『ゾッキ』竹中直人監督&山田孝之監督&齊藤工監督 単独インタビュー

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『ゾッキ』竹中直人監督&山田孝之監督&齊藤工監督 単独インタビュー

ワクワクの導火線に火がついた

取材・文:坂田正樹 写真:中村嘉昭

俳優の竹中直人山田孝之齊藤工が監督として集結し、それぞれが才能をぶつけ合いながら完成させた映画『ゾッキ』。「寄せ集め」「ひとまとめ」という意味を持つ用語(ゾッキ)で束ねた漫画家・大橋裕之の幻の初期作品集「ゾッキA」「ゾッキB」(2017)が、選び抜かれた珠玉のエピソードとともに実写となって躍動する。企画の発起人である竹中の頭の中に、なぜか浮かんだという山田と齊藤。昨年の東京国際映画祭でのお披露目後、久々に顔を合わせた3人が、羨望、嫉妬、尊敬入り乱れながら本作に込めた思いを語った。

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パッと頭に浮かんだのが、山田孝之と齊藤工

竹中直人監督&山田孝之監督&齊藤工監督

Q:企画者である竹中監督にお聞きしたいのですが、そもそも原作とはどこで出会ったのですか?

竹中直人監督(以下、竹中監督):2018年に、倉持裕さんの劇作・演出で、生瀬勝久さんと組んだ竹生企画第3弾「火星の二人」という舞台を上演したんです。ある日の上演前、ゲストでお呼びした前野朋哉くんの楽屋を訪ねると冷蔵庫の上に「ゾッキA」「ゾッキB」がそっと置かれていたんです。「何これ? 借りていい?」って自分の楽屋で一枚一枚ページをめくっていきました。そのままぐいぐい大橋さんの描く世界に引き込まれて、これはもう絶対に映画にしたい! と思い(のちに『ゾッキ』の脚本を手掛ける)倉持さんに「オムニバスで映画を撮りたい!」と伝えました。大橋さんの描く世界は僕にはとても映像的だったんです。

Q:山田さん、齊藤さんを監督として指名した理由は何だったのでしょうか?

竹中監督:直感です。原作がショートストーリーなので、これをオムニバスとして映画化するには、僕以外にも監督が必要だと思ったんです。それでパッと頭に浮かんだのが、なぜか山田孝之と齊藤工の顔だったんです。僕の場合は、映画の企画もキャスティングも全て直感ですね。

監督オファーを断れる雰囲気がなかった

竹中直人監督&山田孝之監督&齊藤工監督

Q:いざ、監督としてオファーを出した時、お二人の反応はどんな感じでしたか?

竹中監督:工とは別の映画の現場でガッツリ組んだばかりだったので話しやすかったんですが、孝之とは遠い昔に共演したくらいで接点がなかったんです。それで仲良しの安藤政信に頼んで会う機会を作ってもらった。最初はものすごく緊張しましたね。プロデュースに関してはとても前向きで、いろんなビジョンを語ってくれたんですが、監督を引き受けてくれるかどうかは微妙な空気だった……。

山田孝之監督(以下、山田監督):いやいや、断れる雰囲気なかったですよ(笑)。

竹中監督:そうだった? 結構、強引だったかしら(笑)。

Q:本当のところはどんなお気持ちだったんですか? 山田さんは初監督になりますよね。

山田監督:ミュージックビデオを1度監督したことはあったんですが、お芝居をガッツリ演出するのは初めてだし、そもそも自分は監督に向いていないと思っていたので、「プロデューサーとして参加するのはダメですか?」と言ったのは覚えています。僕も原作に惚れ込んで、「これは絶対に映像化したい」という思いはあったので、映画を作る人たちをサポートする側に行きたいなと。でも、竹中さんが「ぜひ監督で!」と熱心におっしゃってくださるし、一人で全編撮るわけでもないので、「逆にチャンスかもしれない」と自分に言い聞かせて、挑戦してみることに決めました。

Q:齊藤さんは『blank13』(2018)など監督経験があるので、すんなりお受けした感じですか?

齊藤工監督(以下、齊藤監督):あるレストランにお呼ばれして、訪ねて行ったら、竹中監督を囲んで、(音楽監督・主題歌の)Charaさん、安藤政信さん、前野朋哉さん、脚本の倉持さん、そして山田監督が勢ぞろいしていて、「なるほど、もう下ごしらえをされているんだな」と直感しました。その場に原作も置いてあって、なんだかそこからワクワクの導火線に火がついた感じでしたね。

『ジョーカー』の予告編で演技指導!?

竹中直人監督&山田孝之監督&齊藤工監督

Q:山田監督は、松田龍平さん演じる藤村の“自転車一人旅”を描いていますが、初メガホンを取ってみていかがでしたか?

山田監督:藤村という男は、「ちょっとした勘違いから生まれたすれ違いによって、孤独が偶然続いてしまった人」なんじゃないかと自分なりに解釈し、それを踏まえて龍平くんが自然に演じてくれたら、きっと面白いものが撮れると思いました。例えば、コンビニのシーンで象徴的な描写があるのですが、藤村は若い女性(柳ゆり菜)と出会うのに、そこに生まれた勘違いからすれ違いが起きて、せっかくの縁をつなげられない……これを繰り返す人なんだと。

Q:齊藤監督は、妄想癖のあるキャラクター・伴くん(九条ジョー)のパートでしたが、キャスティングが絶妙でした。

齊藤監督:ある意味この話は、大橋先生のメンタル的な史実だと僕は思っているのですが、伴くんという象徴的なキャラクターが強く残るといいなと思って役者さんを探していたら、僕が出演したバラエティー番組で、お笑いコンビ・コウテイの九条さんと出会ったんです。大阪を中心に活動している芸人さんなんですが、彼と出会った衝撃と「ゾッキ」を読んだ時の衝撃が重なり、九条さんと伴くんが完全に同期したんですよね。

Q:九条さんは映画初出演ということですが強烈でした。どんな演技指導をされたんですか?

齊藤監督:彼には映画『ジョーカー』の予告編を何回も観てもらいました(笑)。ホアキン・フェニックスの世界観に伴くんを重ねたら、どんな化学反応が起こるんだろうと単純に思ったんですよね。劇中、『ジョーカー』の(ダンスする)階段シーンを模した場面が出てきますが、そこは軽やかなパロディーとして楽しんでいただければと思います。

Q:竹中監督が担当した幽霊のような女(松井玲奈)の話も秀逸でした。本作で長編としては監督8作目、どんな思いで臨まれたのでしょう。

竹中監督:父親(竹原ピストル)が自分の子供を連れ、夜の学校探検へ行くシーンがあるんですが、そこで女の幽霊に出会うんです。父親は怖がって子供を置きっぱなしにして逃げてしまうんですが、残された子供に女の幽霊が話しかけるんです。「夏の夜は蒸し暑くて眠れない……」って。なんだかそれがとても切なくてね。グラウンドにある水道の水が出しっぱなしになっていてそれを女が止める。その行為に対し子供が「ありがとう……」ってつぶやく。すると女が「えっ!?」って振り向く。そのシーンにものすごく感動したんです。その彼女と子供との関係を撮りたかった。

竹中監督の現場は軽やかで迷いがなかった

竹中直人監督&山田孝之監督&齊藤工監督

Q:今回、監督として長編映画を共作されたわけですが、それぞれどんな印象をお持ちになりましたか?

竹中監督:もう孝之が演出した龍平! ただ居るだけなのに龍平は本当に素晴らしいです。役者同士の関係じゃない限り、あんな芝居はしないんじゃないかな……。

齊藤監督:僕は山田監督と一緒にコンビニのロケハンに行ったんですが、例えば、カップラーメンのデカ盛りを選んだ女の子が小ぶりのものに替えたり、サンダルの指をぎゅっとさせたり、そこで具体的なビジョンが瞬間的に生まれ、それをスタッフさんに「絶対に撮りたい!」と伝えているところが印象的でした。実際に、その画がつながった時にすごく効果的だったし、山田監督の中にある大橋裕之的なものって言うんでしょうか、そのプロセスを見ることができたのは貴重でしたね。

山田監督:僕自身はぜんぜんわかってなくて、自分の中で「絶対そうあるべきだ」と思って勝手にやっているだけでしたね。それが果たして正解なのかもわからなかったので。ただ、お二人の演出を間近で見ていて、「そんなやり方があるんだ!」って感心しながら、結構焦ってやっていたところはあります。

竹中監督:工が監督した伴くんなんて、壮大なスケールの物語だから、実は絶対無理だと思ってた。でも完璧でした。

齊藤監督:僕も半信半疑でしたね。竹中監督の現場は軽やかで迷いがなかったので、余計恐ろしかったですよ(笑)。

山田監督:あと、工くんのパートに大橋先生が出ているので、遊び感覚で探してほしいですね。

竹中監督:そうなんだよね! それ知った時、「そんなことやってたのかっ! 僕もやれば良かった!」って嫉妬しましたからね。孝之も工も本当にすごいです!


竹中直人監督&山田孝之監督&齊藤工監督

映画界きっての自由な三人が、“異能”をぶつけ合うと、こんなにもおかしくて、切なくて、人間愛にあふれた不思議な作品が生まれるのか。Charaの包み込むような音楽と“クセ強め”の作風が罠となって、観る者を底無し沼へと引きずり込む……いろんな側面を持つ本作は、ちょっとやそっとじゃ解放してくれない。覚悟あれ。

(C) 2020「ゾッキ」製作委員会

映画『ゾッキ』は4月2日より全国公開

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