見どころ:各国の映画祭で高い評価を獲得し、クエンティン・タランティーノも絶賛の声を寄せたホラー。ある男との性行為を機に、他者には見えない異形を目にするようになってしまった女性に待ち受ける運命を見つめる。メガホンを取るのは、新鋭デヴィッド・ロバート・ミッチェル。『ザ・ゲスト』などのマイカ・モンロー、テレビドラマ「リベンジ」シリーズなどのダニエル・ゾヴァットらが出演。独創的で異様な怪現象の設定に加え、次々とヒロインの前に現れる異形の姿も鮮烈。
あらすじ:ある男と熱い夜を過ごす19歳のジェイ(マイカ・モンロー)だったが、彼は突如として彼女を椅子に縛り付けて奇妙な告白をする。それは性行為をすることで、ほかの者には見えない異形を目にするようになり、彼らに捕まると殺されてしまう怪現象を相手にうつすことができるというものだった。さらに、その相手が異形に殺されたら怪現象は自身に戻ってくるという。信じられないジェイだったが……。
セックスを介して人から人へ移される“それ”。感染した本人にしか見えない“それ”は、様々な人間に姿を変えて静かにゆっくり、しかし確実に追いかけてくる。捕まったら命がない。Jホラー『リング』からの影響は明白だが、しかし日常のふとした瞬間にいつどこからどんな姿形で襲い来るか分からない怖さはひとしおだ。
この、平穏な日常の中に突如として異形のものが紛れ込むという、ジョン・カーペンターの傑作『ハロウィン』を彷彿とさせる不条理感が本作のキモ。じわじわと忍び寄る恐怖があとを引く。思春期の複雑で微妙な友人関係、性を巡る繊細な若者の心理を描いた青春ドラマとしても面白い。
人間ではない“それ”に殺される前に、セックス相手にうつさなければならない。『リング』など、Jホラーの影響は明らかだが、あわよくばセックスコメディになる展開を、身の毛もよだつホラーとして成立させたデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の才能は、ホンモノだった! “お泊まり会”を描いた前作『アメリカン・スリープオーバー』に続き、本作でも性と自我に目覚める悩める若者の姿をリアルかつヴィヴィッドに描いており、ホラー×インディーズ青春映画という、一見バランスの悪そうな融合が全編に渡り、不穏な空気を醸し出す結果に。ヒロイン演じるマイカ・モンローも、やけに水着&下着姿ばかりで、目の保養になること間違いなし。
この恐怖の"質"は新しい。従来のホラー映画のように、見た目が恐怖感を与えるわけではない。"それ"は人間の形をしていてそのたびに姿を変えるので、無関係な通行人なのか"それ"なのか、最初は判別できない。従来のホラー映画のように急に至近距離に出現するわけでもない。ただ、遠くからゆっくりと近づいてくるのが見える。しかも24時間、つねに出現する可能性がある。そういう、ぼんやりとして正体が分からないもの、じわじわと接近してくるもの、努力すれば回避できるがその努力を24時間要求するもの、その忌わしさ。怖いというよりも、持続する"イヤな感じ"。そういう新種の恐怖が、静かな画面で描かれていく。
※数量や販売期間が限定されていたり、劇場によっては取扱が無い場合があります。
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