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劇画界の第一人者・辰巳ヨシヒロを描いたアニメがカンヌ映画祭に公式出品 別所哲也が1人6役で挑む劇画の源流

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アニメーション映画『TATSUMI』メインビジュアル
アニメーション映画『TATSUMI』メインビジュアル - (C)Zhao Wei Films

 「劇画の父」辰巳ヨシヒロの「劇画漂流」を原作に、別所哲也が声優を務めた映画『TATSUMI』(原題)が第64回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に公式出品された。自伝的な原作を、初期短編作品を交えながら見事にアニメーション化したのはシンガポールの鬼才エリック・クー監督だ。

 本作は辰巳の半生を描いた「劇画漂流」を原作に、初期短編作品5作の内容を取り込んだ長編アニメーション映画。早撮りで知られるクー監督が制作に1年半をかけたという異例の作品だが、それには以前、マンガ家だったというクー監督の経歴が大きく関係している。辰巳作品に大きな影響を受けたクー監督は、貸本時代の本にただよう雰囲気や辰巳作品に共通する劇画特有のタッチを忠実に再現することを試みたのだ。「劇画漂流」の出版元である青林工藝舎の担当者によると、内容面では「(『劇画漂流』は)原作よりは原案に近い」というが、それ以外の要素についてはまさに原作の完全映画化。そこに別所哲也が1人6役というただでさえ難しい役回りを、対話形式で演じることに挑戦し、キャラクター1人1人に至るまで目配りの行き届いた本作が出来上がった。

 別所は本作について「登場する6役の声を一人で担当しキャラクターに命を与える作業は、俳優としても大きな挑戦でした。監督の情熱的な演出と共に、ゼロから何もかも作り上げる喜びを体感した作品です」と振り返ると、内容にも触れて「ショートストーリーが折り重なるスタイルと、物語ひとつひとつのメッセージの強さ、重さが劇画からあふれています」と自身も心震わせられたことを明かした。本作は、日本のアニメーション作品としては2作目となるカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門への公式出品作だが、それも納得のクオリティーであるという別所の思いもコメントからは読み取れる。日本での公開は未定だが、本作に関しては「ゴルゴ13」のさいとう・たかを、「ねじ式」のつげ義春らも応援メッセージを寄せており、両者とも辰巳の世界的評価を喜んでいる。

 マンガ「劇画漂流」は、大人が読めるマンガという「劇画」の概念をマンガ界に持ち込んだ辰巳の半生を描いた作品。国内では2009年に手塚治虫文化賞大賞受賞し、海外でもマンガ界のアカデミー賞と呼ばれるアイズナー賞を受賞するなど、翻訳されるやいなや大きな話題となった。劇画と共に歩んできた辰巳の半生を描くことは、そのまま日本マンガの黎明(れいめい)期を描くことにもつながる。手塚治虫や赤塚不二夫といったマンガ家を生み出した有名なトキワ荘とはまた異なる日本マンガ界の基盤となった面々の活躍を描いた本書は、劇画への愛情あふれる作品となっている。(編集部・福田麗)

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