見どころ:『乱暴と待機』『アトムの足音が聞こえる』などの冨永昌敬が、茨城県水戸市でロケを行い撮り上げたヒューマンドラマ。盗撮事件で地元を後にした男、彼に東京から連れてこられたキャバクラ嬢、男の教え子だった青年の出会いが、思わぬ騒動を引き起こしていく。『リトル・フォレスト』シリーズなどの三浦貴大、『チチを撮りに』などの柳英里紗、『乃梨子の場合』などの川瀬陽太らキャストには実力派や個性派が顔をそろえる。クセのあるキャラにふんした彼らの妙演はもちろん、ユーモアと哀愁漂う語り口にも注目。
あらすじ:地元、茨城県水戸市のおしぼり会社に勤務する貫一は、行方不明だった元高校教師の権藤と思いがけない再会を果たす。しかし、権藤には10年前に校内で盗撮事件を起こした過去があり、それが原因で教え子たちから罵詈(ばり)雑言を浴びせられる。プライドを傷つけられた権藤に追い打ちをかけるように、東京から連れてきたキャバクラ嬢のみはりが貫一を好きになり彼のもとから去ってしまう。やがてかつて権藤が盗撮した動画が、ある芸能事務所を巻き込んだ騒動を引き起こす。
エロスにも色んな種類があるが、本作に似合うのは「劣情」か。主軸となるのは過去の盗撮事件が尾を引いた元教師(川瀬陽太)の転落劇。臆病な小市民が、社会性の喪失と共にだらしなくタガが外れて、激安の世界から奈落の底へとらせん状に堕ちていく――。この過程に生々しい悪夢のような吸引力がある。一種の“恐怖映画”とも呼びたい。
監督・冨永昌敬の演出はいよいよ脂が乗り、「やんちゃ」と「成熟」が折り重なっている。準・二焦点と言える特殊な作劇の妙や、匂い立つ男優女優の魅力。ソーラーパネルにまつわる時事性を取り入れつつ、荒涼とした無常が漂う後味も抜群。もし増村保造や川島雄三がコレを観たら激賞するのではないか?
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