見どころ:1999年の釜山で起きた出来事から着想を得たスリラー。妹を殺された男が、その犯人であると直感した人物を不思議な予知能力を持つ女性の手を借りながら追い詰めていく。監督は、短編などでも活躍するユン・ジョンヒョン。『ファッションキング』などのチュウォン、『パイレーツ』などのユ・ヘジン、『アトリエの春、昼下がりの裸婦』などのイ・ユヨンらが結集。息詰まる展開とタッチに加え、復讐(ふくしゅう)に取りつかれた主人公にふんしたチュウォンが繰り出す鬼気迫る演技にも圧倒される。
あらすじ:田舎の漁村で、妹のウンジ(リュ・ヘヨン)と2人で生活しているジャンウ(チュウォン)。他界した両親に代わって懸命に働いてウンジを養ってきたジャンウだったが、何者かに彼女を殺されてしまう。その後ジャンウは、妹のために死者の魂を慰めるとされる救魂祭で怪しい男を見掛けて犯人だと直感するが逃げられる。激しい怒りと深い悲しみを抱える中、他人の死を予知できる霊能力者シウン(イ・ユヨン)の助けを借りながら男の行方を追う。やがて、ミン(ユ・ヘジン)という薬剤師の存在が浮かび上がるが……。
韓国の田舎町の風土と、オカルトの融合。それがある程度の成功を収めており、食い入るように見入ってしまった。
最愛の妹を殺された男の復讐心の激しさが共感を引き寄せ、犯人探しの鍵を握る女性霊能者の不気味さも好奇を引きつける。再開発もままならない港町の寂れた風景も、日本の地方都市を想起させ、霊的なドラマでありながら確かなリアリティも感じさせる。
ありえない場所で主人公に素性を告げる犯人の告白がリアリティを崩してしまうのは残念だが、それでも緊張感は途切れず、ラストまで駆け抜ける。“こういうヘンな女の人、ウチの田舎にもいたなあ”と思わせる霊能者を妙演したイ・ユヨンの功績は大きい。
韓国の寂れた港町で起きる連続殺人事件。被害者は女性ばかり。最愛の妹を殺された孤独な男が、予知能力を持つがゆえに地域で村八分にされる女と共に犯人を追い詰める。
他人の死に方しか予知できない女。断片的なイメージのパズルを解きながら真相へと迫っていく過程はありがちだし、唐突に思える謎解きの展開も少なくない。だが、そもそも謎解きは本作の焦点ではないだろう。
露骨な差別や偏見、貧困、迷信が蔓延る暗い田舎町。経済発展に取り残された韓国の地方社会で渦巻くドス黒い怨念。その凄まじく陰惨な光景に戦慄する。コケおどしの効いたショック演出も見事。韓国映画にしか作れない猟奇ミステリーだ。
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