見どころ:辻村深月の小説を基に、『スイートリトルライズ』などの矢崎仁司監督が映画化した切ないヒューマンドラマ。東京近郊の地方都市を舞台に、思春期の自分を胸に秘めたまま大人になった高校時代の同級生たちが織り成す人間模様を繊細なタッチで映し出す。水川あさみが主演を務め、高校時代のマドンナを好演。木村文乃や三浦貴大らが共演する。青春時代の痛みを乗り越え、新たな一歩を踏み出す登場人物たちの姿がまぶしい。
あらすじ:東京から2時間程度の場所にある地方都市で、高校卒業後10年目のクラス会のために同級生たちが集まってくる。それまでも何度か行われてきたクラス会に参加したメンバーたちは、何となく東京組と地方組に分かれていた。地元の中心人物は現在は地方局のアナウンサーで、高校時代みんなの憧れの的だった響子(水川あさみ)だったが、話題の中心は女優としてブレイクした今日子(木村文乃)で……。
高校時代と立場の逆転した2人の女性を主人公に、思春期を人生の通過点として成長した人間と、人生の頂点だった思春期に囚われ続ける人間の明と暗を浮き彫りにする。
なにか決定的にドラマチックな事件が起きるわけでもなく、過去と現在の些細な日常を巧みに織りまぜながら、ヒロインそれぞれの心象風景を丁寧に映し出していく。観客に想像の余地を残す矢崎仁司監督の演出は詩情すら漂わせ、だからこそ女同士の友情の難しさや危うさが一層のこと引き立つ。
秀逸なのは森カンナ演じる由希というキャラ。今も昔も一貫して、生き残るため強者に擦り寄る彼女のしたたかさを、決して断罪することのない冷静な視点こそ、本作の肝だと言えよう。
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