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町山智浩、『第三の男』の悪役はいたずら好きの中学生? 20世紀名作映画を独自の視点で語る

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往年の名作について語り尽くした町山智浩
往年の名作について語り尽くした町山智浩

 「町山智浩氏が語る20世紀名作映画講座」が15日、都内・TOHOシネマズ日本橋で行われ、往年の名作『第三の男』の上映後、映画評論家の町山氏が観客からの質問に答える形で、同作について約2時間語り尽くした。

 本講座は、今年5回目の開催で通算動員数200万人を突破した「第二回 新・午前十時の映画祭」の特別企画として開講され、より多くの方々に20世紀の名作を劇場で観る意義と面白さを知ってもらおうというもの。この日も会場を埋め尽くした映画ファンが、町山氏の映画論に耳を傾けた。

 本作が製作された背景について町山氏は、「当初決まっていたのは、第二次大戦後の荒廃したウィーンが舞台であることだけ。あとは、現地取材で(映画の重要なファクターとなる)地下道や質の悪いペニシリンの存在を知り、それらをパズルのように組み合わせて話を作り上げていった。“ハッピーアクシデント(幸運な事故)”って言うんですが、『カサブランカ』もその一つ」と解説。

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 また、本作が不朽の名作といわれるゆえんを町山氏は、「例えば、光と影の使い方。(ドイツ表現主義の巨匠)フリッツ・ラングへのオマージュとして、キャロル・リード監督はその映画表現を継承しているが、二人の主人公、ジョセフ・コットン演じるホリーと、オーソン・ウェルズ演じるハリーが光と影で対比されている」と分析する。

 「ホリーは、神と正義を信じる心の闇を知らない男。無知なアメリカ人の象徴として描かれているが、一方のハリーは、戦争の悲惨さを見てきた闇を知る男。これまで信じてきた価値観や正義をくつがえし、偽善を暴きたいと考えている悪魔」と奥深いキャラクター設定にも言及。

 さらに町山氏は、「本当に魅力的な悪役とは、哲学を持っていて、善悪に揺さぶりをかけてくる人。私利私欲ではなく、思想のために神に逆らうサタン、魂が狂った人。でも、これって『君、すごくがんばっているけど、間違っているよ!』って世界だよね」と持論を展開した。

 それを踏まえた上で、本作のオーソン・ウェルズの悪役ぶりについて、「(映画の中盤に)ためにためてあの顔が出できたときはビックリしたけどね。どう見てもお菓子ばかり食べていたブーちゃんがそのまま大人になった、いたずら好きの中2って感じ。でも、これが魅力的なんだよね」と町山流の表現で称賛を送った。(取材:坂田正樹)

「第二回 新・午前十時の映画祭」は現在全国の劇場で開催中

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