見どころ:『ポネット』などで知られるフランスの巨匠、ジャック・ドワイヨンが監督と脚本を務めて放つ衝撃的な恋愛作。父親の葬儀で故郷に戻った女性が過去に惹(ひ)かれた男性と再会を果たし、精神的にも肉体的にも激しさを増していく二人の関係をあぶり出す。ヒロインを『ゲンスブールと女たち』などのサラ・フォレスティエが体当たりで演じ、相手役を『太陽と月に背いて』などのジェームズ・シエリーが熱演。愛の神髄を突いた内容に心をわしづかみにされる。
あらすじ:父の葬儀と遺産整理のため、彼女(サラ・フォレスティエ)は田舎町に戻ってくるが、財産分与をめぐるトラブルに悩まされる。少しずつ家族との過去のいざこざや幼少時の不幸な記憶がよみがえり、トラウマに苦しむようになる。かつて恋心を抱いていた男性(ジェームズ・シエリー)と再会した彼女は、現実から逃避するために一風変わったセラピーに熱中する。
家族への満たされぬ思いを抱え、愛情に飢えた若い女が、その不満や怒りを年上の男にぶつける。それも、殴る蹴るの暴力で…ってところに面食らう観客は少なくないかもしれない。
感情に任せて飛びかかる女。筋骨隆々の男は拳ひとつで女をKOしてもおかしくなさそうだが、しかし彼女の動きを牽制しつつも受け身に徹しようとする。それは抜き差しならぬ肉弾戦。なので、全裸の泥レスシーンもエロさは皆無でひたすら壮絶だ。
71歳になる名匠ジャック・ドワイヨンは、孤独な男女の野獣的な一騎打ちを、傷ついた魂を解放するためのセラピー的な儀式として描く。多分に寓話的ではあるが、しかし究極的な恋愛の本質は捉えているように思う。