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アカデミー賞長編アニメーション部門の行方【第87回アカデミー賞】

アカデミー賞長編アニメーション部門の行方
『ハウ・トゥー・トレイン・ユア・ドラゴン2(原題) / How to Train Your Dragon 2』 - Twentieth Century Fox Film Corporation / Photofest

 ここ数年、米国アカデミー賞のアニメーション部門に日本人の監督作品が候補、ノミネートに挙がることが連続している。(文・氷川竜介=アニメ・特撮研究家/明治大学大学院客員教授)

 深夜帯で数多くつくられているテレビアニメや人気キャラクターものの劇場映画の他にも、バラエティー豊かな作品づくりがあり、それが国際的にも評価されることは、非常に喜ばしい。

 長編アニメーション部門ではスタジオジブリの高畑勲監督入魂の映画『かぐや姫の物語』がノミネートされ、すでにマスコミで大きく取りあげられている。日本最古の物語ともされる「竹取物語」を、伝統を感じさせる筆の柔らかな描線と淡く余白を含んだ水彩で描いた作風であり、まさしく日本でしか作れないアニメーションである。ぜひとも健闘してほしいものだが、同時にノミネートされた他の4作のラインナップをみて息を呑んだ。当然のこととは言え、いずれが受賞してもおかしくない風格で、表現様式と内容のそれぞれが強烈に際だった強豪ぞろいなのである。

 まず『ベイマックス』(原題『Big Hero 6』)は、国内でも『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』を上回る大ヒット中で、『アナと雪の女王』と連続してディズニーの新たな黄金期を示しつつある作品だ。ココロとカラダを守るフワフワした質感のロボットと少年のハートウォーミングな交流と、マーベルコミックスの原作にロボットアニメや戦隊ヒーローなど日本が得意なバトルアクション要素を加え、硬軟両面から観客を巻きこむ娯楽大作である。ヘルスケアロボットという生命のないもので現実世界の愛憎を鏡映しにする点を含め、21世紀の王道をめざしているのかもしれない。

 『ヒックとドラゴン2』(『ハウ・トゥー・トレイン・ユア・ドラゴン2(原題) / How to Train Your Dragon 2』)も傑作である。なかなか日本公開が決まらず海外版Blu-ray Discを並行輸入して視聴したが、映像の表現力が圧倒的に向上していて、これもすばらしい作品である。第1作目では長年にわたって争っていたバイキングとドラゴンが、互いを思いやり補完しあえるパートナーだと気づくプロセスが入念に描かれたが、その続編としてテーマを発展的に深めている点がいい。言葉の通じないパートナーのドラゴンと心を通わせながら高空を貫く飛翔感、無数のドラゴンが飛び交うファンタジックな彩り、そして新ドラゴンの氷結を武器にした硬さ冷たさ、すべてのビジュアルが人間味あふれるストーリーに寄りそって圧巻である。やはりアニメーションは「絵それ自体が物語る」というわけだ。他2作も本編は未見ながら予告編からは圧倒される映像のパワーが放たれ、評価が「表現と内容のリンク」に絞りこまれたことがしっかり伝わってくる。

『かぐや姫の物語』
世界の強豪にひけを取らない『かぐや姫の物語』-(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK

 まず『ザ・ボックストロールズ(原題) / The Boxtrolls』 は『コララインとボタンの魔女 3D』『パラノーマン ブライス・ホローの謎』とダークなテイストのファンタジーを作り続けてきた製作会社ライカの作品である。箱の中から手足が飛び出したトロールたちのダークな世界を描いているが、CGのモニタ上で作成したモデルを3Dプリンタで立体出力し、1コマずつ置き換えつつ撮影した人形アニメーションなのである。硬いはずの人形の顔面が演技に合わせて柔らかく変形してチャーミングな表情を見せるとき、生命が降臨する驚きが生じる。これに豊かな質感の衣装と美術セットが加わり、絶妙なライティングによって反射光を撮影することで、空気感、臨場感、情感が生まれるという仕掛けだ。悪夢的でありながら、トボけてかわいいユーモラスさがあるという相反するテイストも、そこから生じたものだ。

『LEGO(R)ムービー』
長編賞有力候補と目されていた『LEGO(R)ムービー』が選外に-写真:PictureLux/アフロ

 実は各映画賞を多数受賞し、長編賞有力候補と目されていた『LEGO(R)ムービー』はノミネート選外となって識者を驚かせた。もしかしたら、「レゴ」という現実に存在する素材を扱いながらフルCG制作であった点が引っかかったのかもしれないと、ライカ作品のノミネートは推察させるものがある。

 さて最後の『ソング・オブ・シー(原題) / Song of the Sea』は、アイルランド(ルクセンブルク、ベルギー、フランス、デンマーク)の2Dアニメーションである。これは予告を見るや、激しい衝撃を受けた。トム・ムーア監督は、2009年の『ブレンダンとケルズの秘密』という長編で知られ、自国のケルト伝承をデフォルメの効いた絵本的なキャラクターで映像化している。今回もその作風を発展させ、「アザラシと少女」というアイルランドの伝承をベースにして、海底を含む非常に美的な世界観を提示している。これが実に日本人好みの絵柄で可愛らしく、同じ海に接した島国同士のシンパシーすら覚える作風で、すっかり参ってしまった。

 だが『かぐや姫の物語』も、世界の強豪相手に一歩もひけをとらない。現在、デジタルやCG導入以後のアニメーション表現の試行も一巡し、さまざまな応用へと向かいつつあるフェーズである点では、間違いなくトップクラスを走っている。はたしてどのような評価基準で何が勝者となるのか、2月22日(現地時間)の発表が非常に楽しみでならない。


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