見どころ:『テイク・シェルター』で脚光を浴びたジェフ・ニコルズと、『マジック・マイク』などの演技派俳優マシュー・マコノヒーが手を組んだ青春ドラマ。親友同士の少年二人が、島に潜む一風変わった男との出会いを通して成長する姿を描き出す。『ツリー・オブ・ライフ』のタイ・シェリダンやベテランのマイケル・シャノン、オスカー女優のリース・ウィザースプーンらが共演。友情やさまざまな愛の形を盛り込んだ物語が心に染みる。
あらすじ:14歳のエリス(タイ・シェリダン)はアメリカ南部、アーカンソー州の川辺のボートハウスで両親と暮らしている。彼はある日、親友ネックボーン(ジェイコブ・ロフランド)と出掛けたミシシッピ川の島でマッド(マシュー・マコノヒー)という男性と出会う。エリスは世間から隠れて暮らす彼に興味を抱くが、ネックボーンはマッドのことを快く思っていなかった。
恋愛の機微を学ぶ少年を描いた、端正なドラマとして唸らされた。彼が出会った流れ者は来ないかもしれない女性を待ち、一方で少年の両親は夫婦仲が冷え切りつつある。大人の愛の現実がそこに見えてくる。
少年が人生を学ぶという点でも歯応えアリ。流れ者は自由を体現し、父親は常識を説く。どちらも生きてゆくうえで必要なもの。そういう意味では悪役になりかねない厳格な父親を、理解できる人物として描いたバランスの良さが光る。
注目のマシュー・マコノヒーは文句なしの好演で、『ダラス・バイヤーズ クラブ』でのオスカー受賞の追い風となりそうだ。何より、成長劇の“パーツ”としてきちんと機能している点が素晴らしい。
賞レースを賑わせ中の『ダラス・バイヤーズクラブ』(2月22日公開)は、マシュー・マコノヒーがここ数年のアウトロー怪優路線を昇華した記念碑的な一本。その前にぜひ観ておきたい彼の出演作が、この『MUD』だ。ワケありの逃亡者ながら徐々に「イイやつ」の顔を見せる、負け犬ハンサムの色気が絶品の味わい。
そんな彼に、ある種「自由」の匂いを嗅ぐミシシッピ州を舞台にした少年の冒険譚――という点でマーク・トウェインの世界、あるいは『スタンド・バイ・ミー』と比較する評が多いが、マコノヒーに焦点を合わせるとニューシネマの残響が強く前面化する。俊英ジェフ・ニコルズ監督が「南部もの」の正統を高感度に継承した秀作だ。
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