『HOKUSAI』柳楽優弥&田中泯 単独インタビュー

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『HOKUSAI』柳楽優弥&田中泯 単独インタビュー

二人で完成させた葛飾北斎の生きざま

取材・文:イソガイマサト 写真:日吉永遠

江戸時代の天才浮世絵師・葛飾北斎。90年に及ぶ壮絶な人生、そして北斎が描いた「三つの波」の秘密に、彼に影響を与えた人物たちとのエピソードを軸に迫る『HOKUSAI』。これまでほとんど語られることのなかった苦渋に満ちた北斎の青年期を柳楽優弥、とり憑かれたように絵を描き続けた荒々しい老年期を田中泯が演じている。2人が同作の撮影を振り返りながら、同じ表現者として刺激を受けた北斎の生きざまについて熱く語った。

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二人の北斎が溶け合っていった

柳楽優弥&田中泯

Q:北斎の青年期と老年期をダブル主演で演じることについて、どのように感じましたか?

柳楽優弥(以下、柳楽):新しい試みですし、ユニークな発想だなと思いました。どのような仕上がりになるのか想像できませんでした。

田中泯(以下、田中):そこは考えても仕方がないし、相手を信頼してスタートするしかないですよね。

Q:老年期、青年期それぞれの北斎が海に向かって歩いていくシーンは、同じ日に撮影したとか?

柳楽:はい。僕の撮影が先でした。

田中:なので、僕は彼が歩いていくところを現場で見せてもらいましたが、あれこれ考えることはしませんでした。理屈で動いたら、つまらなくなっちゃう気がして。だから、ただ目に焼きつけるだけにしたんですけど、そうしたらスッとあのシーンに入れましたね。

柳楽:橋本一監督が、スピード感のある青年期とゆっくり歩き進む晩年の北斎で変化をつけたいとおっしゃっていたので、僕はあえて泯さんが演じられるそのシーンの撮影を見ないようにしました。

Q:撮影現場で一緒になったのはクライマックスのみですか?

田中:俳優同士、同じ時間の中で生きたのはあのシーンだけです。

柳楽:あの現場で、初めて拝見した泯さん演じる北斎はものすごかったです(笑)。安心感と説得力がありました。若いころの北斎は「誰にも負けない」という気持ちで突き進んでいたと思うんですが、泯さんとご一緒させていただいたあのシーンで絵を描いていたら、「ああ、北斎ってこういう人生だったのかな」と自分の中で腑に落ちましたし、自身が演じた苦悩する芝居の先に、とり憑かれたように絵を描くようになっただろうと自然に思うことができたんです。

田中:僕は若き日の自分に教わっているような感覚があって。最初は年齢や肉体の差といったズレを感じるわけですよね。そんな二人の北斎がいつの間にか溶け合っていったから、上手くいったなと思います。

北斎は勇気を与えてくれる

柳楽優弥&田中泯

Q:お互いに印象に残っているシーンは?

柳楽:一番印象に残っているのは、雨の中で泯さんが“北斎ブルー”に包まれるシーンです。あのシーンが泯さんの即興の芝居だと後から伺って、即興でこんなに素晴らしい映像を撮ることができるんだと驚きました。撮り終わった直後に現場にいた全員から拍手が沸き起こったそうですが、すごい緊張感だったんでしょうね。

田中:あれがNGだと、顔を拭いて着物を着替えて撮り直さなければいけないから、さらに2、3時間かかっちゃう。そうならずに一発で終わったから、やれやれだねという、そっちの拍手だったんです(笑)。僕も顔を完全にブルーにしなくてはならなかったし、クリアにしなければいけないことが幾つかあったので撮り終えた時はホッとしました。

Q:泯さんが、柳楽さんのシーンで印象に残った場面は?

田中:全編に自分の想像とは違う北斎が映っていて、それを見た時に納得しました。どんな障害も踏み越えていける人というか。いつも不安や不満を抱えていて、生意気だけれど、それも自分と向き合うある種の正直さみたいなものに裏づけされているから強い。挫折とは無縁のその弱さを、反骨精神にシフトできたんじゃないでしょうか。ただ、僕はこのシーンが好きと、これから見る人以前に、演じた僕自身がまるで烙印を押すように答えるのは望みません。なので、ごめん、ここは回答しません!

Q:北斎の生きざまに共感するところもありましたか?

柳楽:誰もが知るあの北斎が、若い時には挫折と苦悩を繰り返しながらも晩年に向かって成功していったと考えると、すごく夢がありますよね。人に勇気を与える存在だと思いました。

田中:最初からスゴい人なんていない、ということだと思うけれど、僕は足元にも及ばないし、あんな風に生きられるわけもない。でも、やっぱり憧れますね。

今も挫折と戦い続ける日々

柳楽優弥&田中泯

Q:お二人は、挫折を味わった時はどのように乗り越えましたか?

田中:「乗り越えた」と自信を持って言えないところがありますね。ひがむし、自分の嫌な部分と相変わらず相撲をしているような日々で、「今日は上手くいったな」と思うことはあっても、役の人物に完全にはなりきれていないです。

柳楽:僕も自分でやると決めたことを達成した瞬間に「少し前進できたかもしれない」と思う程度です。上手くいかなくても腐らずに頑張ろうという気持ちではいます(笑)。

田中:僕が『たそがれ清兵衛』(2002)で山田洋次監督に映画の世界に誘っていただいたのは57歳の時ですけど「えっ、俺が映画に出る? 嘘でしょ」と最初は疑っていました。それぐらい驚いたわけですけど、そんなチャンスを作ってくださる方たちがいるので、僕も凹まずに生きてこられたような気がします(笑)。

柳楽:僕はお芝居もできて、ダンスもスゴい泯さんが羨ましいです。僕は今後も演技の世界で頑張っていきたいので、自分の気持ちが豊かになるよう、普段の生活の中でいろいろなことをインプットしていくように心がけています。

田中:あなたは僕と45歳も違うんですよ。何でもできるし、何にでもなれる。すごい可能性に溢れています。

続けるうちに「上手い」「いい」の意味が変わる

柳楽優弥&田中泯

Q:お二人には、北斎にとっての蔦屋重三郎(阿部寛)にあたる、道を示してくれた人はいましたか?

田中:踊りの世界の有名な先人は亡くなってしまいました。ただ、年に1回は必ず踊る、伝統芸能として継承している人たちは無数にいる。踊りのスゴいところはそういう人たちに支えられて歴史に残ってきたことですけど、踊りは魂に関わる問題なので、自分は今後もそっちの方に向かっていくと思います。

柳楽:僕の場合は、演出家の蜷川幸雄さんが舞台「海辺のカフカ」(2012)の主演に選んでくださったことが大きいです。演技の世界に戻ってくるきっかけにもなった出来事なので忘れられないですね。人生、何が起こるか分からないなと思いました。

Q:お二人をお芝居や踊りに向かわせる衝動はどこから来ているのでしょう?

田中:「踊りが好きという気持ちは誰にも負けないぞ!」ってことですかね。いまだに飽きないし、好奇心が続いている。それに、人生一度きりなので無駄にはできない。そのことを自分に繰り返し言い聞かせています。

柳楽:僕も演技が大好きです。どうしたら上手くなるんだろう? と、いつも考えています。「上手い」と「いい」は違うと言いますが、僕はいい俳優になりたいですし、芝居も上手くなりたいです。

田中:好きになった者勝ちなんですよ。踊りもお芝居も、人間みたいに逃げないし、裏切らない。だから、好きになり甲斐がある。続けていくうちに「上手い」や「いい」の意味合いも変わっていくので、それが多分「生きる」ということに繋がっていくような気がします。


柳楽優弥&田中泯

『HOKUSAI』は、昨年生誕260年を迎えた葛飾北斎の数奇な“生”を柳楽優弥と田中泯の二人で体現した画期的な映画だ。北斎が70歳を過ぎてからその才能を開花させることができたのはなぜなのか? 平均寿命が40歳と言われていたあの時代になぜ90歳まで生きられたのか? 美人画の大家・喜多川歌麿(玉木宏)、戯作者・柳亭種彦(永山瑛太)らとの出会いを経て進化し、権力に屈することなく描き続けた北斎の生きざまは、いまを生きるわたしたちにヒントをくれるに違いない。

映画『HOKUSAI』は5月28日より全国公開

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