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アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門で最有力候補!『パラダイス・ロスト3:パーガトリー』とは?18年間投獄させられたえん罪の男たち3人を描く

第84回アカデミー賞

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(左から)共同監督のジョー・バーリンジャー、ブルース・シノフスキー
(左から)共同監督のジョー・バーリンジャー、ブルース・シノフスキー

 現在、アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門において、オスカー最有力候補である映画『パラダイス・ロスト3:パーガトリー(原題) / Paradise Lost 3 : Purgatory』について、監督のジョー・バーリンジャーブルース・シノフスキーが語った。

 同作は、1993年に米アーカンソー州ウェスト・メンフィスで、当時8歳だった3人の男児が殺害され、まもなく3人のティーンエイジャー(ダミアン・エコールズ、ジェイソン・ボールドウィン、ジェシー・ミスケリーJr)が容疑者として逮捕され(この3人は通称「ウェスト・メンフィス3」と呼ばれている)、その後の裁判で有罪判決が下される。ところが、服役していたウェスト・メンフィス3は、事件当時の自白の強要や証拠不十分を指摘し始め、さらに後に行われたDNA鑑定で、真犯人のDNAとは一致しないことがわかる。そこで、この証拠をもとに再審が可能か否か決定する公判の前に、なんと3人が釈放されてしまうという異例の事件を描いたドキュメンタリー作品だ。この事件は、アメリカでも題材的にメディアで取り上げられ、パール・ジャムのボーカル、エディ・ヴェダーディクシー・チックスのナタリー・メインズらが犯人たちを支援したことでも話題になっていた。

 監督は映画『メタリカ:真実の瞬間』のジョー・バーリンジャーとブルース・シノフスキーが共同でメガホンを取っていて、彼らはこれまで同事件を追いかけて、すでに映画『パラダイス・ロスト:ザ・チャイルド・マーダーズ・アット・ロビン・フッド・ヒルズ(原題) / Paradise Lost : The Child Murders at Robin Hood Hills』(1996年)と『パラダイス・ロスト2:レヴェレーションズ(原題) / Paradise Lost 2 : Revelations』(2000年)の2作を製作し、今作が3作目となっている。

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 当時、主犯とされていたダミアン・エコールズは、全身黒い服を着たり、ハードロックを聴いたり、犯行に使われたナイフと同じ種類のナイフを持っていたことだけで、ろくな証拠もなしに、彼らダミアン・エコールズ(死刑囚)とその友人、ジェイソン・ボールドウィン、ジェシー・ミスケリーJr(二人とも終身刑)は有罪となったことについて「僕らはこの事件のあった3日後から撮影を始めていたんだ。当時、このアーカンソー州ウェスト・メンフィスでは、悪魔を崇拝した儀式を行うクレイジーな事件が多発していて、さらに保守的なキリスト教根本主義の人たちの多い区域であったために、こういった(悪魔崇拝儀式のような)野蛮な話を聞いていた連中たちは、この3人を(無理矢理に)犯人に仕立て上げて、そしてすべての状況を不利にさせていったと思っている」。ちなみにこの事件の裁判が行われる前に、牧師がテレビ番組や教会で彼ら3人の残虐性を訴え、陪審員たちにも何らかの先入観を植え付け、不十分な証拠だけで判決が下されたとみられている。

 だが、後にウェスト・メンフィス3と真犯人のDNAとが一致しないという新事実が明らかになったことで、立場が悪くなったアーカンソー州政府は新たな行動に出る。それは真犯人を追求することなく、ウェスト・メンフィス3にAlford Plea(釈放する代わりに、自分たちが有罪であると認める)という司法取引を応じさせたのだ。もちろん、こんなふざけた要求にウェスト・メンフィス3は応じる必要はないが、死刑執行が迫っていたウェスト・メンフィス3の一人、ダミアンのために、残りの二人のジェイソンとジェシーも、このに司法取引に応じざるを得なくなってしまったのだ。「これは甘く苦い体験になったよ……。もちろん、彼らが釈放されたことは喜ばしいことだが、アーカンソー州はまだウェスト・メンフィス3を免責できないことでもあるため、腹が立つことでもあるんだよ!」とジョーが述べた後、共同監督のブルースが「アーカンソー州が、真犯人を追跡しないことも恥と言えるね!」と苦言を呈した。

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 3部作にわたったこれらの映画の製作が、このような結果をもたらしたことについて「何万人もの人たちがこの事件において、彼ら3人が無実であるという運動に参加してくれたのが良かった。俳優のジョニー・デップやパール・ジャムのボーカル、エディ・ヴェダー、そして多くの一般の人々の献身的な行動が今回のような結果をもたらすことになったと思っているんだ」とジョーが感謝した。

 最後に、無罪なのに18年間も投獄生活を強いられたウェスト・メンフィス3は、ちょうど人生の半分を刑務所で過ごしたことになる。そんな釈放された彼らの一人、ダミアンは「この経験は、人生と人の本質、アメリカの正義、生き残ること、そして何事も超絶できることを教えてくれた」と語っている。3作ものドキュメンタリー映画と優秀な弁護士や資金を得て、今回のウェスト・メンフィス3の釈放に繋がったが、根本的な司法制度への見直しが必要であることは否めない。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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