見どころ:世界的な知名度を誇るファッションデザイナー、イヴ・サンローランの栄光と挫折を、1967年からの10年間に焦点を絞って赤裸々に描いたドラマ。多忙を極める一方で重圧や孤独に悩む様子や、アルコールや薬への依存やパートナーとの関係といった衝撃的な出来事までもを映し出す。監督は『メゾン ある娼館の記憶』などのベルトラン・ボネロ。主演を『ハンニバル・ライジング』などのギャスパー・ウリエルが務めるほか、『ある子供』などのジェレミー・レニエなどが共演。ギャスパーによるサンローランの成り切りぶりに注目。
あらすじ:1967年、フランス・パリ。イヴ・サンローラン(ギャスパー・ウリエル)は斬新なコレクションを次々と発表し多忙を極めるとともに、カルチャーアイコンとしてもその名をとどろかせていた。しかし、サンローランはプレッシャーから次第にアルコールや薬に依存していく。
イヴ・サンローランの伝記映画といえばジャリル・レスペール版が昨年日本でも公開されたが、こちらはたまたま同時期に制作されたベルトラン・ボネロ版である。
サンローランの半生を時系列でドラマチックに追ったレスペール版に対し、ボネロ版は最盛期の10年間と晩年の彼に焦点を当て、あえてストーリー性を排除しながら人間サンローランの素顔を多角的に捉えていく。シーン前後の関連性も時間軸も基本的にバラバラ。試みとしては面白いものの、正直なところ抽象的で分かりづらい。
とりあえず、『家族の肖像』以来40年ぶりとなるヘルムート・バーガー&ドミニク・サンダの共演(直接的な絡みはないけど)は映画ファンとして嬉しい。
まず、キャスティングが豪華。サンローラン役は「ハンニバル・ライジング」のギャスパー・ウリエル。その長年の公私に渡るパートナー役は、ダルデンヌ兄弟監督作の常連ジェレミー・レニエ。主人公の放埒な愛人役は、フィリップ・ガレル監督の息子ルイ・ガレル。晩年の主人公役は、ヴィスコンティ映画の美男俳優ヘルムート・バーガー。主人公の母親役は「暗殺の森」などのベルトルッチ映画のドミニク・サンダなのだ。そして、主人公の苦悩が深まるのにつれて、画面の上で、彼の作品群の形と色彩と質感が、その輝きを増していく。昨年公開の同題材映画はサンローラン財団の公認、こちらは非公認なので、より自由に題材の魅力を描いている。
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