『彼女』水原希子 単独インタビュー

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『彼女』水原希子 単独インタビュー

自分のすべてをさらけ出した役

取材・文:成田おり枝 写真:木川将史

『あのこは貴族』でのナチュラルな演技も注目を浴びた水原希子が、中村珍の漫画「羣青」を実写化したNetflix映画『彼女』では、愛する女性の夫を殺害して逃避行するという、壮絶な役を熱演。俳優としてのキャリアも10年を超えた水原が、目を見張るほどの存在感を発揮している。撮影を「とても苦しかった!」と振り返りつつ、笑顔を弾けさせる彼女。廣木隆一監督や「戦友になった」という共演者のさとうほなみに支えられて難役を演じきった今、俳優業に抱く喜びや、ものづくりに向き合う真摯な思いを語った。

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覚悟が必要だった役柄

水原希子

Q:愛する女性・七恵(さとうほなみ)からの願いで、彼女にDVを繰り返していた夫を殺す女性レイを演じました。大胆なラブシーンも伴う役柄となりますが、オファーを受けたときの心境はいかがでしたか?

お受けするには、覚悟のようなものが必要な役柄でした。役者のお仕事をやらせていただく中でも、ここまで自分のすべてをさらけだす役というのは、なかなか出会えないような気がしています。まず“人を殺害する”という設定も初めてですし、わたしの周りにレイのような経験をした人もいません。そして物語の過程では、レイの感情が激しく揺れ動きます。どうやったら、レイのこの瞬間を演じることができるのだろうかと考えても、とても大きなチャレンジになると思いました。そういった不安もありつつ、「やってみたい!」という気持ちもとても大きかったです。

Q:やってみたいと思われた最大の理由は?

まず脚本がものすごく面白くて! これがどのように映像化されるのか、とても楽しみになりました。2人の女性を中心に物語が展開していくという内容にも惹かれましたし、廣木(隆一)監督、そしてNetflix映画の現場に参加できるというワクワク感がありました。

愛を知っている女性と愛を知らない女性

水原希子

Q:信頼できるチームのもと、思いきりレイを演じることができたのですね。レイは同性愛者であることを家族に言えず、生きづらさを抱えている女性でもあります。演じる上で大事にしたことを教えてください。

劇中で描かれる殺人は、レイの人生の中でも特殊な瞬間で。とても不安定な感情を抱えている瞬間なので、その不安定さは大事にしていました。わたしは、レイは“愛を知っている人”だと思っています。自分がレズビアンであることを母親に否定されたり、学生時代に同級生から陰口を言われたり、苦しい経験もしているけれど、恵まれた環境で育って、自分のことを理解してくれるパートナーもいる。たくさんの愛情に囲まれて、愛がどんなものなのかを知っている人だなと思うんです。

Q:一方、レイが恋焦がれる七恵は、愛を知らない人ですね。

そうなんだと思います。七恵は、子どもの時から虐待を受け続け、つらい思いをして生きてきた。だからこそレイを演じる上では、“愛を知っている”ということを意識して、自分のすべてを失ってでも、七恵に対して愛がどんなものかを表現したいと思っていました。レイの七恵に向ける愛は、もしかしたら最初は歪んだものだったかもしれない。でもそれが、どんどん包み込むような大きな愛に変化していく。そういった“愛の変化”もとても面白いと思いました。

さとうほなみとずっとくっ付いていた

水原希子

Q:レイの不安定さを表現することは、精神的にもヘビーだったのでは……と想像します。

とっても苦しかったです! 体験したことのないレイの人生を表現する上では、その感情がわからなくて「これでいいのかな……」と自問自答することが多くて。もともと悩みやすいタイプではあるんですが、レイを演じている期間は特に不安に襲われることが多かったように思います。1日の撮影が終わると泣いてしまったこともありました。自分のお芝居に自信を持つことは、とても難しいことだし、そういった意味では自分との戦いの日々だったなと感じています。

Q:そんなとき、支えとなったのはどのようなものでしょうか。

廣木監督と、さとうほなみさんの存在が、とても大きかったです。不安な気持ちになると、いつも監督がすっとそばにいてくれました。苦しくて涙が込み上げそうになっても、監督の顔を見ると地に足がつくような感覚になって。監督は何も言わないんですが「わかっているよ」という雰囲気で、そこにいる(笑)。テレパシーのようで、めちゃくちゃ不思議な感覚でした。また七恵役のさとうほなみさんは、 “戦友”のよう。苦しい精神状態をお互いに支え合いながら過ごしていました。撮影の終盤は、カメラが回っていないときも手をつないでいたし、抱き合ったりして、ずっとくっ付いていました(笑)。お芝居が苦しいものだということもわかりましたが、“一緒にいてくれる人がいる”ということが、本当に大きな支えになりました。

出演を経ての変化

水原希子

Q:俳優業をスタートさせて10年。本作は、水原さんにとって大きな転機になりそうです。

オファーをいただいたときは、そういう期待も抱きながら飛び込んだ部分はあると思います。これをやったら「役者です!」って言えるかな? って(笑)。でもやってみて思ったのは、あまり「役者として」とカテゴライズしなくていいのかなということ。これまでは、お芝居の仕事に対してちょっとコンプレックスを抱いていたんです。わたしはモデルもやっていれば、デザイナーのような仕事もしているし、「役者です」って言えない気がしていた。でも本作で共演したさとうさんは音楽もやっているし、何かを表現する上では「役者じゃなきゃいけない」などと囚われなくていいんだなと思いました。

Q:苦しみをたくさん味わった本作の撮影。それでもお芝居の醍醐味を感じる瞬間はありましたか?

本当にすべてが、そういった瞬間でした。わからないことだらけだからこそ、七恵に愛を証明し続けるレイを演じるには、自分の想像力を信じるしかなかった。そういう中で、自分一人ではどうにもならないことがわかって、監督やスタッフ、キャストの方々とコミュニケーションを取りながら、どれだけパッションを込めてやれるかということが大事なんだと感じて。お芝居って身を削ることもあるし、生半可な気持ちでできるものではないと思うんです。だからこそ、「こなしていく」ということは絶対にしたくない。いかに自分がこの作品をやりたいのかという熱量を持って、しっかりと集中して、これからもいろいろな作品に向き合っていきたいと思いました。


水原希子

さとうほなみは、水原希子を「太陽のような人」と表現した。その言葉通り、水原はまさに一瞬で周囲を和ませるような明るい笑顔の持ち主だが、しっかりと自分の言葉を持ち、「悩みがちなタイプ」と打ち明ける真剣な面持ちには、もがきながらも表現者としての可能性を追求する情熱にあふれていた。スクリーンデビュー作『ノルウェイの森』(2010)から約10年。水原がすべてをさらけ出して挑んだ映画『彼女』は、俳優としての成長を目の当たりにする記念すべき一作となっている。

Netflix映画『彼女』は4月15日、全世界同時独占配信

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