見どころ:ロサンゼルスきっての危険地帯を巡回中に犯罪組織の秘密に触れたことで、命を狙われるはめになった警官コンビの運命を描くクライム・アクション。犯罪最前線で常に死と隣り合わせの危険な任務に当たる警官たちの日常と固い絆を、臨場感あふれる演出で浮き彫りにする。監督は、『フェイク シティ ある男のルール』のデヴィッド・エアー。役づくりのため5か月間ロサンゼルス市警の巡回に同行し訓練を受けた、主演のジェイク・ギレンホールとマイケル・ペーニャの熱演に圧倒される。
あらすじ:ロサンゼルスの重犯罪多発地区サウス・セントラルを担当する白人巡査テイラー(ジェイク・ギレンホール)とメキシコ系巡査ザヴァラ(マイケル・ペーニャ)は、固い絆で結ばれた警官コンビ。パトロール中に通報を受けて向かった家で、図らずもメキシコ麻薬カルテルの秘密に触れてしまう。組織の怒りを買った二人は命を狙われてしまい……。
これは同じL.A.のサウス・セントラルを舞台にした1988年の傑作『カラーズ/天使の消えた街』を意識しているはず。ポリス・アクションとしての設定や作風もよく似ていて、まるで24年後(製作は2012年)の続編だ。『カラーズ』は主演のショーン・ペンがイニシアティヴを握り、監督に敬愛するデニス・ホッパーを指名したわけだが、本作では製作総指揮と主演を兼ねるジェイク・ギレンホールがショーンの役回りに当たる。こういう世代と世代をつなぐ“表現のバトンリレー”が筆者は大好きだ。
両作が異なるのは叙述の形式だが、その点も時代の流れを反映した結果だろう。同じ臨場感の演出でも、『エンド・オブ・ウォッチ』は手持ちのデジタルカメラによるフェイク・ドキュメンタリーの手法を踏襲しており、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以降のPOV(主観映像)を全面展開させた娯楽映画のヴァリエーションと言える。
ただ一点、いわゆる映画のカメラと、劇中で登場人物が撮影しているカメラの区別・境界が曖昧なのが気になった。尤も渾然一体にすることで、カオティックな勢いと効果を出すという「あえて」の選択なのかも。ともあれ力作であり秀作!
白人巡査テイラーとメキシコ系巡査サヴァラの警官コンビの日常を、テイラーが持ち歩いているデジカムの視点から映し出す。さながら現場に居合わせるかのような臨場感に冒頭から圧倒されっぱなし! 起きる事件はチンピラの喧嘩の仲裁から、子供が行方不明になったという通報から殺傷沙汰、銃撃戦にギャングの抗争、火災現場からの人名救助まで、全てが同じ線上で描かれる点が、基本的にひとつの事件を追う殺人課刑事やFBIが主役のドラマとは違う。制服警官のリアルを描く手法としては、ジョン・ウェルズによる秀作TVシリーズ『サウスランド』(09-13)である。ただし、無法地帯と化した戦場のようなサウス・セントラルでの警官の日常は、筆者は醍醐味としてはやはり傑作ドラマでバイオレン色の強い『ザ・シールド』(02-08)によく似ていると思った。パトロール中に軽口を叩き合う2人の姿は、常に命の危険と隣り合わせの緊迫感の中で数少ないほっとするシーンだが、束の間の平穏が逆に起きている現実の異常さを際立たせていて、これが彼らの日常だと思うとぞっとしてしまう。もちろん、本作はあくまでも娯楽作だが、テイラーとサヴァラの会話、特に自衛手段として銃を所持することはやむなしという銃社会の深刻な現状を伝えているくだりには考え込んでしまった。社会派としてのメッセージ性にも優れた見応えのある快作だ。
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