見どころ:『ザ・デクライン』に続くアメリカ・ロサンゼルスの音楽シーンを切り取るシリーズで、グラムロックに影響を受けた1980年代のメタルを追った音楽ドキュメンタリー。あでやかな衣装に長髪というファッション、金と名声、セックスとドラッグに象徴される当時の様子を映し出す。出演は、エアロスミスのスティーヴン・タイラー、KISSのジーン・シモンズ、アリス・クーパー、オジー・オズボーンら。監督は前作と同様にペネロープ・スフィーリスが務める。きらびやかで退廃的なミュージシャンの様子を客観的に捉えた映像に衝撃を受ける。
あらすじ:1980年代末のロサンゼルスでは、グラムロックの流れをくむヘビーメタル“LAメタル”がピークを迎えていた。奇抜なファッションで金と名声、セックスとドラッグを夢見る若者たちの中には、真剣に音楽に打ち込む者もいれば、パーティーで羽目を外す者もいた。Poisonのメンバーは成功の秘けつを話し、またエアロスミスのスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーがドラッグに依存していたころのことを語る。
L.A.ロックシーンをリアルタイムに捉えたドキュメンタリー第2弾は、前作のアングラなパンクの世界とは一変、ケバケバしくグラマラスな’80年代L.A.メタルの狂乱を映し出す。
まさにセックス・ドラッグ&ロックンロール。本人たちは金が目的じゃない、薬に手を出しちゃいかんと言いつつ、豪邸のジャグジーで金髪ネエチャンはべらせ贅沢三昧なサクセスを満喫。パンクはディスコに落ちぶれた…って、あんたらのやっていることはそれ以上に下世話ですけど!と突っ込みたくもなる(笑)。
出演者たちは完成した映画に大不満だったらしいが、彼らにしてみりゃバツが悪かったのだろう。そういう意味でも三部作中でベストの面白さだ。
ガールズ、ガールズ、ガールズ……な内容だが、モトリー・クルーは一切出てこない。懐かしの「L.A.メタル」の記録を期待すると、代表選手がほぼ姿を見せないので肩透かしを食らう。そちら面で嬉しかったのは、ファスター・プッシーキャットのテイミー・ダウンが経営していた「キャット・ハウス」の様子が見られる事くらいか。
この枠組みのユルさは、スフィーリス監督が音楽より社会学的な興味でカメラを回していたことの端的な証左だ。『ザ・デクライン』とは真逆に、ロックスターを目指す上昇志向剥き出しの連中を映し出す。歌舞伎町のホスト的な野心をたぎらせる男子達と、冷静に提言するオジーやレミーなど「先輩」陣の対比が面白い。