけど、本番ではちゃんと踊っていましたから。COCOちゃんも「演技は初めてで、どうしよう」と言いながら、感情を伝えられるとちゃんと返す子なんです。ダンスのシーンで圭さんがぎゅーっとハグするとこっちんが……、こっちんと呼んでるんですけど(笑)、圭さんにチュッてしたんです! 子どもって素直だから、相手に警戒心があったら絶対にそんなことはしないですよね。圭さんがハグをして気持ちを伝えたからで、それに応えたこっちんもすごいなと。

Q:田中圭さんとのお芝居が軸になりますね?

感情表現についても「自分は何回もできないから1回でやりたい」とおっしゃって、そう言える勇気がスゴイですよね。女優だから俳優だからできるでしょ? ではなく、人間だから1回しかできないと言うのはリアルだなって。人って例えば、いま話しているこの言葉もこの状況でそう言うのは一生に一度だけです。だから本当は、本番も1回が一番いいんだろうなと。とはいえセリフをかんでしまったりすることもあるわけですけど。

自分にとっての理想の結婚

土屋太鳳

Q:「白馬に乗った王子様より、外車に乗ったお医者様」というセリフがありました。ご自身が結婚に求めるものはなんですか?

家族が家庭に閉じこもるのではなく、社会につなげてくれるような結婚……って難しいですね。もちろん家族で仲良くしたい思いはありますが、家族みんながそれぞれいろいろなところへ行って、社会といろいろつながって。お互いをよく知る家族同士が、そのつながった先と家族とをつなげ合う。そういう存在でいられたら強いかなって思うんです。自分を知ってくれているから、何かあったときに助けてくれたり、仕事につなげてくれたりするんじゃないかって。

Q:家族は居場所であって、それぞれで構成される組である、というような?

そうですね……同志のような。家族だからもちろんぎゅっとつながるんだけど、お互いに人として接し、周りとつなげるような……ってまだ結婚してないので、そういう家族ってどうかな? という感覚的なものなんですけど。

Q:後半、小春が窓の外から、自分の家族を眺めるシーンが印象的でしたが?

とても哀しいシーンですよね。ウチは昔、本当に貧しくて。母親は親を亡くしていて、父方の祖父母とも離れて暮らしていました。生活が大変でしたが「自分がここを守るんだ」と頑張っていたらしいんです。でも窓の外から家を見ると、照明がオレンジがかったライトでとても温かそうに思えて。それで号泣したと言っていました。だからあのときの小春の感情はリアルだなって思ったんですよね。

撮影できたことが本当に幸せ

土屋太鳳

Q:完成した映画を観た感想は?

最初に観ても、忘れちゃうんですよ。他の方のお芝居は覚えているんですけど、自分がどうだったかを覚えてなくて。そこだけ空白になるので、もう1回観たいと思っています。映画は映画館で観るのが一番いいですよね。セリフを覚えなきゃいけないときに中途半端な気持ちで観るのは嫌で……ってなんかわたし、自分のことばっかり話してますけど大丈夫ですか?

Q:え!? 大丈夫ですよ(笑)。個人的に、この映画にはいろいろな種類の怖さがあると感じたのですが?

わたし自身は演じているときに恐怖はなかったんですよね。ただ……大悟さんの家の雰囲気は怖かったです。どんな人かって、住む家に出るものですよね。なかでも大悟さんのアトリエは本当に怖くて、そこの空気に震えるという感じでした。

Q:撮影しながら、悩んだり迷ったりすることも多かったのでしょうか?

たくさんありました。わたし自身はまだ結婚もしないし子どももいない、再婚がどんなものかという感覚もわからず、そこは未知の世界ですから。「まれ」のときは子どもがいたし、わたし自身も子どもは好きですけど、どう接すれば? どうしたらこの子が心を開いてくれるのだろう? と考えました。子育てって難しいんだろうなって。

Q:ちょっと子どもと遊ぶのと、血のつながりのない子を育てるのとでは違うでしょうね?

全然違いますよね。ヒカリは難しい役で、撮影しながら、COCOちゃんが一番難しいだろうと思っていました。でも彼女は堂々と見えるんですよね、そういう術を知っているんです。一人っ子だから、親御さんの気持ちを背負う部分もあるだろうし。ふだん生きていて、もう女優さんなんでしょうね。わたしの演じた小春ちゃんが幸せだったかはわかりませんが、わたしはいい作品をつくりたい! とみなさんと一緒に撮影できたことが本当に幸せでした。


土屋太鳳

あらかじめ伝えてあった質問を踏まえ、その場のやりとりを大切にしつつ、こちらが求める答えをさりげなく入れ込んで語る土屋太鳳。話しながら映画の内容からそれて自身のことを語り過ぎたと思ったのか、ハッとした様子で「自分のことばっかり話して大丈夫ですか!?」と言い出したのには驚き! とてもナチュラルに、場を和ませてくれる人だった。

ヘアメイク:尾曲いずみ スタイリスト:藤本大輔(tas)

映画『哀愁しんでれら』は2月5日より全国公開

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